グラスの中で黄金に輝く液体――。「Chiba Dorado 0」と名付けられたこのビールは、醸造設備を持つ千葉県習志野市のパブ「むぎのいえ」で作られた。
ごく普通のクラフトビールに見えるが、中心となって醸造に取り組んだのは、情報数理学を専門とする千葉大学の萩原教授だ。萩原教授は、自らが専門とする数学をビール造りに活用した。
「ビールと数学にはあまり縁がなさそうなイメージを持つかもしれないが、実はそもそもビール(造り)にはたくさんの数値計算が必要。例えばアルコール度数を測ったり、苦さを計算したり……それは、造る前に数式で全部計算をしなきゃいけない」(千葉大学 大学院理学研究院 萩原学教授・以下同)
今回、萩原教授が新たに取り入れたのが、数学の「束論」という手法。ビールの特徴を決定づけるホップの香りや苦みといった数値化しにくい部分を、数学を活用して相関図にまとめた。例えば、香りの強いアロマホップでもスパイシーなもの、フルーティーなものなどに分かれ、種類によってさまざまな違いがある。こうしたホップによる特徴の違いを束論によってまとめたことで、「目標とするビールにはどのホップが適しているのか」が一目でわかるようになっている。
「束論を簡単に言うと、計算の表みたいなもの。いくつか共通している性質を絵で表し、抽象的なものを視覚的に見せるという数学」
今回、萩原教授とともに、千葉大学の学生もビール造りに参加。フルーティーなビールを目指した学生は、フルーティーなホップの中でも、マンゴーやパイナップルといったトロピカルフルーツの特徴を持つ「エルドラド」という種類を中心に原料を選択した。先日、学生らとともに現在熟成中の「Chiba Dorado 0」を試飲したそうだが、狙い通りのビールになったのか――。
「想像していたより、ちょっと苦みが強かったけど、普段飲んでるビールとは香りがだいぶ違う。独特の香りがするトロピカルなビールになった」
地ビールのコンテストにも出品予定だという「Chiba Dorado 0」。萩原教授は今後も数学の意外な活用方法を模索し、「数学が持つ面白さを伝えていきたい」としている。
「地域課題として色々な地方を見てみると、例えばクラフトビールは、その地域の名産品を活用することで地方色がすごく出る。そこで、『地域貢献の一環として、“ビールと数学”を掛け合わせることができないか』と考えた。社会の中で役に立つ数学は割とたくさんあると思っている。それを色々な方面から模索していきたい」
(『ABEMAヒルズ』より)
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