やっと歓喜の「かつら飛ばし」ができた。将棋界の早指し団体戦「第5回ABEMAトーナメント」の予選Aリーグ第3試合、チーム羽生とチーム三浦の対戦が4月30日に放送された。チーム羽生の佐藤紳哉七段(44)は、この試合の第1局でチーム三浦・池永天志九段(29)に勝利し、昨年に続く2大会連続の出場で念願の初勝利。今大会前に「勝つでやらない」と宣言していた持ちネタ、かつら飛ばしをついに果たした。
「初日の出!」。両手でつかんだかつらを思い切りよく頭上に飛ばし、輝く頭を見せつけた。予定では「勝った時に飛ばそうと思っていた」が、最終盤まで際どい勝負になったこともあってか「タイミングが全然」つかめず、勝利後インタビューでようやく一息。「ここで行っていいですか?」とスタッフに告げてから約束を果たすと「長かったです」としみじみ語った。
池永五段との対局は先手番から相矢倉になった。「なんとか結果を出したいです」と強く誓って盤に向かった。チーム永瀬との試合では3局に登場するも全敗。持ちネタを披露する、しないの前にチームの勝利に貢献できなかったことがつらかった。それでもこのチーム三浦との大事な初戦を託され、いつも以上に気合が入らないはずもない。序盤はややリード、中盤に入り互角に戻った熱戦は最終盤でも端まで追い詰められた自玉も、ぎりぎりのところで相手の攻めをしのぐという、ハラハラな展開の連続だった。見守っていた羽生九段、中村太地七段(33)からも「いやー」「えー!」と悲鳴にも似た声援が飛び続ける中、139手でなんとか逃げ切った。
昨年の大会でも羽生九段に指名されチーム入り。チャンスと見るや、何度もかつら飛ばしを披露していたが予選を通過、本戦では初戦敗退となった戦いの中で、1つも勝つことができなかった。今年こそチームの力になる。「自分がチームの鍵」と自覚するコメントを何度も発し、発破をかけ続けていた。
思わずこみ上げそうにもなる初勝利の後は、2局ともに熱戦となったが惜敗。「ヒーローになれませんでした」とうつむくシーンもあったが、大会史に残るようなフルセットの名勝負となったのも、この第1局で佐藤七段が勝ったからこそ生まれたもの。ファンはきっとまた、熱戦とかつら飛ばしのコラボレーションを待っている。
◆第5回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名を漏れた棋士がトーナメントを実施、上位3人がチームとなり全15チームで戦う。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選リーグ、本戦トーナメント通じて5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)