急増する精神障害者雇用に、現場ではハレーションも…「症状は人それぞれ。いち従業員として接して」
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 民間企業などに一定割合以上で障害者を雇うことが義務付けられ、厚生労働省の調べによれば、企業で働く障害者の数は18年連続で過去最高を更新(去年は59万7786人)。中でも対前年比が最も大きかったのが、4年前から企業に義務付けられる「法定雇用率」の対象に加えられた精神障害者(+11.4%)だ。

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 ITサービス大手のトランスコスモスでは社内に手話通訳士や精神保健福祉士を配置、514人の障害者を雇用し、可能な限り本人の希望に沿った職種に配属している。障害の有無によって人事評価や待遇面で差をつけることはないという。ノーマライゼーション推進統括部の横井山隆介統括部長は「多くの事業部で障害者の方が入っている状況だ。健常者よりも高い能力を持った人もたくさんいることも分かり、戦力として欠かせない存在になっている」と話す。

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 前職でのパワハラが原因で統合失調症になった男性(43)は契約社員として採用、体調を考慮して時短勤務からのスタートだったものの頑張りが評価され、2年目に正社員雇用に切り替えられた。「聞いたときには正直に嬉しいなと思った。同時に責任も伴うので、自覚をもって挑んでいこうという気持ちが強まった」と振り返り、「賞与がもらえるようになった」と笑顔を見せた。

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 他方、現場では課題も少なくないようだ。強迫性障害とうつ病の当事者の小野さん(仮名)は、ある企業に障害者として雇用され(契約社員)、3年目になる。障害者雇用に応募したのは、健常者として働いていた時、うつ病による体調不良で欠勤連絡をしたところ、“ズル休み”とか“嘘じゃないのか”といった扱いを受けてしまったからだという。しかし、今の勤務先でも辛い思いをすることになる。

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 「女性が8割ぐらいの職場だが、最も役職の高い女性の方が精神障害者を嫌っているようで、同じ時期に入った健常者の女性と喋る時には笑顔で声が高いのに、私と喋るときには表情がサッと暗くなって、声が低くなる。周りの人たちも察して、その役職者の女性がいる場では私と仲良くしゃべるのを避けるような雰囲気になった。最初にうつ病だということを言っておくだけでも違っていたかもしれないとも思うが、入社時に人事の教育担当の方が私への配慮からか、“無理して言わなくていい”と止めてきた」。

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 コールセンターでの勤務経験もある小野さん。しかし、今は電話も受けさせてもらえないという。「“できる”と言っているが、どうしても許可が下りない。電話ができるだけでも仕事の幅が広がると思うし、もっと質の高い仕事をしたい」。

■「いち従業員として接すればいいのではないか」

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 働く障害者のための労働組合「ソーシャルハートフルユニオン」の久保修一書記長は「“理解”はするが“納得”ができないということだと思う。動けなくなるとか、会社に来られない日があるということは理解できても、“じゃあ僕たちはどうなんだ”となり、共感が得られないケースは多い。例えば社内研修を導入するだけで適性を見抜けるようになったり、配属に成功するようにもなるし、そのための助成金もある。車いすの人を雇う際には多機能トイレを設置するのに、精神障害の場合はあまりお金が使われていない」と指摘する。

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 「会社側も障害者を雇わなきゃいけないとなった時に、応募してくる人に精神障害者が多いという状況がある。一方で、“一緒に働きたくない”という人も増えているのが実態だ。やはりコミュニケーションの問題が出てくるので、部署の中でどうしても上手くいかないというような本音が出だしているような気がする。

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 例えばうつ病、統合失調症、発達障害など、様々な障害を理解しなくていけないが、障害者の側は病名について理解してもらおうとはしても、自身についての理解は求めていなかったというケースも多い。病名をネットで検索すれば情報が出てくるので、知れば知るほど“これは働けないのでは”と感じてしまう一方、ADHDでも、症状は10人いれば10通りだ。本人が“病名はこうだけど、私はこうだ”と説明してくれれば働きやすくなると思う。

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 また、“気を遣う”と言っても、法律上は“合理的な配慮をしなさい”というドライなものなので、そこは就業規則という共通言語に則って、例えば”社歴がこのぐらいの人にはこのぐらいの業務”と割り振り、任せてみてできないとなれば“能力不足”という評価をするといった対応をしていかないと、お互いに疲弊してしまうと思う。ミスなく完璧に仕事をこなせる人なんてほとんどいないと思うので、障害者手帳を持って入社してきても、そこから先はあくまでもいち社会人、いち従業員として接すればいいのではないか」。

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 実業家のハヤカワ五味氏は「障害者手帳と聞くと症状が重いのではないかと思われがちだが、精神障害には“グレーゾーン”が多く、うつ病でも交付されることもある。ライトなADHDだという人は世の中にいっぱいいるわけで、想像力を働かせれば、きっと自分の職場にいるという前提で考えるべきだと思う」と話す。

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 久保氏は「障害者雇用だから、会社も雇う側も障害者手帳を持っている人を求めるし、働く側もこういう障害だと言って入るが、入社した後はいち社会人であり、いち従業員だ。対応ミス、多分完璧に対応できる人なんてあまりいない。病状も違うし、従業員として接すればいいのかなと思うし、そういう中で信頼関係も築かれてくると思う。また、これからは“雇用率”ではなく、いかに雇った人のキャリアを形成していくかという考え方に変わっていく。そういう雇い方になれば、状況は変わるのかなという気はする」と話していた。(『ABEMA Prime』より)

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