在日コリアンの歴史と今も残る差別、韓国カルチャーを楽しむ若い世代にも教えるべきなのか? 当事者たちの葛藤
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 先月、京都の「ウトロ地区」にオープンした、朝鮮半島から集められた在日コリアンたちが強いられてきた苦難の歴史を伝え、人権を学ぶ「平和祈念館」。

【映像】在日コリアン差別 なぜ今も残る?知らない世代も...あえて伝えていく意味とは

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 この建設途中に発生、展示予定の資料が焼失するなどの被害が出たのが、同地区への放火事件だ。被告の男は「韓国が嫌いだった」と話していることから、在日コリアンへのヘイトクライム(憎悪犯罪)だったとの見方もある。

 終戦から77年経った今も日本社会で嫌がらせを受けつづける在日コリアンの人々。牛丼チェーン「吉野家」が外国籍の学生の採用説明会参加を拒否したというニュースが波紋を広げる中、10日の『ABEMA Prime』では、当事者たちに胸の内を語ってもらった。

■「むしろ今は韓国語を喋れたらモテる(笑)」。

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 仙台市在住の在日コリアン3世で、メジャーアーティストとして活動しているニシハラ・スンホ(29)さんは、「戸籍名がハン・スンホで、通名がニシハラなのだが、取引先はほとんどが日本の会社なので、一応“在日の外国人です”と説明をし、日本に住んで、日本語が喋れると分かるよう、“ニシハラ・スンホ”と名乗っている」と話す。

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 「仕事上、外国人だからといってお仕事がないということはあまりないので、全然気にならない。日本人の友人が、ふざけて“北朝鮮帰れよ”みたいなことを言われる時もあるが、ふざけて言っているだけだし、僕自身が国籍にあまりこだわりを持っていないので、ああ言っているなぐらいの感覚だ。むしろ今は韓国語を喋れたらモテる(笑)」。

 それでも、明るく笑い飛ばせるような経験ばかりではなかった。

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 「“日本語喋れるの?”みたいなことを言われたり、バイトの面接で“ちょっと素性が分からないから採用できない”“(国籍を理由に)朝鮮人は雇えないです”と言われたり。逆に、在日朝鮮人同士で結婚すると“おめでとう”となるが、日本人と結婚すると聞くと、“え、日本人と結婚するの?”“ちょっとそれありなの?”みたいな雰囲気になることは、僕の世代でさえある」。

■ロンブー淳「意識したのは東京に来てからだ」

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 大阪市出身のラブグラフCCO・村田あつみ氏は「通っていた高校がコリアンタウンの鶴橋にあったので、仲の良いグループの半分が在日コリアンだった。しかし日本で生まれ育っているので、もちろん日本語が話せるし、見た目も変わらないので、それこそ通名を使っていたことを卒業する時に知った、ということもあったくらいだ。唯一、差別っぽいことがあったとするならば、親に“彼氏が在日コリアンです”と伝えると、“結婚はちょっと考えなよ”と言われた友達がいたくらいだ」。

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 また、下関市出身のロンドンブーツ1号2号の田村淳は「下関と韓国の釜山を結ぶ関釜フェリーが行き来していて、在日の方もたくさんいる街で育ったので、友達も普通にいる。だから差別があるんだと意識したのは、むしろ東京に来てからだ。在日の子と付き合っていたとき、向こうの両親に挨拶しに行くと、お父さんは“会いたくない”と。俺が日本人だからなのか、俺のキャラクターが単純にいけなかったからなのはわからないが、もしかしたら地元の友達やそのお父さんお母さんが俺たちに言わなかっただけで、実は差別を感じていた、ということも合ったのかも知れないと思う」と明かした。

■「“差別法”を作ったということはあまり語られない」

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 一方、外国人差別をテーマにしたドキュメンタリー映画「ワタシタチハニンゲンダ!」が今月公開予定の在日コリアン2世・高賛侑監督(高=正式にははしごだか)は次の様に話す。

 「僕が学校に通っていたのは1950年代、60年代だが、当時の在日朝鮮人差別は凄まじいものだった。クラスにも何人かいたけれど、どこへ行っても日本の名前を使い、朝鮮人であることを必死になって隠そうとした。もし皆さんの父親が犯罪者だったとしたら、やはり必死に隠そうとするのではないか。それと同じぐらいの、それだけのものがあったと思うし、子供心に非常に傷ついた」。

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 その上で高氏は「もちろん結婚など、社会における差別の問題もあるが、国家が“差別法”を作ったことはあまり語られない」と指摘する。

 「日本の植民地時代、多くの朝鮮人が渡ってきた。そして終戦から2年後の1947年にできた外国人登録令によって、朝鮮人は徹底的に管理されることになった。それは1951年にサンフランシスコ講和条約が結ばれると同時に外国人登録法という法律になり、朝鮮人は日本国籍を離脱、日本人でなくなった。だから日本政府として税金は日本人と同じように取るけれども、社会保障はやらないということになり、それが未だに続いている」。

