“分身キャラ”への中傷は人への名誉毀損になるのだろうか。先月28日、VTuber(=バーチャルYouTuber)の女性が自分の分身として演じるキャラ(アバター)を中傷されて自分自身も傷ついたと訴え、投稿者情報の開示を求める裁判があった。
朝日新聞によると、VTuberの女性は「キャラへの中傷であっても傷ついたのは現実の自分だ」と主張。一方で、プロバイダー側は「キャラと女性は別の存在で、女性への中傷ではない」と反論している。
東京地裁は女性がこのキャラを演じていることは不特定多数が知っていると説明し、「(キャラへの中傷は)女性への名誉毀損といえる」とVTuberの女性の主張を認め、投稿者の個人情報を開示するよう命じた。
この判決について、IT起業家の関口舞氏は「メタバース時代における事例として、非常に画期的な判決だ」と述べた上で次のように話す。
「本来、名誉毀損が成立するためには、“現実の人の社会的評価が低下”することが必要だが、今回の判決は“中の人が誰なのかを多くの人に知られている”ということで、演じていた女性への名誉毀損が認められた。非常に意義のある事例だ」
相手がインターネット上のキャラクターとなると“対人間”よりもハードルが低くなり誹謗中傷がしやすくなるのだろうか
「メタバースの世界だと、あたかも相手が架空の人物であるかのような錯覚に陥ってしまったりして、他人への痛みの想像力が欠如する場合も多いのかと思う。数年前にもサンリオのシナモロールがTwitterでいじめのようなリプがあり問題になった。なので、想像力が欠如してしまうところもあるのかと思う」
今回の訴訟は、中の人が不特定多数の人に知られていたというのがポイントとなる。
「しかし、中の人が明かされていないからといって、何を言ってもいいわけではない。例えば、中の人が公表されていない状態でも、デマなどによってそのキャラの社会的評価に影響が出て、仕事に支障が生じたり、演者が傷ついてしまい引退に追い込まれるといった場合もあるので、その辺の議論も必要だ」
今後、メタバースが広がっていくとVTuberだけではなく、誰もがアバターを持つ時代となったら、誹謗中傷が増えていくのだろうか。
「クリエイターに対するメンタルヘルスケアというものが今後ますます重要になってくる。例えば、アメリカのVTuber事務所Vshojo(ヴィショージョ)は、先日13億円の資金調達を実施した。その資金の一部をクリエイターがメンタルヘルスケアサービスを受けられるよう支援を行う非営利団体のスポンサーとなり、クリエイター支援を行うことにも使用している。サスティナブルにクリエイターが活動できるようにしていくという声明も出しているので、今後メンタルヘルスにも重きを置かれていくのではないかと思う。そして、メタバースにおける誹謗中傷の法整備は今後進めていく必要がある」
そうした意味でも今回の判決は大事な一歩になりそうだ。(『ABEMAヒルズ』より)
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