TikTokの“淡々解説”が話題 元日経記者・後藤達也氏に聞く「悪い円安」の真実
後藤達也×成田悠輔
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「まだフリーランスになってから1カ月ちょっとなので。どこまで何がやれるのか、よくわかっていません。試行錯誤でいろいろやってみて、ダメだったものは見直して、うまくいったものを続けようと思っています」

【映像】「ポイントが一目で分かる」後藤達也氏の株価分析表(画像あり)

 こう語るのは、元日経新聞の記者で経済アナリストの後藤達也氏だ。今年4月、日経新聞を退職し、独立した後藤氏は、現在マーケットの動きをTwitter・YouTube・TikTokといったSNSで発信している。

 後藤氏のとにかく速い“速報淡々解説”には注目が集まり、YouTubeで繰り広げられる経済解説は多くのファンを獲得し、さらにTikTokにも進出、若者へのリーチを広げている。そのあまりの速報の速さに「サイボーグなのでは?」という噂もあるほどだ。

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 ニュース番組「ABEMAヒルズ」では、後藤氏と経済学者でイェール大学助教授・成田悠輔氏との対談が実現。今の日本経済の状況について、議論を行った。

■後藤達也氏「中立な情報発信のニーズがあった」“サイボーグ説”は否定

成田:(速報が速すぎて)後ろでbotが動いたりはしていない?

後藤:ずっとちゃんと一人でやってます(笑)。

成田:ネットっていうと、過激な情報がウケる場所っていう先入観があるじゃないですか。後藤さんがやってることってそれと対局ですよね。客観的かつネットのフォーマットに合わせて、成型して発信されている。ある意味、生真面目な活動だと思いますが、これは最初からこうしようとしていたんですか?

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後藤:たしかにバズったり、フォロワーを増やしたりする意味では、エッジを効かせて、極端な話をすれば、獲得できるかもしれませんが、それってあまり持続的じゃないなと思って。フォロワーもすぐに増えなくていいので、なるべく中立かつ客観的であることを意識してやっていきたかったんです。結果、フォロワーもちゃんとついてくれました。過激なことばかりを追い求めて「この株は買いだ」「もうこの株は終わりだ」と言っていると、しばらく経つと見ている人も「この人が言っていることっておかしいな?」とフォロワーも気付いて離れていく。その中で、淡々と中立に発信していくニーズがあったように思います。

成田:ブログメディアって煽り見出しみたいな印象ばかりがある。後藤さんの活動は、それに対するアンチテーゼにも見えます。

後藤:いろいろな視点をお見せしても、株価が上がるのか下がるのか、先々のことはわからないわけですよ。「ここが買いですよ」「売りですよ」なんてことは、無責任で私には言えません。その上で、投資の自己判断になる材料を私から示せればと思っています。

成田:僕はちょっとした炎上芸人になっているので、後藤さんの活動を見ていると、ちょっと自分が恥ずかしくなります。後藤さんから学んで、僕もちゃんとした情報を出していきたい(笑)。

■新型コロナ、ウクライナ侵攻…成田悠輔氏「社会全体がすごく不安定」

後藤:今はアメリカのインフレが激しくて、それに対応するために中央銀行のFRBが利上げしなくちゃいけない。細かく話すと長くなってしまうので、詳細は省きますが、ここ数十年間、体験しなかったことが起きているんです。ここまでの金融引き締めは起こらなかった。(市場が)非常に動揺して、株価が落ちている。アメリカの金利が急激に上がっている関係で、為替市場って基本的に金利が高いところにお金が流れていくので、その影響で為替も円安・ドル高に進んでいます。

コロナ後の景気対策によって、すごい需要がある一方、物流がなかなか機能していなかったり、原油価格もロシア(のウクライナ侵攻)によって上がったりしている。非常に難しい複合要因の中で、インフレが記録的に上がってしまっている。これがすぐにおさまるのかどうかは、誰にもわからない。専門家でも明確には読めない。うまくおさまってくれれば、株安も円安も落ち着いていくと思います。
 
成田:アメリカでは、目に見えて物の値段が上がっている。特にニューヨークだと、家賃が1年で15〜20%くらい上がっていて、これまで見たことがないようなインフレが起きている。それに新型コロナや、ウクライナ侵攻といった経済ではない影響があって、社会全体がすごく不安定だ。アメリカでも都市部で急激に犯罪が増えていて、店の打ち壊し運動のような事態も起きている。経済の問題と、未来に対する先行きがよくわからないような、広い意味での社会の問題が組み合わさっているように思う。

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後藤:アメリカはインフレが起きると社会不安につながりやすいんですよね。今、原油高でガソリン代だけではなく、食料品などの生活必需品の値段も上がってしまっている。バイデン政権は「低所得者をしっかり守っていく」という意識も強いので、約半年後に中間選挙がありますが、そこは大きな争点になっていくでしょう

■日本経済は「悪い円安」か? 後藤達也氏に聞く

後藤:今の日本は内需が弱い。何度か(規制の)緩和はありましたが、なかなか消費が伸びないとここ2年で改めてわかった。賃金も低いですし、内需が弱い中で、世界経済が揺らいでいる。いまだにしっかりとした回復が見られない中、残念ながら、今後また落ち込んでしまうリスクもあると思います。
 
成田:後藤さんに聞いてみたい。日本では今、円安問題が大きくクローズアップされている。日本円で稼いでいる人は(景気が)悪くなっているように思われるかもしれないが、一方で日本にあるものが相対的に安くなるので、海外から投資を呼び込みやすくなるっていう側面もある。後藤さんにとって円安は、悪いものだと思うか。良いものだと思うか。

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後藤:私はプラマイゼロに近いものだと思う。最近、報道でも、財務省でも「悪い円安」といった言葉を使ったりするので、イメージとして悪い感じがここ数カ月で強まっている。例えば、輸入業者やガソリンを買う人は、円安だと負担が大きくなるので、人によっては当然悪い面もある。一方で、トヨタ自動車は最高益を記録しています。今はインバウンド需要が新型コロナで難しいですが、新型コロナがおさまれば、爆発的に観光客がくるかもしれない。トータルでいうと、プラスか、マイナスか、明確には言えないですね。トントンに近いのではないでしょうか。

じゃあ、なぜ「悪い円安」論が出ているのか。困る人の数を考えると、トヨタ自動車に勤めている人は限られているわけで、一方で、日々スーパーで買い物をして「値段が上がったな」と思う人は多い。そういう苦労に寄り添うのは、政治判断として正しいかもしれないので、政治サイドからも(「悪い円安」論が)出やすい。メディアも弱者に寄り添う傾向があったりするので、そのあたりも強めに出ていると思います。

(「ABEMAヒルズ」より)

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