将棋界の長い歴史の中で、まだ誰も開くことができない「女性の棋士誕生」という重く厚い扉。2022年5月27日、里見香奈女流四冠(女流王座、女流王位、女流王将、倉敷藤花、30)が、女性初のプロ編入試験受験資格を自らの手でつかみ取り、その扉の前に立った。受験を決意し「今は純粋に将棋が大好きという気持ち。少しでも棋力向上を目指して強い方々と対局をしたいという、ただそれだけです」という里見女流四冠の言葉は、多くのファンの心を揺さぶった。棋界の頂点に立つ渡辺明名人(棋王、38)の瞳に、里見女流四冠の姿はどのように映るのだろうか。残酷なほどにシンプルな勝負の世界を生きる第一人者が問いかけた、ひとつの質問と制度設計への疑問とは――。