やっぱり自分は振り飛車の棋士だ。プロ将棋界の早指し団体戦「第5回ABEMAトーナメント」のドラフト会議が4月2日に放送されリーダー棋士の一人、菅井竜也八段(29)は1巡目に自分と同じ振り飛車党の久保利明九段(46)、2巡目も振り飛車を使いこなす佐藤和俊七段(43)を指名した。昨年は、居飛車・振り飛車関係なく、尊敬する先輩棋士2人を指名したが、今年の大会は原点回帰。「振り飛車で勝つ姿を1人でも多く、ファンの方に見ていただければと思います」と、ブンブンと振り回すつもりだ。
生粋の振り飛車党として、現在では唯一の順位戦A級棋士。その自分が、アマチュアの間でも多く指される振り飛車を盛り上げなくてどうするのか。そんな気概が見えるようなドラフト指名だった。1巡目の指名は、昨年の反省を活かした。「去年いろいろ考えて、1番目に郷田先生を持ってきたら、稲葉さんに久保先生を指名されちゃった。それも考えて1巡目を久保先生にしました」。尊敬する振り飛車党の先輩を、今年は逃してなるものかと、迷わず名前を書いた。
続く2巡目には、特に竜王戦での活躍が目立つ佐藤七段に声を掛けることにした。普段、やり取りは「全くない」が、将棋の内容については勝敗以上に注目している。「昔から強い棋士ですね。中堅ですけど将棋の実力はすごくて、本当なら順位戦のB級1組とかにいてもおかしくない。内容がいつもすごくいいのは、総合力が高いということだと思います」と、自分の目で確認しているからこそ、すんなりと指名もできた。
一度はタイトルを取ったものの、その後はタイトル争いから少し離れている菅井八段。昨年は早指しの銀河戦で初優勝し、今年に入って朝日杯将棋オープン戦も制した。「自分ももう若手ではない。あんまり活躍できなくて、気がついたら三流棋士みたいな現状になっている。なんとかもう一回頑張りたいと思っています」と、自分の立ち位置に対しての考えも厳しい。鋭い指し回しでついた異名が「岡山の竜」。この団体戦で飛車を振り回し、もう一度表舞台へと駆け上がる。
◆第5回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名を漏れた棋士がトーナメントを実施、上位3人がチームとなり全15チームで戦う。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選リーグ、本戦トーナメント通じて5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)