10代から入信した両親が教祖のマッチングによって結婚。その子どもとして生まれた、いわゆる“祝福2世”のAさん。今回の事件を受け、2世として人生を歩んできた体験やその思いをTwitterで発信し始めた。
「小学生のときは一番身長が低かったので、先生や保健室の先生にもすごく心配されていたし、栄養失調でお医者さんに診てもらったこともある。思春期の頃は食べるものがなくて、ご飯におかずとしてトマトの輪切りが1個だけ出てくるような生活だった。ちょうど20歳になった頃にいよいよ生活が困窮してきて、祖父母が見かねて私の大学資金を母に渡していたが、それも気づいたらなくなってしまった」(旧統一教会2世・Aさん)
教団の幹部として献金を集める立場でありながら、献金をする側でもあったという両親。そうしたお金にまつわる問題は、事件後に当事者たちがさまざまなメディアで告白している通り、子どもとしては相当辛いものだったという。しかし、Aさんが強く訴えたいのは“これからのこと”だと明かす。
「実は私が取材を受けた理由の1つが、宗教1世の老後が破綻していることについて世間の方に広く知ってもらいたいから」
幼いころから両親が信仰する宗教に疑問を持ち、成人するタイミングで教団から離れようと考えていたAさん。大学を卒業するために奨学金を借りざるを得なくなったとき、母親の考えに変化が訪れた。
「そのときに母が『これではいけない』と(考えを改めた)。そこで、母に初めて自分の考えを話して、『20歳までは従うと決めていたけど、20歳からは成人なので統一教会の教義には従わない』と伝えた。母に『私についてくるのであれば、責任をもって養うがどうするか?』と聞いたら、『(Aさんに)ついていく』と言ってくれたので、統一教会と縁を切ることができた」
その後、母親は信仰するふりをしながら、父親とは別居。騙しだましの関係を続ける中、Aさんの母親はこの世を去った。
「父は、母が教会員のまま亡くなったと思い込んでいて、ある意味幸せ者。ちょっと寂しい人だと思う。2世もすごく選択肢が少ない中で人生を歩んできているので、養うくらいの資力がない。Twitter界隈で話をよく聞くと、統一教会に限らず、たくさん献金をするから(親の)借金がどれくらいあるか全く把握していない。そして、自分たちにその借金を返済できる能力もない。私の父はまだそこにまで至っていないが、生活保護に頼っている方も多いらしい。そういったところにもうちょっと目を向けて、みんなで一緒に考えてもらいたい」
熱心に信仰し、生活を切り詰めてお金を捧げた結果、子どもだけでなくその親自身も苦しい老後を迎える……こうしたケースがあることをAさんは指摘する。献金をめぐる家庭の問題について、旧統一教会、世界平和統一家庭連合の田中会長は先日の会見で次のように説明している。
「教会の中で破綻する家庭があったら、周辺の信徒たち、あるいは教会の関わっている方々がその家庭に対してサポートしたり、どうしているかと案じたりすることはあるかと思う。ただ、どこの家庭が破綻したかということが、教団として本部に集計されるわけではない。また、色々な事情から破綻に至っていると思うが、その詳細まで把握しきれないのが現状だ」(世界平和統一家庭連合・田中富広会長)
宗教がきっかけで出会い、その宗教で離ればなれになったAさんの家族。自分の人生を歩み始めたAさんは、両親への思いをこう語った。
「子育てをして初めて気づいたが、実は子育てには“自分の人生の答え合わせ”のようなところがある。『あのとき、お母さんはこうだったのかな』『このときはこうだったのかな』というふうに、色々考えるところがあるが、全く理解できない。少しは母親から受けた愛情があるが、父に対しては全く理解ができなくて、『どうして自分の子どもはこんなに可愛いのに、あんなことができたんだろう』と思っている。子育てをすればするほど、宗教1世の考えが私には理解できないと思った」
(『ABEMAヒルズ』より)