ベテラン棋士の気合の頬張りが、見るものの心をも強く打った。プロ将棋界唯一の団体戦「第5回ABEMAトーナメント」予選Cリーグ第3試合、チーム豊島とチーム山崎の対戦が6月11日に放送された。フルセットにもつれ込んだ最終局を任されたのはチーム豊島の深浦康市九段(50)。チーム山崎の阿久津主税八段(39)との一戦は千日手指し直しの大熱戦に。対局に集中するために自分の頬を力強く叩く様子に、ファンからは「すごい迫力」「まさに漢だ!!」と驚きのコメントが多数上がっていた。
深浦九段は1991年10月に四段昇段。一般棋戦は通算10回優勝、タイトルは2007年から王位3連覇の実力を誇るトップ中のトップ棋士だ。過去3度名局賞を獲得しており「名局メーカー」としても名高い。最大の魅力は絶対にあきらめないファイティングスピリッツ。普段の穏やかな語り口調と笑顔をかなぐり捨てて、顔を真っ赤に染めあげて盤をにらむ様子は同一人物とは思えないほどだ。
深浦九段が揮毫する言葉の中のひとつに「英断」がある。物事を思い切りよく決めるという意味があるが、それが発揮されたのがチームの勝利と予選突破を決めるフルセットの最終局だった。振り駒の結果、先手番は深浦九段に。深浦九段は銀冠に対しチーム山崎の阿久津主税八段(39)は穴熊。互いに絶対に負けられない一戦とあり、膠着状態が続き千日手が成立した。
先後を入れ替えた指し直し局は、阿久津八段の先手で角換わりに。対局者はもちろん、控室の緊張感もピークに達していた。互いに積極的に指し進め、深浦九段が再び現れた千日手筋を打開し△6五歩と強く踏み込む決断の一手。しかし阿久津八段も振り切ることを許さず、激しい攻防戦が繰り広げられた。互いに勝負どころを迎えたその時、深浦九段は自分の右頬をパンパンパン!と3回叩いて気合を注入。公式戦でも時折見せるこのしぐさは、見ているファンの心をも強く打ち付けた。最終盤まで二転三転の大激闘。時間を告げる機械音に紛れるように、阿久津八段が130手で投了を告げた。
まさに死闘。終局後には互いに言葉もなく、脇息にグッタリともたれかかる様子も。大熱戦を制した深浦九段は「思いの強い方が勝つと思って立ち向かった」と大きくうなずいた。熱い闘志の込められた一局にファンからは「鬼神のごとき活躍!」「深浦九段に守れないものは無い」「まさに漢だ!!」「勝つ思いが深かった」「恰好いいなんてもんじゃない恰好良さ」「涙とまらん」と感動のコメントが多数寄せられていた。
◆第5回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名を漏れた棋士がトーナメントを実施、上位3人がチームとなり全15チームで戦う。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選リーグ、本戦トーナメント通じて5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)