人が話している言葉を音としては聞こえるものの、断片的に聞き取れず会話に苦しみを感じている人がいる。周りから理解されにくい症状を抱える当事者に話を聞いた。
「振り返ってみると中学生くらいから先生の指示で『教科書の何ページを開いてください』『何行目』とか指示が、聞き取れなくて、授業についていけないことがあったりしました」
人の言葉が聞き取れなかった時のことを振り返る、喜島さん。雑音がある環境などで、相手の喋る言葉が聞き取りづらく、聞き間違いなどがあるという。
「車の通りの多いところで聞きづらさがあったり、あとは雨が振っている中だと聞き取りづらさがあったりして、仕事では口頭の指示で忘れてしまうこと、理解しにくいこととかがあったり、複数人の会議でついていけなくなることがあったりします」
喜島さんが診断されたのは、APD(聴覚情報処理障害)。声を情報として認知するのが困難という症状があるものの、聴力には問題がないため、聴力検査で見つけることはできない。つまり“聞こえているのに聞き取れない”がAPDの特徴だ。そして、研究は進んでいるものの、その根本的原因や治療方法ははっきりしていないという。
喜島さんは当事者が集まる場所として、APDの当事者会を運営。当事者による交流会や、APDを社会に広く知ってもらうための活動を続けている。
「これまでAPDの症状があって、上手くいかないということを経験した方が多くて、自分を責めている人が多いので、『他にもそういう症状がある人がいるんだ』ということで、安心される方が多いですね」
「集中力がない」「怠けている」といった印象を持たれてしまうAPD。喜島さんはそんな誤解を生まないためにも、こういった症状があるということをまず知ってほしいと訴える。
「やはり子どもだと授業が聞き取れないなどで、ついていけないというのは切実な問題だと思うので教育関係の方とか、耳鼻科の先生方にもぜひ知ってもらいたい」
この件について、株式会社キャスター取締役CRO・石倉秀明氏は、実際にAPDの人が集まっているLINEのオープンチャットに入って知ったことを明かした。
「その中でAPDのなかでもいろいろな症状があることを知った。例えば救急車の音が聞こえにくかったり、車のクラクションが聞こえにくいので、車を運転するのが怖いと言ってる人もいた」
APDのような人が、社会と共存していくにはどうすべきか。石倉氏は、「社会にバグがある」と指摘する。
「障がいは、障がいなのかも知れないが、社会の方にバグがあると思う。社会とは、言葉を発して、コミュニケーションを取るというのが当たり前になっている。言葉を発すると、みんな聞けて意味が理解できるという前提で成り立っている。この前提条件が間違っていると思う」
(『ABEMAヒルズ』より)
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