将棋のヒューリック杯棋聖戦五番勝負の第3局が7月4日に千葉県木更津市の「龍宮城スパホテル三日月 富士見亭」で行われ、藤井聡太棋聖(竜王、王位、叡王、王将、19)が挑戦者の永瀬拓矢王座(29)に145手で勝利した。この結果でシリーズ成績は2勝1敗となり、棋聖位防衛に王手をかけた。
ともに1勝1敗で迎えた第3局。勝者はタイトルに近づくため気合十分、両者は静かな闘志を燃やして盤を挟んだ。藤井棋聖の先手番で始まった本局は「角換わり」の戦型で腰掛銀を志向。第1局の決着局、第2局に続き、三度の戦型選択となった。互いの研究範囲内か、序盤はハイスピードで進行した。第3局立会人の島朗九段(59)が現地からABEMAの中継に出演し、「第1局、第2局は序盤で永瀬王座に主導権を渡していたが、藤井棋聖が戦い方を変えてきた」と印象を語った。
藤井棋聖が後手陣の桂頭に歩を打ちんだ手に、永瀬王座が休憩を挟んで1時間24分の長考。昼食明けに指したのは、桂馬で自陣を補充する一手だった。ABEMAの中継に出演した杉本和陽五段(30)は「意外な手。直線の攻めではなく緩急を付けようと選んだ一手」と解説した。しかし、ABEMA「SHOGI AI」の評価は藤井棋聖に70%まで振れることに。終盤戦では永瀬王座が底力を見せ必死の反撃を仕掛けたが、藤井棋聖が後手の攻めを的確にしのぎ切り、長手数の詰みに打ち取った。
この結果で藤井棋聖が2勝1敗として、防衛まであと1勝に迫った。終局後、ハイペースでの進行は「考えていた展開のひとつでした」と話した藤井棋聖。「途中あまり自信のないところもあったんですけど、上に玉を逃げて少しあませる形になったのかなと思いました」とほっとした表情を見せた。あと1勝で3連覇達成となるが、「スコアは意識せずにしっかり準備して臨みたいと思います」と冷静に話した。一方、第1局で先勝を飾るも連勝を許してカド番に追い込まれた永瀬王座は、「次局までに少しでも棋力を上げて、良い勝負の将棋を指せればと思います」と話した。
2回の千日手指し直しとなった波乱の第1局、永瀬王座の研究を打ち破り藤井棋戦が大逆転を飾った第2局、またも角換わり腰掛銀で永瀬王座を退けた第3局。シリーズはいよいよ終盤戦に突入するだけに、ますます両者の戦いから目が離せない。藤井棋聖が3連勝で防衛か、カド番の永瀬王座が追いつくか。注目の第4局は7月17日、愛知県名古屋市の「亀岳林 万松寺」で永瀬王座の先手番で指される。
(ABEMA/将棋チャンネルより)