「産業として成立しているという事実を抜きにして議論するのは、職業差別を助長するだけだ」紗倉まながコロナ持続化給付金の“性風俗除外”に憤り 
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 コロナ禍の事業者に支給されてきた国の「持続化給付金」が、風営法上の性風俗業者は“対象外”とされていた問題。これについて、大阪府の会社が「憲法で保障された“法の下の平等”に反する」として国などを訴えた裁判の判決が30日、言い渡された。

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 判決で東京地裁は「一時の性的好奇心を満たすような営業が国などの公認のもとで行われるものではないと大多数の国民が考えているとみられ、性風俗業者を区別する合理的理由はある」と指摘、会社側の訴えを退けた。

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 会見で弁護団は「差別を助長している。司法がそのような役割を果たしてしまったことは大変問題があるし、残念に思っている」(平裕介弁護士)、「本質的に不健全なんだから差別されてもしょうがないでしょということだ」(井桁大介弁護士)と批判。会社側も「到底納得できない」として即日控訴した。

■「性風俗営業の本質論を語ったということは非常に大きい」

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 立正大学法学部の岩切大地教授(憲法学)は「風営法は正式には『風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律』といい、“風適法”とも略される。風俗営業、つまりキャバクラやパチンコ、ゲームセンターなどについては適正化できるということで許可制の形での規制が入っている一方、性風俗関連特殊営業に関しては適正化が期待できない、すなわち国として許可はしないから勝手にやってくれ、ただし届出はするように、という突き放した形の規制になっている」と説明。その上で、裁判所の判断について、次のように話す。

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 「性風俗営業だけが対象外になっているのは、裁量としても際立っている。しかし経済政策による給付金で誰を対象にするかは行政の裁量が大きいのいうのが判例として確立してる。裁判所としてはよほど変でない限りは口出しをしないという構造になっている。だから今回の給付金についても、行政の判断を尊重するという形になっている。

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 また、性風俗営業の本質論を語ったということも非常に大きい。かつて風営法が改正された際、“なぜこういう区別になっているのか”と問われた政府が、“性風俗営業は不健全だからだ”と答弁した。この言葉が今回の訴訟でも国側の主張として出てきている。これに対し裁判所は性行為のようなものは親密な関係の中で行われるものだという性的道義観念、つまり国民感情があり、そこに配慮をしたことについて裁判所としては特に審査はしないという形になっている。

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 つまり本来は風営法における規制を理由づけるための根拠が給付金における区別にも波及し、それを裁量論の中で認めたという問題だ。法的な区別をする上で“道徳論”を使ってもいいものなのか。例えばわいせつ規制に関しても、最終的には“性的道義観念に反するから”ということで、やっぱり道徳が出てくる。この部分は法的にも“本音と建前”みたいなところがあって、建前の方が優先されている流れがあるが、なかなか正面から語られにくいので、やっぱり声を上げることが必要だと思う」。

■「国民感情が、というのは理由になってない」

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 紗倉まなは「ないがしろにされがちだし、こういう動きは前々からあったことだけど、やっぱりこうなるんだなと残念に思った。人の価値観によって不健全だとか、汚らわしいとか、そういう感情を抱くカテゴリーであることは分かる。ただ、それを行政や司法が露骨に主張することが信じがたい。"国民感情が"というのは理由になってないと思うし、需要があって、産業として成立しているという事実を抜きにして議論するのは、職業差別を助長するだけだと思う。“脱税をしているような仕事だろ、給付金を貰えなくても喚くな”、みたいな声は私にも届く。でも、突かれてもも悪事は出てこないようなお店だから給付金を申請しているわけで、ちゃんとしてる人たちの権利は守ってほしいと思う」と憤る。

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 ジャーナリストの佐々木俊尚氏も「事業者が不健全だと言うのなら、客だって不健全だろう。必要な仕事なんだという発想に立ち返る必要がある。そして、そもそも不健全な場所こそ、文化の源泉だと僕は思っている。例えば根岸吉太郎や相米慎二、周防正行といった有名な映画監督は日活ロマンポルノが輩出したし、アングラ雑誌で揉まれた編集者やライターが出版の世界で育っていった。そういうものは無かったかのようにして、上澄みだけを持って“日本文化でござい”と言うのは失礼だと思う。最近のきれいなものばかりを求める傾向というのは“ゼロリスク論”にも繋がるし、すごく嫌な感じがする」と応じる。

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 「BlackDiamond」リーダーのあおちゃんぺは「私の周りにも性風俗業で働いている子がたくさんいるが、給料が現金手渡しなので、税金を納めてない会社や人も多いと思う。そういう理由で支給できません、と言われるならわかるが、差別的な理由というのはどうかと思う。そして国民感情がどうとか、性行為は親密な関係になってからとか、本当に世の中のことが分かっているのかなと思う。パパ活とか、遊びに行って朝起きたら知らない人が隣で寝ていましたみたいなことって聞く話じゃないか。どんだけ慎ましいと思ってんの?と思う」と指摘した。

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 米・イェール大学助教授、半熟仮想株式会社代表の成田悠輔氏は「不健全と呼ばれるものって、実は人間の根源的な欲望に触れていることが多いと思う。だからそれをタブーにすることで社会の安定性を保とうとしてきた。そう考えると、判決の良し悪しとは別に、性風俗業界で働いている方は、最も重要な人間の欲望に応えている存在だと、誇りをもっていただいていいんじゃないか」とコメント。その上で「こうした産業が“狙い撃ち”のようにされるのは、組織票で政治に圧力をかけられない中小企業や個人事業主が多いからだということもあると思う。メディアはこういう弱い産業の声をすくい上げた方がいいと思う」とした。

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 岩切教授は「風営法の仕組み自体がそうだが、みなさんの言うような本質的な部分を見ないまま印象論や感情論で法的保護を与えず、だけど存在を認め続けてきたという構造があると思う。まずはちゃんとした職業として法的に承認するんだということが、必要なのではないか」と話していた。(『ABEMA Prime』より)

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