ANNの最新の世論調査で、ロシアのウクライナ侵攻により「日本の安全が脅かされる可能性が高まった」と答えた人がおよそ8割に上っている。
いわゆる“台湾有事”も議論される中、8日の『ABEMA Prime』に出演した石破茂元幹事長は「ウクライナを見ていても、市民がシェルターに逃げている。じゃあこの日本のどこにシェルターがあるのか?どこに市民が避難をして、核攻撃を受けても命を落とさないで済むのか?その議論はほとんどないでしょう」と問題提起。「“いやいや、東京には地下鉄がいっぱいあるじゃないか”と言われるが、水がない、食糧がない、トイレがない。換気装置がガーガー動いていたらシェルターの意味が全くない」と話していた。
実際、全国の自治体が指定する「緊急一時避難施設」約5万2000カ所のうち、地下施設は1300カ所にも満たない。22日の『ABEMA Prime』に出演した元陸上自衛隊の陸将で、退官後は東京都の危機管理監も務めた田邉揮司良氏は次のように話す。
「例えば北朝鮮から弾道ミサイルが発射された場合、10〜15分以内に日本に到達するといわれている。だからJアラートが鳴った時点で、おそらく逃げている暇はない。政府の『国民保護』で示されていることで言えば、外にいる場合は身を伏せるか、近くにある鉄筋コンクリートの建物の陰に隠れる。建物内に入った場合も、窓から離れた場所にいる。あるいは近くに地下施設があれば、そちらに入った方がベターだ、ということが示されている。
ただ、ウクライナのマリウポリなどの様子を見ていると、何度も爆撃を受けて相当な被害を受けている。やはりミサイル攻撃を前提にすれば、地下施設の方がいいだろう。幸い、このビル(テレビ朝日本社ビル)にも地下階があるので、避難所には指定されていないが、そこに逃げることは可能だ。100%助かるということはないが、確率的には高くなる。
もちろん、その前に自衛隊は迎撃をしようとするし、発射の兆候を捉えれば、事前に避難してもらうこともできると思う。国が“緊急事態”だと指定すれば、自治体に命じて住民の避難を勧告することになる。その場合に避難先として誘導するのが、『緊急一時避難施設』だ。今回のウクライナと同様、子どもと女性、特に母親だという女性を優先することになるのではないか。
ところがこれはミサイルだけではなく、地震や水害なども含めた避難場所としての活用を想定して既存の施設を使うという発想だ。しかし平時の法律が適用された場合、天井が落ちてケガをした避難者に対し、施設管理者が責任を問われる可能性がある。日本の場合、まだそうした判例はないが、公的な施設が指定されるケースが多いのはそういう理由だ」。
番組のスタジオ(テレビ朝日内)がある東京都港区の場合、地下避難施設は1カ所(地上は61カ所)だ。平石直之アナウンサーが「内閣官房が『国民保護ポータルサイト』公表していることだが、港区で働いているのに私は知らなかった。そもそも認知されているのかという問題があると思う。また、緊急一時避難施設の一人あたりの床面積は約0.825平方メートルということで、人口に対しては圧倒的に足りないと思う」と指摘した。
田邉氏は「普段から『国民保護ポータルサイト』を国民の皆様が見るのかというと、なかなか難しいと思う。ミサイルに限らず、危機管理や防災の政策についてはメディアを通じて国民にお知らせをするということになっているので、メディアにはしっかり宣伝していく役割もある。また、他の先進国の場合、核戦争が起きた場合どのように生き残るかということで、冷戦時代に“民間防衛”や、全国民用のシェルターを準備してきた。ビルの地下室や地下鉄の駅構内に放射線を防護するようなフィルターを付ける構造にしなさいと法律で定めている場合もある。
石破元大臣のご発言にもあったように、トイレはどうか、停電した時の対策はどうか、環境はどうかという問題もある。例えば地下鉄の線路内は電気が通っているので非常に危険だし、そもそも日本の場合、駅構内の水害対策はできているが、対爆扉はない。マリウポリのように瓦礫等で埋まる、ということも起こり得る。そういう議論が世界の標準だが、日本では“核だ”と言うと、そこで議論が止まってしまう」。(『ABEMA Prime』より)
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