ロシア軍が占拠したウクライナのチェルノブイリ原発。電源の喪失により放射能漏れの危険性が懸念される中、通信は今も途絶えたままだ。占拠を続けるロシア側は「ベラルーシからの供給により電力は復旧している」と発表しているが、IAEA(国際原子力機関)は「確認できていない」としている。
【映像】「ロシアの“勝ち戦”だ」ウクライナ侵攻、ひろゆき氏が描いたシナリオ(8:00ごろ〜)
さらに6日、ウクライナ当局は「ハリコフにある核物質を扱う施設、物理技術研究所がロシア軍の攻撃があった」と発表。10日に開幕したEU首脳会議では、ロシアへの追加制裁や、ロシア産エネルギーへの依存度低下などが議論されている。
相次ぐ核関連施設への攻撃に、国際社会から非難が集まっているロシア軍のウクライナ侵攻。一方で、今回の侵攻によって、ヨーロッパのエネルギー事情が変わっていくのではないかといった見方もある。
ニュース番組『ABEMA Prime』では、ウクライナ侵攻に伴うエネルギー政策への影響について、専門家とともに議論を行った。
輸出量のシェアを見ると、原油は20%、天然ガスは40%と“資源大国”でもあるロシア(※大場紀章氏が作成した2021年「BP統計」より)。ロシアのエネルギーに頼っている国は、今後どのような対応が求められるのだろうか。
エネルギーアナリストの大場紀章氏は「ロシアから石油や天然ガスの輸入をストップしても、代わりに生産する国が存在しない。今アメリカが輸入禁止と言っているが、そこに制裁する側の全て国が同調することは、原理的に不可能だ。つまり、ロシアの化石燃料に依存していたからこそ、この事態において柔軟な対応ができないとも言える。ただ、原子力を持っていれば、それだけエネルギー自給率が高くなるので、その分、ロシアの言うことを聞かずに済む」と述べる。
特に欧州はロシアへのガス依存率が高い。ウクライナ侵攻後にいち早くロシアからパイプラインを停止したドイツは、脱原発の期限を延期するも「実現困難」と結論づけた。ウクライナ国内にはドイツの自動車産業における下請け会社も多数あり、影響は深刻だ。
この状況にネット掲示板『2ちゃんねる』創設者のひろゆき氏は「原発を動かすという答え以外ない」とコメント。「時間の問題で、後は国民がいかに納得するか。どう時間をかけるかだと思う。日本はまだそこまで電気代が上がっていないようだが、もうドイツは電気代が2倍になっていたり、スペインも上がって、フランスでもちょこちょこ上がり始めている。電気代を考えたら『核や原子力発電所って良くないよね』と言っている場合ではない」と見解を示した。
番組司会のテレビ朝日・平石直之アナウンサーが「原発回帰が加速するのか?」と質問すると、ひろゆき氏は「加速というか、原発回帰をしない限り、もう電気代が払えない。フランスは電気代が高くなった分、国民に補助金を配っている。フランスではなんとかやっているが『もうそんな金ねえよ』という国もある。原発に戻るのは、もう確定していて、それがいつなのかという話だ」と述べた。
原子力発電所の再稼働に向け、日本でもエネルギー安全保障の議論が行われている。これまでは地震・津波対策が重点的に見られてきたが、非常事態時に原発が攻撃対象になるリスクが加わるとなると、また別の対策が必要なのではないだろうか。
大場氏は「すでに今の審査基準の中に『テロ対策も入れなければいけない』という事項が入っている。原子炉への攻撃を防ぐというよりは『攻撃されたときに安全に停止できる補助的な施設を作りなさい』という内容だ。今、再稼働している原発の半分くらいにはその審査基準がついている。再稼働するためには設置する計画がないといけない。今後は原発が攻撃を受けた場合に、安全に停止するような仕組みは作られることになっている」と解説した。
また、ひろゆき氏は「もともとシェールガスがアメリカでバンバン出てきたときに、中東は原油価格を下げてシェールガスの会社を倒産させていた。倒産させて、その会社を中東の会社が買い取った。原油を出そうと思ったら、いくらでも出せる説があるではないか。世界が原子力発電を増やす、再生エネルギーを増やすとなると、長期的に石油利権が弱くなってしまうので『じゃあ原油価格を下げるわ』という形になって、結局、原油価格はそこまで上がらないのではないか」と大場氏に質問。
大場氏は「なぜ脱ロシアをヨーロッパの国々が考えているかといえば、2000年を過ぎてから北海油田の生産量がどんどん減少してきて、ロシア依存度が高くなったからだ。そういう危機感が背景にある」と経緯を説明。その上で「お金さえ出せばもっと掘れるのであれば、北海油田をもっと生産すれば良かったという話になる。アメリカもシェールオイルをどんどん出せるのであればいいが、どんどん見つかっていたかつての時代は終わり、埋蔵量も若干下方修正された」と語った。また、大場氏の見解では、中東もそこまで埋蔵量はなく「そうでなければサウジアラビアが『石油産業からの脱却する』とわざわざ言う必要はない」と述べた。
ウクライナ侵攻によって危ぶまれているエネルギーの供給。限られたエネルギーをどのように調達し使うか、それぞれの国が考えていく必要がありそうだ。(『ABEMA Prime』より)
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