今回のウクライナ侵攻ではSNSなどを通じて現地の様々な情報が発信され、“情報戦”の色合いも濃くなってきている。
ロシア国内では国営メディアなどで厳格な情報統制のもと政府の意向に沿った報道が繰り返されている一方で、SNSや独立系メディアから情報を得ている若い世代を中心に反戦デモが巻き起こるなど、必ずしも情報統制がうまくいっているわけではない模様だ。
こうした世論を警戒したのかプーチン政権は4日、SNSへの規制を強化すると発表。FacebookやTwitterへのアクセスを制限したとみられる。さらに、ロシア議会は、実質的に反戦報道を禁止する法案を可決。当局が「虚偽」とみなす情報を発信した者に最大で15年の禁錮や懲役が科されることになった。これを受け、CNNやBBCなど欧米の主要メディアがロシアでの取材活動の一時停止を表明した。
インターネットや放送局の情報統制――。この狙いと影響について、ロイター通信などで国際情勢を見続けてきた国際ジャーナリストの山田敏弘氏に話を聞いた。
「まずは、ロシア国内で今回のウクライナ侵攻に対して国民がどう思ってるのか。どういう反応してるのかっていうことがまず伝わらなくなる。それが最大の目的の1つだと思うが、今回総じて、プーチン大統領が色んな形で判断を誤っているんじゃないかという分析があちこちでされてるのも、これもその一つと言ってもいいんじゃないかと。明らかに挑発的なやり方だと思うので、欧米諸国のメディアからみると、ロシアがまさかこんなことをするのはありえないと思っているんじゃないかと思う」
孤立を更に深める手段に見える今回の対応だが、メディアに好き勝手されては困るロシア側の事情もあるようだ。
「2016年のアメリカ大統領選の時にSNSを使って、ロシア政府がかなり偽情報やフェイクニュースの工作をして、アメリカの大統領選に干渉しようということで、しかもその効果を上げたわけで、それ以降、 TwitterとかFacebookという企業は、アメリカの議会やアメリカ政府からも批判をされて、どうしてきっちりと偽の情報とか国外から自国に対する情報工作に加担する形になってしまったのかと、ずっと議会にも何度も呼ばれて糾弾されてきた。だからロシアのそういった情報に対して非常に敏感になっている。その下地があるので、今回はかなり早い段階からロシアから出てくる情報、欧米のプラットフォームにある情報は統制されてきている」
「その中でロシアから見るとウクライナ側の情報はどんどん出ているのに、ロシア側の情報は出ていない。その代わりに皆さんがロシア側からの情報として利用できるものというのは西側のメディアが報じたものということになってくると、ロシアからみると情報が非常に偏っているっていうふうに思うのは一つあると思う」
世界規模で使われるSNSプラットフォームを欧米の企業が牛耳る中、情報戦で不利な状況に置かれやすいロシア。ウクライナ侵攻に関する国内からの発信・報道をけん制することでこれ以上追い込まれないようにしているという。
「その情報が必要な人たちがいる。特にロシア人の方々、ロシアの外に住んでいるロシア人の人もそうだし、例えば日本からロシアの事を思って、どんなことが起きてるんだろうと気にかけている人たちもたくさんいると思う。そういった方々が世界中にいると思うが、プーチン政権が見せたい情報ではなくて、本当に現場で起きている客観的な報道をしてくれる欧米メディアの情報が伝わらないってことは、非常に不安だと思う」
情報を必要としている人たちのためにも、「メディアは最後まで戦うべきだ」と山田氏は訴える。
「やっぱり一番は屈しないということだと思う。例えば、西側のメディアのプレスクラブみたいなものもあると思うし、皆さんでそこはやっていく。何か回避策、テクノロジー、これは欧米側の政府も協力できることじゃないかと思うが、何か監視・統制を回避する形を模索してほしい。放送をしないっていう選択肢はあってはいけないと思うので、そこは最後まで戦うべき」
(『ABEMAヒルズ』より)
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