ウクライナ侵攻めぐり“どっちもどっち論”も…「侵略した側・された側は同じではない」「“複数ソース”を見比べて議論を」
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 12日に行われた東京大学の入学式に来賓として出席した映画監督の河瀨直美氏の祝辞が波紋を広げている。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に関する、いわゆる“どっちもどっち論”ではないかと批判の声が集まっているのだ。

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■パックン「侵略した側と侵略された側は同じではない」

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 複数のメディアが「ロシアを悪者にするのは簡単」といった見出しで伝えた箇所は、次のように続く。

 「けれどもその国の正義がウクライナの正義とぶつかり合っているのだとしたら、それを止めるにはどうすればいいのか。なぜこのようなことが起こってしまっているのか。一方的な側からの意見に左右されてものの本質を見誤ってはいないだろうか?誤解を恐れずに言うと「悪」を存在させることで、私は安心していないだろうか?人間は弱い生き物です。だからこそ、つながりあって、とある国家に属してその中で生かされているともいえます。そうして自分たちの国がどこかの国を侵攻する可能性があるということを自覚しておく必要があるのです。そうすることで、自らの中に自制心を持って、それを拒否することを選択したいと想います。」(令和4年度東京大学学部入学式 祝辞(映画作家 河瀨 直美 様) | 東京大学 より)

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 14日の『ABEMA Prime』に出演したパックンは「発言を“切り抜き”して誤解を招きそうな報じ方をするのは良くないし、メディアの悪い癖だ。前後も含めてしっかり報じていれば、“そういうことね”と分かる部分”もあったかもしれないし、“ロシアが悪だ”という決め付ける前に、冷静になって丁寧に検証すべきだというのは確かにその通りだと思う。ただ、主権国家を侵略した側と侵略された側は同じではないことを認めるべきだ。侵略していることについては、“ロシアが悪い”と言っていいのではないか。また、日本は世界のリーダーとして調査・検証をする必要もあるが、決断し、動かなくてはいけないタイミングもあるということを念頭に置かないといといけないと思う」と指摘。

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 また、“どっちもどっち”論で引き合いに出される、アメリカが中心となってフセイン政権が大量破壊兵器を保有しているとの主張をもとにイラクに軍事介入したイラク戦争(2003年)をめぐる議論について、次のような見方を示した。

 「僕がロシアやプーチン政権を批判すると、“お前の国はどうなんだ?”と言われる。嘘をついて主権国家を侵略し、戦争犯罪を犯したじゃないかと。僕はいつも“その通りです、認めます”と言うようにしている。ブッシュ大統領やその周辺の人々は、上がってきていた報告を自分の都合の良いように解釈し、誤った情報を流していたからだ。そこは認めるべきだと思うし、戦争犯罪者として追及されるべきだと思う。あの時、フランスやドイツは戦争に反対していた。僕自身も、他の国々からの情報に触れるべきだったと反省している。

 そして今回のウクライナ侵攻についても、何が真実なのか分からないからという意見がある。ただ、ロシア以外の国々の報道は、ほぼ揃っていると思う。もしウクライナ側がでっち上げを行っているのなら、報道の自由のある国のどこかが検証するはずだ。現時点ではロシアの方が嘘を流していると判断していると判断していいと思う」。

■町山智浩氏「プロパガンダを国際社会に撒き散らしている」

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 また、映画評論家の町山智浩氏は、こうした議論について「そもそもロシアが出している情報の中にも“ロシアが悪いことをしている”ということを証明する情報が含まれる。例えばプーチン大統領は演説で“ウクライナという国は存在すべきではない”とはっきり述べている。彼らにとっては正しいと思えることなのだろうが、国家に対して“存在するな”と主張している時点で犯罪的だ。“どっちもどっち”とか、冷静に、偏らないで考えようというのは分かるが、そう言っているだけではなくて、自分でも真実を見つけるために動いてもいいと思う」と話す。

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 「ロシアは2016年のアメリカ大統領選挙に介入しようとして、SNS上でフェイクニュースをばらまいていたことがFBIの調査でも分かっているし、今もRTやスプートニクといった報道機関を通じてプロパガンダを国際社会に撒き散らしている。おそらく今後、ウクライナでの虐殺についても、“ウクライナ側がやった”というでっち上げの映像や、拉致してきたウクライナ人に無理やり言わせたような映像が出てくる可能性があるだろう。そうした情報には気をつけなければならないし、対応する方法はある。

 まず、SNSであれば、そのアカウントをチェックしてみることだ。ロシアは国家を挙げてやっているので、実在しない人物であるケースもあるし、“ワクチン陰謀論”や、“バイデン大統領が票の操作を行った、本当はトランプ大統領が選挙で勝っていた”といった情報を同時に流しているケースもある。“ワクチンで人々をコントロールしようとしている”とか、“ユダヤ系の大金持ちが世界を裏で操り、支配している”といった“ディープステート”という概念を信じている。

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 そんなの日本には関係ないと思われるかもしれないが、“Qアノン”と呼ばれる、このような人々の拡散は、実は日本を中心に行われているということも分かってきている。今回の戦争に関しても、“国際的な資本が武器を売るために戦争を起こそうとしている”といった主張を展開しているアカウントもある。これらの陰謀論は連動しているし、そうした情報を流しているアカウントは信じない方がいい。

 また、英文サイトではあるが、『#UkraineFacts』という、SNSに上がってくる映像などをファクトチェックしている国際的なネットワークのサイトもあるし、意見が対立しているところも含め、海外で信用されているメディアを複数見ることも有効だ。米ニューヨーク・タイムズや英BBC・インディペンデント、仏ル・モンド、中東系ではアルジャジーラ、インドにも英語のニュースサイトがある。それらが共通して報じていれば事実だろうし、逆にどこも取り上げらいなければフェイクの可能性が高い」。(『ABEMA Prime』より)
 

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