「当社所属のライバーであるローレン・イロアスの2022年6月10日の配信内において、不適切な発言がございました。配信内で使用する用語についての注意を喚起する意図で、改めて対面でのコンプライアンス研修を実施しました」。
人気VTuberのローレン・イロアスさんが10日に配信したゲーム実況をめぐり、差別的な言葉が使われたとの指摘受け、本人と運営元の『にじさんじ』が謝罪した問題。批判を浴びた「ファビョる」というネットスラングは、怒りの感情などを抑えられないことで現れる心身の問題を指す「火病(ファビョン)」という言葉がルーツで、韓国メディアが自国特有のものとして取り上げることもあるため、ネット上では韓国人を揶揄するニュアンスで使われてきた歴史もある。
一方で、イロアスさん自身は差別的な意味で使われるケースがあることを知らず、「テンパる」「早口になる」といった意図で使っていたと説明している。
フリーアナウンサーの宇垣美里は「“火病”については韓国の小説の中で何度か見かけたが、やはり自国に特有の精神疾患のようなニュアンスで使われていて、特に女性を揶揄するような、あまり良い意味では使われていない言葉だと思った。自虐であっても使わないだろうなと思った」と振り返る。
2000年頃から『2ちゃんねる』を利用してきたというコンテンツプロデューサーの前田地生氏は「韓国では女性の更年期障害などに対して“火病”と言ったりするようだ。日本では2ちゃんねる上で使われ始めたと思うが、差別的な意味を込めてというよりも、単に怒っている人を揶揄して使うことが多かったと思うし、実際、仲の良い人に対して“ファビョっちゃってるじゃん”と言うケースもあった」と話す。
「それが少しずつTwitter、YouTubeで使われるようになっていったのだと思うし、今は元になった“火病”という言葉を知らずに使っている人も多いのではないか。僕もたまたまイロアスさんの配信を見ていたが、本人が言う通り、本当に知らずに使っているのだろうと感じた。実はイロアスさんは別の問題で炎上して活動を休止していて、ちょうど復帰したタイミングだった。だから本人も気を付けていただろうし、運営側も指導はしていたようだったので、余計に叩きたい人たちの目に付き、取り沙汰されたのだと思う。
とはいえ、全ての言葉の語源や意味を調べることは難しいし、ネットスラングに関しても漢字の意味や日本語の変遷に近い部分もある。例えば“新しい”は“あらたしい”だったのが“あたらしい”になったとか、昔は“独擅場(どくせんじょう)”だったのが今は“独壇場(どくだんじょう)”と言うのが当たり前になっているとか、知らないし、わざわざ調べることもしないだろう。その意味では、今回のケースで活動休止というのは、少し同情してしまう」。
「芸人としては、若い頃にSNSが無くてよかったと思う」と苦笑するパックンは「これは“ダメだよね”というやりとりの中で決まっていくものだと思う。新しい言葉が生まれたり、進化したりするのは面白いし、それを制限するのは文化を抑圧してしまうことにもつながると思う。アメリカでは“ポリティカル・コレクトネス”といって、僕が子どもの頃に使っていたような“けなし文句”が使えなくなっていっている。それは社会的弱者を守る意味で正しいことだが、敏感になりすぎて、差別用語に似た単語を使っただけでクビにされるということも起きている。 もしも間違った言葉遣いで誰かを傷つけたとしたら、“二度と使わない”と謝ればそれでいいと思う」とコメント。
近畿大学情報学研究所の夏野剛所長は「炎上するのはメディアが取り上げるかどうかが重要なポイントになっている部分もある」と指摘、「20年ぐらい前のバラエティ番組を見ると、今ではとても許されないことがいっぱい行われている。僕も政府の仕事をするようになってから昔は許されていたことが許されなくなったし、現在とは立場が違う時代のツイートを引っ張り出されて炎上することもある。逆にゲーム関係の方やインフルエンサーが動画の再生回数を狙うために、あえて毒のあるような言葉を使うことによって支持を得る部分もある」と話していた。(『ABEMA Prime』より)
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