子どもたちの学校生活をより良くするために活動するPTA。新学期が始まり1カ月。Twitter上には、役員を引き受けることになった保護者たちの嘆きの声が上がっている。背景にあるのはデジタル化の遅れや、時代にそぐわない旧態依然とした運営スタイルだ。
■「そんなことしなくていい」会長がGoogleフォーム利用に反対…
「“去年の文書を訂正したら、データはフロッピーディスクに保存してくださいね”と説明された。“フロッピー!?”とすごくびっくりしたし、周りもざわざわしていた」と苦笑するのは、小学校で副会長を経験したまあささん(30代)。また、別の女性は「アンケートが全て紙で配布され、子どもが家に持ち帰って親が記入し、回答欄の部分を切り取って連絡帳に入れ、先生が回収してPTAに渡す。そして役員がパソコンに手入力する。令和の時代に、なんてアナログなことをしているのだろうというモヤモヤがある」。
こうした状況に対し、Googleフォームの利用を提案した山田さん(仮名・30代)の場合、1人だけが賛成の意思表示をしたものの、他の役員からは「よく分からない」「大丈夫なの?」といった反応が出たばかりか、会長からは「そんなことしなくていい。やめてくれ」とまで言われてしまったと振り返る。「保護者がずっと辛い、苦しいと思っていることを楽にするための提案なのに“えっ?どうして!?”みたいな、何で分かってくれないんだろうねという形だ」と話した。
役員の経験もあるライターの長島ともこさんは「粛々とやってきてくださった先輩方を尊敬しつつも、LINEで気軽につながれる時代、全体的にデジタル化の底上げは大事だと思う。共働き世帯が増えていることもあり、平日の会議をやめるなど、負担軽減やデジタル化の動きは進んでいた。少しずつ進んできた。それがコロナの一斉休校もあって一気に進んだPTAもあるが、“デジタル化はしなくていい、今年は活動ゼロで行きましょう”というPTAもある」と明かす。
また、京都市PTA連絡協議会会長の大森勢津さんは「改革は難しいと思うが、京都市の場合、教育委員会と両輪になって進めているというところもあり、10年以上前にPTAが中心となってメール配信システムを整備、各校の全保護者6万5000軒に対して一斉に情報発信やアンケート調査ができるようになっている」と話す。
「私は協議会会長としての取り組みと同時に、単P(学校単位のPTA)の改革にも取り組んできた。例えばベルマーク集めに関しても有志でやることにしたら、無くなった。実は活動が成り立つほど、有志の方がいらっしゃらなかったということだ。活動の見直しは必要だし、大切だ」。
■学校単位のPTAの上部団体「日P」の改革も必要だ
また、各学校のPTAには上部団体が存在する。それが“日P”こと日本PTA全国協議会(公益社団法人)だ。長島さんは「その存在を否定はしないし、歴史のある団体だと思うが、何をしているのかが見えてこない。ホームページ上で情報公開や事例報告みたいなことはやっているが、それが降りてこない。もっと広報をしてほしい」と指摘する。
大森勢津さんが会長を務める京都市PTA連絡協議会も、そんな日Pの運営方針に疑問を抱き、退会を検討している。
「日Pの本来の役割とは、全国の保護者の声を集めて国に届けること。そして、日Pを形成する正会員と呼ばれる、47都道府県と政令指定都市の64協議会が情報や課題を共有し、運営に還元していくことだ。しかし、その役割を果たしていないのではないかというところで問題提起をさせていただいている。
それは“日P憎し”というわけではなく、京都市が財政難にあり、市P連に対するサポートが切られていく中で、予算をどこに振り分けるかということをシビアに見ていかないといけない局面に入っているという事情もある。中でも日Pへの支出が突出して大きいということもあり、上ではなく、まずは京都市内のPTAをしっかり見て、支援をすることにお金も労力も使っていきたいということだ。
そもそも所属するかどうかは各協議会が決定することだと思うし、PTAは任意団体なので、日Pだからといって抜けてはいけないというものでもないだろう。もちろん、私も全国組織はあった方がいいと思っている。しかし、保護者というのは自分の子どもが通っている学校のためにボランティア精神で単Pの活動をするわけだ。
そして協議会というのは単Pのための組織、そして日Pは協議会のための組織でなければダメだと私は思っている。“子どもたちのためだ”と言われたら誰も反対できないが、たとえば私たちの協議会が“子どもたちのためだ”と主張する事業が単Pの負担になり、役員のなり手不足につながったり、協議会を抜ける単Pが増えたりしてしまえば意味がない。
それは日Pにも言えることで、私たち協議会を運営しやすくしてくれれば、単Pも運営がしやすくなる。つまり、ピラミッド構造の中で、誰を支援するかというところを取り違えているから重複するし、混乱するし、“子どものためだから我慢しろ”みたいなことにもなってしまう。何を支援するべきか、この組織は何をすべきかという目的、対象を明確化するというのがすごく大事な視点だ」。(『ABEMA Prime』より)
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