ウクライナの民間施設に対するロシア軍の無差別攻撃が激化する中、日本では避難民の受け入れを始めている。13日までに、ウクライナから47人の避難民が入国。政府は、希望すれば国内で1年間就労できる「特定活動」の在留資格の交付を発表した。18日には、避難民の円滑な受け入れのために設置された連絡調整会議の初会合が行われ、日本に身元を保証する親類らがいなくても特例で入国を許可することになった。
ニュース番組『ABEMAヒルズ』では、日本に逃れてきた難民を支援している認定NPO法人「難民支援協会」代表理事の石川えり氏に話を聞いた。
――ウクライナからの避難民の受け入れが進んでいる。こちらについて、どう受け止めているか。
「岸田首相が非常に早いタイミングで(避難民の)受け入れを表明されたことが、多くの企業や自治体、個人の支援の申し出につながっている。日本で暮らしていくうえでの基本となる在留資格も特定活動が1年になり、省庁間での連絡調整会議も行われているので、受け入れに向けた具体的な動きが始まっていると感じる。一方で、物理的に受け入れられたとしても、言語や文化の違いに馴染み、働いて生活を成り立たせていくのはとても難しいと思う。長期的な見通しを持って安心して暮らしていけるように、1人1人のニーズに寄り添った支援も必要だ」
――避難民は申請すれば1年の期限で就労可能になるが、「1年」という期間はどう見ているか。
「ヨーロッパでもまずは緊急にということで一時保護を表明。1年の在留資格で3回を上限に更新することができて、難民申請をすることも可能。その意味で、日本が表明した1年の在留資格はヨーロッパに準ずるものと言える。ただ、1年後に状況が改善しなかったときに、本人の意志を尊重して更新できるようにすることが必要。受け入れ側が期限を決めて、無理やり避難民を帰らせることはできないので、どうしても帰れない方には難民申請も含めて保護がなされるべき」
――そもそも「難民」と「避難民」の違いは何か。
「戦禍から逃れざるを得ず、保護が必要という意味では変わらない。ただ、『避難民』は国際的に共通の定義がない、いわゆる“一般名詞”だと思う。『難民』というのは難民条約に定義をされていて、国に帰ると人種・宗教・国籍などを理由に迫害を受ける恐れのある方々を指す。迫害を受ける恐れのある国への送還は禁止され、難民条約上の権利が保証されなくてはならない。難民条約は世界情勢や人権規範の変化を踏まえて定義が発展してきた部分もあり、UNHCRは『難民条約は国際的または国内的な武力紛争やその他の暴力から逃れるものを保護する』としているので、ウクライナの方々も難民として保護されうる方がいる」
――日本が受け入れている難民や避難民はウクライナだけではない。包括的に日本の難民認定率の低さというのは課題となっているのか。
「日本の難民認定が非常に厳しいというのは、私たちも支援をする中で感じている。ウクライナの惨状を見て心を痛めている方は非常に多いと思うし、私もその1人。ただ、そういった現状が多くの国であり、難民として逃れる原因になっている紛争や深刻な人権侵害、差別などが続いている。ウクライナだけが難民を生み出しているのではなく、多くの国でも(紛争などが)起こっているということに目を向けてほしい。そこから日本へ逃れてきた方々が2万人近くいるので、そういった方々へも関心を持ち、温かい支援を検討いただければと思う」
――今回、日本が積極的に避難民を受け入れているのは“岸田総理だから”か。なぜ今回だけなのか。
「今回は今までとは違った対応がなされていると思うが、政治的な意志と世論の後押しが非常に大きかった。メディアによって連日ウクライナの状況が報道され、私たちは関心を持ち続ける。何かできないかと1人1人が考える。そういったことにより難民受け入れへの道が開けてくるのであれば、今後は他の紛争にも目を向けていき、私たちが何かできないかと考えることが必要だ」
――「難民」という名前は適切か。
「『refuge』は『避難する』『逃げる』という動詞であり、そこから『refugees』は『逃げた人』という意味を持つ。『難民』には“難”の字がつくことにより、何か困っている、持たない、できない人というイメージが強いと思う。しかし、私たちが普段事務所でお会いしている難民の方々を見ると、そういうことはまったくない。1人1人が多様な個性を持ち、それでも国にいられなくて日本に逃れてきている。可能性のある人だということが伝わってほしい。世論の後押しにより難民を受け入れるのはいいが、たとえそれがなくても日本は難民条約の締約国。その責任を果たすことは必要だと思う」
(『ABEMAヒルズ』より)
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