大学を卒業するために奨学金を借り、未来に借金を背負う苦学生たち。奨学金には“給付型”と“貸与型”があり、給付型に比べ貸与型の利用者が多いのが現状だ。これは将来返済が必要になる。中には社会人になり、その返済に追われる人もいる。一方で、そんな状況を救うかもしれないある制度の導入が検討されている。
「奨学金について、大学卒業後の所得に応じた出世払い型の創設。(誰もが)夢や希望を持てる新しい資本主義の実現に向けて、提言を取りまとめるようよろしくお願いいたします」(岸田文雄総理大臣)
出世払い方式とは、自民党内で検討された案で、授業料を国が大学に立て替え払いし、卒業して就職した後、年収300万円以上になってから返済を始めるといったもの。親の年収制限などもない。しかし、この制度にネット上では、多くの批判が飛び交っていた。
「年収300万円で出世!?そんなわけないじゃんか…」
「何をどうしたら年収300万円で出世払いができると思ってるの!?」
年収300万円まで支払いを猶予してもらえるとしても、年収300万円では生活に余裕がないと訴える声も。Twitterでは一時「年収300万円」というワードがトレンド入りする事態になった。
また、日本で最も多く利用されている日本学生支援機構の奨学金。学生の約3人に1人がこの日本学生支援機構の貸与型奨学金を利用している。有利子である第二種奨学金を借りる約71万人の平均貸与額は337万円。年収300万円では貸与額のほうが多いことになる。
奨学金に関する著書を数多く出版しているファイナンシャルプランナーの竹下さくらさんに今回の奨学金の制度について話を聞いた。
「学生からすると、返し方の選択肢が増えるということは、大きな利点だと思います。毎月均等で返していくか、出世払いで返すかというのは、選べるということで、選択肢は増えたと思いますが、最終的にはどこかで『借りた額はちゃんと返さなきゃいけない』という大前提を理解した上使ってほしいです」
ネット上でも反響が相次いだ「年収300万円が余裕で返せるのか」という意見に「返せない額ではない」と竹下さんは話す。
「『新社会人って月20万円の給料もらえたらいいよね』という考え方ありますよね。月20万であれば、年間240万です。それにボーナスがついて300万円くらいです。先輩方はみんな、新社会人から返されているので、たしかに余裕はないですが、返せない額ではないという実績はあります」
この先返済に困ったときは、相談することが大事と明かす竹下さん。
「まず困ったら、借入先の日本学生支援機構に相談すれば金額を抑える形で返済を抑えたり、返済期間を伸ばしたりというような対応策があります。滞って、クレジットカードなどの消費者金融からお金を借りてしまう前に、相談すれば返済期間の延長もできます。苦しくなったら破綻する前に、相談するというのが一番の手ですね」
ニュース番組『ABEMAヒルズ』に出演したコメンテーターでやさしいお金の専門家の横川楓氏は、この制度について「根本的な解決にはなっていない」と指摘した。
「出世払い制度は、先延ばしにするだけで、結局は払わなくてはいけない。教育費が高いから奨学金を借りるという人が増えている現状で、『返すのを楽にしよう』ではなくて、『給与が少ない』『教育費が高い』という根本的な問題の解決策にはなっていない」
貸与型の奨学金は、貸与が終了した月の翌月から7カ月目に返還が始まる。しかし、出世払い制度を利用することで、返還を先延ばしにできるというメリットがある。横川氏は、出世払いの懸念点について『年収300万円に到達する時期』と話す。
「先延ばしの怖いところは、年収300万円に到達するのはいつなのかというところ。それがもし、40歳や50歳になったら、そこから10年20年と返還が始まると、子どもができたりなど(通常、返済が始まる時期より)ライフステージが変わっている状態で、老後まで支払いが続く可能性がある」
出世払い制度など、様々な制度が複雑に絡み合う奨学金。借りる上で大切なことは、正しく理解することだと話す横川氏。
「奨学金の制度自体が難しいので、理解するための金融リテラシーは大事。(調べないと)利子とか利息の仕組みというのはわからないと思う。わからない段階で借りるというのは、すごく怖いのでそういった意味でも金融リテラシーが大事」
最後に横川氏は、奨学金を借りる上で知っておくべきことを明かした。
「日本学生支援機構の他にも財団や企業などが、様々な給付型の奨学金制度を行っていたりするので、まず親が借りる前に色々な制度があることを調べてみることもすごく大切」
(『ABEMAヒルズ』より)
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