最大138キロから74.65キロと驚きの減量を遂げてまるで別人のようになったファイターが、スタミナに不安の声が聞かれた中で驚異の粘り強さと無尽蔵のスタミナを見せつける激闘を展開。最後は左フック一撃で壮絶に散ったが、その後、リングに運び入れられた担架を「大丈夫、大丈夫」と断固拒否し、セコンドに両サイドを抱えられて自ら立ち上がる姿に視聴者からは「燃え尽きちまったなぁ…」「感動した」「よく頑張った」と称賛と労いの声が多数寄せられた。
5月21日に後楽園ホールで開催された「Krush.137」で、神保克哉(K-1ジム目黒TEAM TIGER)と植村真弥(WSRフェアテックス幕張)が対戦。試合は3ラウンド、神保が植村を強烈な左フック一撃で沈めて見せた。しかし、前代未聞ともいえる最大63キロの減量を成功させ、新たな階級で激闘を演じ、ファンを魅了した植村に多くの反響の声が寄せられた。
ぷよぷよの“わがままボディ”をトレード・マークに2018年6月、ヘビー級選手としてKrushに初参戦。以降は90キロのクルーザー級で奮闘してきた植村。見た目以上に動ける剛腕として人気を博してきた「幕張の怪人」が今回、最大63キロの大減量を経て75キロのリングに降臨した。
新生・植村の姿に「別人じゃないか」「やつれてないか?」と視聴者も騒然。一方、K-1新階級75キロの主役になるべく猛アピールを続けてきた「目黒の特攻隊長」こと神保にとっては、おいしいところを全て植村に持っていかれる危機的状況。絶対に負けは許されない。
注目の試合は1ラウンドから削り合う攻防。痩せてもガードを固めて前へ前へ。そこからフルスイングの豪腕を振るっていく植村の攻撃、さらにブルブルのお腹が躍動するスタイルは変わらない。神保も大きなフレームを活かし、一歩も譲らず至近距離での打撃戦を挑んでいく。
2ラウンド、神保はひたすらカーフ狙いの右ロー。植村は得意の高速バックブローからアッパー、フックと剛腕を振るう。「減量でスタミナが落ちた?」「減量でパワーが落ちた?」そんな周囲の不安を吹き飛ばすように前へ出る相手に、神保はミドルとボディフックでスタミナを削る作戦だ。
最終3ラウンド、開始とともに剛腕フックをぶん回す植村に対して、神保はやや落ち着きを取り戻したか、左ボディやヒザなど、執拗なボディ狙いで植村の右ガードを下げていく。巧みにパンチを散らしながら要所で繰り出される的確な左ボディが効いたか、次第に植村が下を向き始める場面が目立ち始めた。
そんな植村の様子に試合を中継したABEMAの視聴者からは「ボディで倒れるなよ」「頑張れ植村」など声援の声が殺到。しかし、神保の容赦の無いボディ連打から、右ストレート、最後に左フックが一閃されると、これまで蓄積したダメージが一気に噴き出すように植村はロープ際でガクリと崩れ落ちた。
壮絶に散った植村のエンドに「燃え尽きちまったなぁ…」「悔しい」「惜しかった」「良くやったよ」と称賛と労いの声が殺到。体育座りのような格好でヘタりこむ植村の姿は、精魂尽きたといった言葉がピッタリだった。その後、リング内に担架が持ち込まれるが、植村は右腕を上げて「必要ない」とばかりに断固拒否。最後まで意地を見せた植村の姿は印象的だった。
善戦およばず敗れた植村。腹パン地獄に意識が下に行きすぎたか、予期せぬ顔面への一撃に対応できなかった。そんな衝撃的なダウンシーンに解説の石川直生も「ボディに意識が行っていたので完全に顔に意識はなかった」と驚きを交えつつ振り返った。
一方、見事な勝利を収めた神保は試合後に「植村さんがすげえ試合を盛り上げてくれて、ここで負けたら全部持っていかれるなって。そんな気持ちでやってました。根性があるいい選手だなと思いました」と相手を称えつつも、急激な減量での新階級挑戦については「みんなも減量のキツさが分かったと思うんですけど、(植村選手は)減量しないほうが強いです」とも語った。