パソコンやスマホから自作の小説を手軽に発信できる「小説投稿サイト」。小学生や中学生にも人気となっているが、利用者の低年齢化が画像の“無断転載”を引き起こしているという。
「小説アプリ『Teller』で小中学生による悪質な無断転載が横行している件についてお話しさせてください。これ、そろそろ本気で問題視しないとまずいと思います」
※2022年6月15日から「テラーノベル」に名称変更
16日に投稿されたこのツイートが瞬く間に拡散され、物議を醸している。今回名指しされた「テラーノベル」は利用者約600万人、投稿作品数は100万作以上という国内最大級の小説投稿サイトだ。
投稿されている作品は「チャット型小説」と呼ばれ、短文で区切られた会話劇となっている。長文を読むことに慣れていない読者でも読みやすく、簡単に小説を投稿できることから、小学生など低年齢層の利用者が多いのも特徴だ。ただ、これら低年齢層の利用者が“違法行為”という自覚のないまま、サムネイルなどに使用する画像を盗用・無断転載しているとみられるケースが後を絶たない。
ネットでは「著作権を知らないから違法だと思っていない」「漫画村並みの無法地帯」「通報しても運営の対応が悪い」などと、小説投稿者だけでなく運営側の管理の甘さを批判する声も上がっている。
運営元の「テラーノベル社」は、これらの騒動を受けて公式ホームページで謝罪した。
「ガイドラインに違反している作品への対応が遅い、権利侵害の通報に関するフローが煩雑である点等、弊社の運営体制に起因してクリエイターのみなさまにご不安な思いをおかけしてしまっておりました。この点に関し、弊社としても深く反省するとともにお詫び申し上げます」(公式HP謝罪文)
今後は、監視体制の強化や通報機能の見直しを図り、運営体制を改善するとしている。しかし、現在もサイト内には無断転載とみられる画像が多数残っている状態だ。
ニュース番組『ABEMAヒルズ』は、改善策を詳しく聞こうとテラーノベル社へ取材を申し込んだが、「現在お客様からのお問い合わせや通報対応、今後の対応に専念しておりますため、現在取材に関してはお受けすることができない状況にございます」という回答で断られてしまった。
小中学生から高い人気を得ている小説投稿サイトで浮上した「無断転載問題」。著作権を理解していない子どもとはいえ、違法行為をしてしまった場合はどうなるのだろうか。また、運営側の管理責任は問われるのだろうか。番組では、権利侵害対策に詳しい弁護士の中島博之氏と中継をつなぎ、話を聞いた。
――権利者の許可を得ず、アニメや写真をサムネイルに使用する行為はどのような法に触れるのでしょうか?
「まず関係する法律・権利について言うと、アニメの絵は著作物なので著作権法が関係する。写真はアイドルの写真なので人物が写っていて、かつ構図に工夫等があれば、著作物と認められる場合は著作権、人物が写っていることで肖像権、著名人ということでパブリシティ権などが問題となる。サムネイルの設定はインターネット上に投稿するという行為なので、無断で行えばこれらの権利侵害に繋がる」
――今回、運営側の削除対応が追い付いていない点も問題となっていますが、利用者から通報を受けた運営側の対応が遅くなった場合は責任を問われるのでしょうか?
「『プラットフォーマーに対して違法な情報の流通を知ったり、知り得たりした場合には削除義務がある』『知った上で合理的な期間内に削除しない場合は損害賠償請求がある』と判断した判例がある。これらを前提に考えると、著作権法違反があると権利者から指摘されて公式ホームページなどを転載されたURLの提示を受けたが、並べてすぐに無断転載とわかるような状態になったにも関わらず、合理的な期間内に削除しないで放置したような場合は、運営者が損害賠償請求を受ける可能性がある」
――未成年が法律を理解せず違法行為を起こしてしまった場合、その責任はどうなるのでしょうか?親の責任になるのでしょうか?
「小学生のように責任能力がない子どもに関しては、民法712条で『賠償責任を負わない』とされている。ただ、その場合に損害を受けた被害者が泣き寝入りしてしまうことになるので、民法714条で『代わりに監督義務者である親が賠償責任を負う』ことになっている。だから、親と子どものどちらかは責任を負うことになる」
――今回のような騒動が起こらないように、周りの大人たちはどう注意喚起していくのが良いでしょうか?
「家族の問題として、しっかりと子どもに著作権教育をしたり、監督をしてもらったりすることが必要」
――未成年がネット上のトラブルに関して相談できる機関などはありますか?
「例えば、経産省の事業の一環として『e-ネットキャラバン』というものがある。判断能力が不十分な子どもをインターネット上のトラブルから守ることを目的として、そういった教育を行う授業もある。弁護士会の一部では、無料で子どもの権利関係の相談を受けているものもある」
――今回の例に限らず、SNSや動画を投稿する際に、法律を知らないと犯してしまいがちな“よくある失敗”はありますか?
「今回のように無断転載を繰り返し、通報を受けてSNSアカウントが凍結してしまったり、ネット上のデマを信じてそのまま『この人が煽り運転の犯人です』などと掲載してしまって、後日被害者から損害賠償責任を受けて賠償判決が出たような判例がある。インターネット上の投稿については、投稿する前によく確認いただくことが重要」
番組のコメンテーターでITエンジニア兼漫画家のちょまど氏は、副業として漫画を描いているという。
――ちょまど:自分が描いた絵や写真が勝手に使われているのを発見した場合、まずはプラットフォームに相談して、対応を得られなかったら専門家に相談するのが良いでしょうか?
「プラットフォームに通報するときも、『公式のURLはこちらです』と説得力のある通報をした方がより受け付けられやすくなる」
――ちょまどさんがクリエイターとして気をつけていることはありますか?
「全部自前、もしくは『いらすとや』などの安全なもの(素材)を使うことが大事。著作権違反を起こしてしまったら、一生デジタルタトゥーとして残ってしまう」
(『ABEMAヒルズ』より)
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