6月22日公示、7月10日投開票が決まった参院選。私たち国民はどこに注目して候補者を選べばいいのだろうか。
【映像】公約を読み解くポイントは?西田亮介氏がホワイトボードで解説
ニュース番組『ABEMAヒルズ』では、公共政策に詳しい東京工業大学准教授の社会学者・西田亮介氏と、世論調査を手掛けるJX通信社代表取締役の米重克洋氏に話を聞いた。(聞き手:徳永有美キャスター)
Q.選挙ドットコムの調査によると「参院選で重視する政策」は、ネット調査と電話調査でだいぶ違いが出ていますが、これはなぜでしょうか?
米重:ネット調査と電話調査は、大きく答える年齢層が違うという特徴があり、ネット調査は20〜50代と比較的若い層が回答しているが、電話調査は40〜70代と若干年齢層が高いという傾向があります。実際に選挙に行く世代というのは、40代後半から70代と平均よりも投票率が高い世代なので、そういった意味では電話調査の方がより選挙結果に反映した結果になるという特徴があります。
Q.ネット調査と電話調査ではそれぞれ関心が違うようですが、関心のポイントで気になるところはありますか?
米重:やはり高齢層の多い電話調査の方になると、比較的「社会保障・医療・福祉(28.7%)」とまさに高齢者の方がご自身の生活に直結する部分を気にされているというのが浮き彫りになっています。一方で、若い世代、現役世代というのは「経済・雇用(24%)」と、仕事が生活に結びついてくるということで関心が高いです。あとは、政治や選挙に関心がない世代というのは「わからない(24.2%)」。これは「どうでもいい」と言い換えてもよくて、そうやって態度表明する人も結構います。
Q.電話調査で3番目に関心が高いのが「外交・安全保障(13.2%)」ですが、これについてはどうお考えですか?
米重:昨年の衆院選はこの半分だったが、直近のウクライナ侵攻や世界の安全保障環境の変化によって、この辺の数字が大きく動いています。その分、国民の防衛といった意識が高まっていると間違いなく言えると思います。
Q.西田さんは、この調査結果を見てどこに注目していますか?
西田:政策全般に対する反応が複雑怪奇になっている印象を受けました。先ほど、米重さんがネット調査では生活に関する政策への関心が高いとおっしゃっていましたが、例えば、岸田政権になってからすでに「税制改革」が進んでいて大半の人たちにとっては負担増ですが、関心は、ネット調査では4.3%、電話調査では5.9%とそこまで高くないですね。そういう意味では政策をちゃんと理解して読み解くというのは現役世代も年長世代も問わず、あまりできていないのかなと思いました。
そして、各党が続々と公約を発表している。自民党の公約が出るのは16日の夕方で、注目されているが公約の内容は、それぞれ党によって分かれているのでどこに注目すれば良いのか。
Q.米重さんが公約を読み解くポイントは「自分のお金をどう使われたいか」と税金の使い方ということですが、やはりそこに注目しますか?
米重:政治に関心が持てないとか、選挙で誰に投票したらいいのかわからないという声を非常に多く聞きます。「議員や政治家の仕事はなんなのか」と考えた時に、私たちが支払った税金の使い道を決める仕事ということになります。そうした場合、自分が支払った税金を何に対して使って欲しいのか、納得感を得られるかという基準で選んでみてもいいと思います。
Q.西田先生が公約を読み解くポイントを教えてください。
西田:私が考えるのは「90年代化」と「国の在り方」の2点です。実はわかりやすいマニフェストが導入されたのは2000年代のことなので、要するに「前時代の百花繚乱的政策集に戻っている」ということです。こういうことでは困るので、具体的にわかりやすく、また実現できる政策の道筋を描いて欲しいですね。あと、もう1点。参院選が終わると選挙のない時期が続き、黄金の3年間と言われています。その間に国の在り方が問われることになるかもしれません。憲法改正国民投票です。それに対して、各政党がどういう態度を示していくか、そこに注目して見るのもいいかもしれませんね。
Q.これから私たちは投票をしていくわけですが、そもそも投票判断は党の公約を見ていけばいいのか。それとも、候補者個人の能力で選んでいけばいいのか。どう判断すればいいでしょうか?
米重:これはべき論というのはなく、ご自身が納得いく方でいいのかなと思います。結局、候補者の能力を見極めようとしても、個人のスタンスは見極めがつかないです。一方で、政策。こういったところで掲げているけども、守られてはいないという部分もあるので、自分の感覚や納得いく方がいいと思います。
Q.米重さんの肌感覚として今の若い世代のどんなところをつつけば政治について考えたり、投票に行ったりすると思いますか?
米重:一言で言うと、自分ごとになっていないことが大きいと思っています。一般に投票率は年代が上がるとともに若干上がっていきますけども、そういった中でいろんなライフイベントを経験して、自分の生活と政治の繋がりとか、行政サービスの繋がりを実感していくことで税金の使い方とかに関心を持っていくのではないかという考え方があります。ですが、今の若い世代は30年前と比べても投票率は下がっているので、そういったところでは普段行われている政治や政策の効果と、自分の生活と税金がどう繋がっているのかが全くリンクが見えない。投票はしたが、政策が結果変わったという自信がない、有権者にとって。そういうことが永遠と積み重なっていって、低関心というところに繋がっているのではないかと思います。なので、自分の一票がどういう政策なり政治の結果につながるかということをしっかり理解していくような教育が必要なのかと思います。
(『ABEMAヒルズ』より)
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