「藤井聡太竜王の将棋、棋譜はずっと残る。何百年後の人も見る」解説棋士がしみじみ語る藤井将棋の奥深さ「現代将棋の頂点を極めた」
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 史上4人目のタイトル五冠を最年少、史上初の10代で達成した将棋藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、19)。3月9日には順位戦B級1組の最終13回戦で勝利し、初のA級入りを決め、来期は初の名人獲得を目指すことになった。2021年度は64局指し52勝12敗、勝率.8125と、トップ棋士たちばかりと戦ったとは思えない高勝率を誇った。この活躍ぶりを見続けた一人が飯塚祐紀七段(52)だ。藤井竜王の棋譜を解説する仕事もあり、プロ入り後に指された全317局のほか、まだ8歳の藤井少年時代の棋譜まで見ているが「藤井さんの将棋、棋譜はずっと残る。何百年後の人も見る、そういうレベル」と最大級に評価する。刻まれた一手一手に解説をつけた飯塚七段だからこそ、感じ入る奥深さがそこにはあった。

【動画】順位戦 B級1組 13回戦 藤井聡太竜王 対 佐々木勇気七段

 棋士生活がまもなく30年を迎える飯塚七段が、初めて藤井竜王の将棋と触れたのは、もう10年以上前のことだ。藤井竜王の師匠・杉本昌隆八段(53)から「飯塚さん、この将棋を見てくださいよ」と声をかけられたという。「杉本さんは自分の将棋を自慢するような人ではないんです。だから珍しいなと思ったら、8歳の子の将棋だった。それが藤井さんです」。名前も知らない少年の棋譜だったが、数多くの棋譜を見て、解説をつける仕事もしている飯塚七段の目にも、その内容は明らかに別物だった。「確かにすごいんです。杉本さんがのけぞるのもわかりました」と目を見張った。

 プロ入り前の小学生時代から、藤井竜王の名は詰将棋解答選手権での優勝などで、徐々に将棋会でも広まっていく。そして14歳2カ月でプロ入り。そこから今に至るまでの317局には、年間表彰である将棋大賞の名局賞に選ばれ、将棋ソフト(AI)も示さなかった手を生んだということで「AI超え」と話題になったものもある。単に勝つだけでなく、心に残る棋譜を残す。棋士の本分を見事に果たし続けている。

 飯塚七段は、例年発売されている藤井竜王の全局集でも解説を担当している。「藤井さんの将棋はたくさん見ていますね。解説も30局か40局は書いていますね。それだけやっているなら、もう少し自分自身が強くなってもいいんですが(笑)」。この令和の天才棋士の思考を読み取り、文字にする作業は実に骨が折れる。「自分の本を書くよりも、藤井さんの解説を書く方が時間がかかりますね。藤井さんの将棋には、背景とか考えると深みがあるんですよ。現代将棋の頂点を極めた方。勝ち負けだけでなく、将棋の内容が素晴らしいです」と、名作ばかりだと言葉を続けた。

 対局の様子を記した棋譜。棋士がこれを見れば、戦いの内容だけでなく、指した本人の性格まで透けて見えてくるようなものだ。平成の天才棋士として、数々の大記録を打ち立てた羽生善治九段(51)の棋譜を、ファンや後にプロになったような者たちが見て育ったように、藤井竜王の棋譜は後世に語り継がれるものになる。「藤井さんの将棋、棋譜はずっと残る。そういうレベルの人です。僕だって江戸時代の棋譜とか見るわけですから、藤井さんの将棋は何百年後の人だって見ます。そのためにも藤井さんが死闘を繰り返すような相手が出ればいいなと思うし、そこでいい棋譜がたくさん残ると思います」。好勝負で生まれる棋譜こそ、さらに名作となる。来年度も大記録達成の期待が集まる中、どんな棋譜が生まれるか。飯塚七段は、その棋譜を伝えるためなら喜んで苦労する。
ABEMA/将棋チャンネルより)

【動画】順位戦 B級1組 13回戦 藤井聡太竜王 対 佐々木勇気七段
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「藤井聡太竜王の将棋、棋譜はずっと残る。何百年後の人も見る」解説棋士がしみじみ語る藤井将棋の奥深さ「現代将棋の頂点を極めた」