「一旦スマホを置いて」ロシアが“偽ファクトチェック”展開 騙されないためには
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 ウクライナ侵攻のロシア軍撤退後、首都キーウ近郊のブチャで多数の民間人の遺体が見つかった。そんな中、市民を危険に晒し、国際世論に影響を与えかねない「フェイク情報」が氾濫している。

【映像】「夫と妻の別れの場面」として拡散されたフェイク動画(11:24~)

 なぜ、情報が錯綜しているのか。ニュース番組『ABEMAヒルズ』では、ソーシャルメディアに詳しい桜美林大学の平和博教授に話を聞いた。

――ロシア側はウクライナでの市民殺害などについてフェイクだと反論しているが、やり方にはどんな特徴があるのか。

「ロシアによるウクライナ侵攻は“ハイブリッド戦争”などと言われていて、フェイクニュースを使った情報戦、心理戦とかサイバー攻撃に、武力攻撃を連携させている。その中でも注目されているのが、ソーシャルメディアを部隊としたフェイクニュースの反乱で、多くがロシア政府の主張を後押しするような内容だ。今回、特に国際的に問題になったブチャの市民殺害について、ロシアは関与の否定をするという姿勢を示しているが、西側のメディアは現地の惨状を動画あるいは画像、住民などのインタビューを国際的に報じている。これに対して、『フェイクである』という“偽ファクトチェック”がネット上に拡散しているのが大きな特徴だ」

――そもそも“偽ファクトチェック”とはどういったものなのか?そして、そのやり方で効果はあるのか。

「一番典型的なのは、テレビなどで繰り返し報じられている、ブチャの路上に遺体が放置されていたという映像。これに対して、遺体とされるものに『手が動いた』『起き上がった』などの指摘をして、『フェイクではないか』といった投稿をソーシャルメディアにして、それが投稿以来200万回閲覧されているものもある。さらにはそのような投稿をロシア政府のアカウントが共有をするということも起きている」

――このアカウントはロシアからだと分かるのか。それとも隠されているのか。

「匿名のアカウントではあるが、ロシア政府の主張を後押しするような投稿をこれまでも繰り返し行なっている。これに対しては、即座にヨーロッパあるいはアメリカのメディア、ファクトチェック団体が動画に不自然なところはないかとしっかり検証するべき。手が動いたものについては、フロントガラスについては水滴であるなどの指摘、あるいはブチャの街にロシア軍が占拠をしていた時期の衛星写真から同じ場所に遺体があったかなどの裏付けもできる。こうした偽ファストチェックに対して、さらにメディアなどがファクトチェックを行なっているのが現状だ」

「一旦スマホを置いて」ロシアが“偽ファクトチェック”展開 騙されないためには
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――日本でもロシア側の言い分を信じてしまう人もいるが、欧米のメディアの検証などで偽ファクトチェックを排除する効果は出ているのだろうか。

「例えば衛星写真などを見れば一目瞭然。そのようなファクトチェックが世界的に報じられることで、しっかりした効果は出ているだろうと思われる。ただし、一部の方々は信じてしまうこともある。そもそもこのようなフェイクニュースあるいは偽情報は、ハイブリッド戦争の中の情報戦に関わってくる。このように事実でもそうでもなくても繰り返し根拠のない主張を続けて相手を混乱させることが狙いだろう」

――では、その偽情報、フェイクニュースへ打つ手は何があるのか。

「いくつかある。メディアが正しい知識や情報を素早く、広く伝えることが一つの重要なポイントになる正しいファクトチェックが行われ、その情報が広がっていれば、フェイク情報が入ってきても『おかしい』と判断できる。もう一つは、間違った情報が広まるソーシャルメディアがきちんと対策ができていること。そして何よりも大事なのが、一人ひとりのユーザーが得た情報をむやみに共有しないこと。驚いたり、恐怖を感じたりすると誰かに共有したくなると思うが、フェイクニュースというのはこうした感情を刺激して、拡散させようとする狙いがあるので、もし気持ちが高まってきたりしたら一旦スマホを置いて、一度冷静になることが大事。そうすることで間違った情報の拡散を阻止することができる」

(『ABEMAヒルズ』より)

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