透明マントに6本目の指…SF感あふれるアイデアが現実に? 人体の限界を超える、研究者の挑戦
【映像】遠隔で指示を出す「ロボットアーム」
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 光学迷彩による「透明マント」や人間をサポートする「ロボットアーム」など、SF作品で登場するようなアイデアに次々と挑戦している研究者がいる。人間と技術の組み合わせによって、どのような未来が訪れるのだろうか。

【映像】遠隔で指示を出す「ロボットアーム」

 作業の指示を遠隔で受けようとしてもなかなか伝わらず、「何をどうすればいいんだ」と困惑する現場の男性。そこで出てきたのは、新たな2本の手。肩に取り付けられたカメラで視界を共有しながら、ロボットアームが現場で指示を出している。指示する側はヘッドマウントディスプレイを装着。実際に手を動かし、二人羽織状態でサポートしている。

 遠く離れた人の動きを再現する技術によって、いずれは“その道のプロの動きを体感しながら学ぶ”といったことも可能になるかもしれない。

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 このウェアラブルロボットの研究に取り組んでいるのが、東京大学の稲見教授だ。

「我々は『人間の能力をテクノロジーで拡張する』という研究を行っている。例えば、人が透視能力を持ったかのような体験を与える光学迷彩の研究や、人の指にロボットの“6本目の指”をつけて、自分の指であるかのように操作する研究」(東京大学・稲見昌彦教授、以下同)

 稲見教授は他にも、車の後方を車内の反射素材に映し出すことで後部座席が透けているかのように見える技術など、驚きの研究成果を次々と発表してきた。現在の研究テーマとして掲げているのは「自在化身体」。新たな身体の部位を動かすことに加え、「その新たな部位が自分の身体の延長として感じるようになるのか」といった実験に取り組んでいる。

「専用に作った6本指の手袋がある。それをつけた状態でグッと指を動かしていくと、小指の辺りがだんだん曖昧になっていく。本当に指が生えてきた感じがして、うれしくなってくる。しばらくいろいろと指を動かして遊び、『じゃあ実験終了です』と言われて(手袋を)外すと、ちょっと寂しい感じがする。『あぁ、せっかく6本目の指が生えていたのになくなっちゃった』という感じ」

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 この体験によって人間の体を増やせることは実感したものの、果たしてどこまで増やせるのか、何が限界かはわからないと感じた稲見教授。その限界を打ち破るのが「メタバース世界」だという。

「メタバースの中で私が背中に羽根を生やして、飛びながら動き回ることもできるかもしれない。それでは、羽根が生えたときにそれをどう動かすのか――そのヒントになるのが『MetaLimbs』や第6の指の研究」

 身体と仮想空間がリンクすることによって、よりリアルな場所として人々が存在できるようになるメタバースと自在化身体の組み合わせ。SF世界のアイデアを次々と形にしてきた稲見教授が思い描いているのは、どのような未来なのだろうか。

「今、よく言われてるのは“現実世界があって、メタバースがある”という2択。そうではなくて、近い将来、いろいろなメタバースができるはず。『マルチバース』というふうに言えるかもしれない。その中で、体がひとつでは足りない。いろいろな世界で活躍したい、あるゲームをやりながら別のことをやりたい、働きながらこういうこともやりたい――。そこでAIの力を借りながら分身してあげることによって、普通に生きているときの何倍もの経験ができるかもしれない。そういったことの実現を支援するために分身の研究をしている。近い将来、私がこうしてインタビューに答えているように見えて、実はこれは私のアバターかもしれなくて、うなずくなど半分は自動的にやっているということもあるかもしれない」

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 このニュースについて、サイエンスコミュニケーターの佐伯恵太氏に話を聞いた。

――佐伯さんは、ロボットアームを別の人間が遠隔操作するバーチャル二人羽織「フュージョン」を体験したことがあるそうですね。

「先月、稲見先生の研究室のオープンキャンパスに行き、体験してきた。フュージョンにはおそらくバージョンがいくつかある。自分が体験したのは、『隣に研究者さんが立っていて、自分が腕を動かすと、ロボットアームと連動している隣の人の腕を思い通りに動かせる』というもの。何かを持って腕を動かすと、隣の人も同じ動きをするので、すごく一体感があった。自分の思い通りに隣の人が動くことなんて、なかなかない。めちゃくちゃ面白かった」


――稲見教授の研究の中でも、特にどういったところが素晴らしいのでしょうか?

「見た目がサイボーグのような物は、『ロボットアームを作りました。動きました。以上です』みたいなところがメインに見えるかと思う。しかし、そうではない。稲見先生の研究の中で、6本目の指が生えてきたときに、何か生まれた感覚があって、なくなったときには喪失感がある。そういう感覚や意識をちゃんと追いかけているところがすごく魅力的」


――今後、メタバース空間などでも応用できるようになるのでしょうか?

「実際にやってみるとわかるが、メタバースは本当に同じ場所にいる感覚がある。3Dで自分が言ったところにみんなが追いかけてきてくれるという感覚が既にある。今はメタバース空間の中で物を持ってもその感触はないが、こうした研究と繋がってくると、その感触がある。メタバース空間で赤ちゃんを抱き、『温かい』と感じられるようになったらかなり感覚が変わってくると思う」

(『ABEMAヒルズ』より)

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