■「それでも“帰化”の話はしづらい」

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 では、日本に“帰化”すればいいのではないか。そんな疑問に対し、ニシハラさんは「言いたいことは色々あるが、ノーコメントでいいだろうか」と言葉を濁す。「帰化について触れると、在日朝鮮人社会に良く思われない、ということがある。僕自身は賛成派で、帰化することによって参政権など日本人と同等の権利が得られることになる。だから僕らの世代は、生きていくうえで帰化した方が、生活が良くなるからするという人もいる。しかし在日朝鮮人の立場としての話はできない」。

 一方、高さんは「“帰化”という言葉自体、“その国に忠誠を尽くす”という意味があって、今では少しはましになったものの、かつては“日本名を使って日本人になりきるから、どうか帰化を認めてくださいませ”というものだった。例えばサッカーのラモス瑠偉さんも、相当な葛藤があったようだ。

 一方、アメリカでは国籍を選択する、あるいは市民権を得ると表現し、民族などのアイデンティティを捨てるという概念でない。今の若者たちが自分の意思でどの国籍を選ぶかは自由だ。しかし、日本がかつてそういう意図で帰化制度を作ってきたこと、それが根本的には変わっていないことは分かった上で選ぶべきだ」とした。

■「逆に“差別されている”と思う日本人が出てきた」

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 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「戦後しばらくの間は、かつての旧植民地だった地域の人々に対して、“なんだよ偉そうにしやがって”みたいな差別意識が日本人にあったのだろうし、それが団塊の世代、親の世代には残っているのだと思う。一方で、若い世代は新大久保やBTS、コスメみたいなところが入り口なので、差別意識が生まれようがない。だからこそ、“在日って何?”“日本語喋れるの”と、気楽に差別的なことを口にしてしまうこともあるのかもしれない。

 さらに問題なのは、近年の“新しい差別意識”ではないか。様々な社会問題に目が向くようになり、LGBTなどのマイノリティや弱者を包摂しよう、という意識が社会に出てきた結果、“自分たちの権利が奪われている、侵害されている、差別されている”と思う日本人が出てきた。

 同様の事象は、黒人へのアファーマティブ・アクションによって地位が脅かされていると感じたアメリカの白人たちによる黒人差別、移民によって仕事を奪われていると感じたヨーロッパの人々による移民差別にも見られていると思う。加えて、日本では音楽などの文化が日本のものよりも売れて、カッコいいとなっている。そうしたことによる“奪われている”とか“こちらがマイノリティ”だという意識については、“差別はけしからん”と言っているだけで解決しないのではないか」とコメント。

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 通信制高校ルークス代表でオープンリーゲイの斎木陽平は「LGBTに対する差別も存在するので、僕自身もゲイであることをひた隠しにしてきた。LGBTQ、在日というものがあるんだと知った結果、からかいや、いじめの種になることもあるかもしれない。それでも“ダメなことなんだ”ということを言っていかなければならないし、日本人は“ことなかれ”にするのではなく、もっと話をしてくるべきだった」と指摘した。

■「だからといって日本人を嫌いになるということはない」

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 こうした意見についてニシハラさんは「僕の世代までは、朝鮮学校で弾圧の映像ばかり見せ続けるなど、“日本人が悪い”という教育が行われていた。それが高校くらいになると、日本社会で暮らしていけるよう理解し合おうという考え方の教育をしようとする先生が現れてきた」と振り返る。

 「確かに、こういう歴史があった、と教えることが差別を助長してしまう部分もあると思うし、他校の生徒さんが朝鮮高校の前に来てケラケラ笑っていたのを見て嫌だなと思ったことがあった。しかし、彼らも北朝鮮のミサイルのニュースを見て、面白がってやったのかもしれない。だから在日朝鮮人側から険悪なムードがあるといった主張するのも、あまり良いことではないと思う」。

 一方、高さんは「部落差別の問題で、よく“寝た子を起こすな”ということが言われる。つまり、それまで知らなかった子どもたちにわざわざ話をする必要はないという考え方だ。しかし、差別があるという現実を知った上で“これはダメだ”という意識を持っていれば、年を取った時に受け入れることもできるだろう。やはり歴史をないものにするのはやはり良くない。それは戦争についても同じではないか」と話す。

 その上で高さんは「確かに、本当に苦労した在日1世たちは日本人のことを悪く言うかもしれない。しかし僕は朝鮮大学校時代、日本人は悪だということは習ったことがない。植民地時代の歴史、戦後の差別の歴史も知識として知っているし、ある程度は体験もした。だからといって日本人を嫌いになるということはないし、批判をするのはあくまでも政府だ。やはり僕がノーと言うものは、多くの日本人もノーというし、逆もそうだろう」と訴えていた。(『ABEMA Prime』より)

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