現在、世界中で白亜紀の隕石落下以来の“大量絶滅”が起きており、野生動物に影響を与えていると国際自然保護連合や生物学者たちが危機感を示している。
【映像】絶滅が発表された中国・長江の固有種「ハシナガチョウザメ」
川から引き上げられた巨大な魚。大きいものだと体長が7mを超え、その巨体から「淡水魚の王」とも呼ばれるハシナガチョウザメ。くちばしのような長い鼻先が特徴で、中国・長江の固有種だ。
先月更新された、国際自然保護連合による世界の絶滅危惧種をまとめた“レッドリスト”で、このハシナガチョウザメが絶滅したと発表された。このほか、日本の食卓で馴染みのある「メカジキ」が準絶滅危惧種に。国際自然保護連合は、気候変動や生息地の破壊が絶滅に瀕する野生動物に影響を与えていると危機感を示している。
今年2月には、オーストラリアが一部地域に生息する「コアラ」を絶滅危惧種にしたと発表した。干ばつや山火事などの影響で個体数が激減しているという。そんないま、ささやかれているのが「第6の大量絶滅」。過去5回の絶滅期では、隕石の衝突や大規模な火山の噴火などで地球上の生物の99%が絶滅したとされている。
大規模な天変地異が起こらない限り想像もつかない大量絶滅だが、おととし、メキシコ国立自治大学の生態学者らは「第6の絶滅時代が迫っている」と警告する論文を発表。2001年から2014年にかけて、世界ではおよそ173種の生物が絶滅し、これは、通常考えられる絶滅速度の25倍のペースだという。また、過去100年間で400種類を超える脊椎動物が絶滅したことを突き止め、通常の進化の過程でこれだけの数の絶滅が起こるには最長で1万年かかるとしている。
「第6の大量絶滅」は、すでにはじまっているのだろうか。地球に暮らす生命の未来について、金沢大学で准教授を勤める古生物学専門のロバートジェンキンズさんは「白亜紀の隕石落下以来の大量絶滅が起きている」と話す。
ジェンキンズ准教授「過去の地球上で、特に化石の記録がきちんと豊富にある5億4000万年ぐらいの歴史の中で5回“大量絶滅”が起きています。この大量絶滅というのは、生物種で換算すると大体75パーセントの種類が絶滅したということです。白亜紀の終わりの隕石衝突以来、第6回目の大量絶滅が始まっているというふうに言われています」
「白亜紀の隕石落下以来の大量絶滅が起きている」。こうした第6の大量絶滅の到来はどうしてわかったのか。
ジェンキンズ准教授「いまも多くの議論はあるんですが、“大量絶滅はもう始まっている”という認識を多くの生物学者が持っています。その理由は、冒頭にもあった絶滅危惧の恐れがある生物を評価している『レッドリスト』で、化石の記録もはっきりと分かっている貝類に着目したデータが発表されたからです」
「地球上には、知られているだけでも200万種の生物がいるんですが、そのほとんどは無脊椎動物と呼ばれる昆虫や節足動物の類や貝類なんですが、これまでのレッドリストには、哺乳類や鳥類などの脊椎動物がたくさん入っていて、生物全体で見たときの頒布でみると、節足動物や軟体動物はほとんど無視された状態で絶滅危惧の評価がされていたんです。そこで化石として残りやすい貝類は過去の記録からの検証が可能な生物群になります。それらを調べた論文がここ1年ほどで出てきていて、それが非常に高い絶滅率を示していたというのが確認されています」
人間の活動に原因があるとされている第6の絶滅期。具体的にどのような行動がダメージとなったのか、ジェンキンズ准教授は“2つの理由”を指摘した。
ジェンキンズ准教授「今までの“絶滅”というのは、殆どの場合が『開発』と『狩猟』に依存していたと考えられています。小型の生物の場合、生息地がかなり狭いのですが、現在、その生息地で“局所的な開発”などがあり、住む場所を失った生物の絶滅が進行しています。さらに、地球温暖化などの“大きな環境変動”が起きたことでこの絶滅をさらに加速させてしまう危惧が高まっているという状況です」
小型生物たちの生息地での”局所的な開発“や地球温暖化などの“大きな環境変動”。これらが原因とされる絶滅は「陸域で起きている」とジェンキンズ准教授は語る。
ジェンキンズ准教授「絶滅の殆どは、陸上にある河川とか湖、沼など“陸水系”も含む『陸域』で起きています。過去500年間で見ると、大体7%から15%がすでに絶滅しているというデータが陸域から出ています。それに比べて、海では個体数の減少はあるものの種の絶滅はほとんど起きていません。ですが、ちょっとしたことで絶滅寸前になる瀬戸際に立っています。今後、我々人類がどう行動していくのか問われている。これからの10年間はそういう時期だと思います」
(『ABEMAヒルズ』より)
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