田村淳「文科省も把握してるならなぜ動かないのか」 公立教員の“定額働かせ放題”問題、給特法の改正だけでは解決しない現状も?
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 「罰ゲームでしょ? 奴隷でしょ?」

 7月26日、文科省での会見でこう述べたのは、乙武洋匡氏。乙武氏や教員らが訴えたのは教員の働き方改革で、部活動の指導や膨大な書類仕事などに追われて授業の準備ができないなど、近年、教員の過重労働が問題視されている。

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 公立の学校に勤めている教員はいくら働いても残業代はつかず、その代わりに月給の4%が最初から給与に含まれているのみ。教員の西村祐二氏が「月100時間もの残業を放置する“定額働かせ放題”の給特法は抜本改善してほしい」と訴えたように、これを定めた法律がいわゆる給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)だ。制定されたのは1971年で、半世紀に渡り残業代は支払われてきていない。

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 給特法のこれからを考える有志の会がネット署名を4月にスタートすると、3カ月で4万を超える賛同が集まったが、はたして給特法は“悪”なのか。2日の『ABEMA Prime』は教員の労働環境改善策を議論した。

 1966年、当時の文部省が実施した「教員勤務状況調査」では、1週間の超過勤務時間は平均1時間48分(小学校1時間20分/中学校2時間30分)で、年間換算で算定基礎給与の約4%に相当していた。しかし、現在の1カ月あたりの残業時間は、小学校が97時間50分、中学校が114時間7分となっている。

 教育研究家で中央教育審議会「学校における働き方改革特別部会」委員などを務める妹尾昌俊氏はこの数字を「異常な水準だ」と指摘した上で、「調査によって少し数字は違うが、文科省が大規模な調査をした2016年、あるいはその前の2006年も非常に残業が多かった。その前は1966年ということで、随分昔から放置されてきた問題だ。良い人材がどんどん教職から離脱したり、学生が目指さなくなってきていて、今年の教員採用試験の倍率が小学校で1を切っているところもある」と危機感をあらわにする。

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 その一方で、妹尾氏は「給特法は諸悪の根源ではないかもしれない」という見方も示す。「きちんと仕事をしているのに給料を払っていないのはおかしいというのはごく自然な発想だし、僕も賛同しているところ。ただ、給特法を改正して時間外手当を出すとなると、かなり遅くまで仕事をしている人は残業代をもらえる一方で、働き方改革を必死に頑張って残業を減らした人は今の調整額の4%すらもらえず、ある意味で処遇が下がるわけだ。このように不公平感が広がったり、頑張っている人ほど損をするような仕組みになりかねない部分もある。時間外手当を出すことでむしろ残業を後押ししてしまう、是認してしまうような方向に働かないかという心配がある」。

 給特法見直しの必要性についてTwitterで発信したタレントの田村淳は「(給特法の)改正ではなくて、なくすところから始めればいいのではないか。教員の働き方と内容をどうするかをゼロベースから考えないと、抜本的な解決はできないと思う」と疑問を呈する。

 これに妹尾氏は「そういう発想もあってけっこうだと思うが、給特法をやめれば労働基準法を完全適用することになる。当然、部活動や時間外の採点、テストの準備、教材準備などを労働としてみなすことになるので、先ほどの時間外手当の話になってくる」と回答。処遇を改善する以外の施策も必要だとし、「仕事自体が溢れているのであれば、それを仕分けして減らさないといけない。例えば、コンビニで何かトラブルがあると学校にクレームが来たりするが、本来それは保護者や地域で見守る話であって、学校の責任外だ。一部の掃除や部活動は別のスタッフにやっていただくとか、そういうことを含めて考えていかないといけない」との見方を示した。

 文科省の資料によれば、登下校時の指導・見守りや朝のホームルーム、給食・昼食時の食育、校内清掃指導、校内巡視・安全点検、児童・生徒の転入・転出事務、家庭訪問といった仕事について、他国と比較した時に日本はほぼすべてを教員がこなしているのが目立つ。

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 田村はこのデータを文科省が出していることを指摘した上で、「自分たちで“日本の先生ってこれだけ働いてるんですよ”って言ってるのにメスは入れられないのか、不思議でしょうがない。気づいてるんだったらさっさと動けやと思うんですけど」と再度疑問を投げかける。

 2017年11月に中教審の特別部会で文科省が答弁した内容では、教員の残業代を時間どおり支払った場合の試算として、「国庫負担ベースで、おそらく3000億円を超えるような金額が必要になってくるのではないか。これは国庫負担分の3分の1ということで、全体はその3倍の約9000億円が必要になってくる」としている。

 これを「出すべきだ」という田村の主張に対し、妹尾氏は「おっしゃるとおりだ」と同意した上で、「先生方の献身性や無償労働に、社会も保護者もある意味甘えてきたところがある。部活動が一番わかりやすくて、例えば、スイミングスクールに通わせると月謝がかかるが、先生方の実質的なボランティアでやってきた。こういった働き方改革で教員の業務を仕分けようというのは皆さんほぼ賛成するのに、各論になるとつまずくのは、予算の問題と、社会や家庭が歩み寄れるかも問われている。もう1つ、先生方を悪く言うつもりはないが、掃除や給食なんかも教育的には意義があるということで、いろいろな指導や学校行事を取り入れてきた歴史もある。先生方にもご自身の仕事をしっかり見極めていただいて、教員の専門性が必ずしも必要ないことはワークシェアをどんどんしていただくことが必要だ」と述べた。

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 現行の学校で改善できることもある一方、人手を増やさなければワークシェアは回らないため「合わせ技でやっていく必要がある」と提言する妹尾氏。「正直、過労死している先生もいる中で、労働時間管理をしっかりやっていくのはもう基本中の基本。しかし、仕事の持ち帰りまではカバーできていないのが問題だ。先生じゃないとできないことなのか、これはそもそも家庭の責任なのではないかなど、社会全体で議論をして仕分けをしていく。その上で、人手が足りないような小学校の先生などは、税金を使うことにはなるがきちんと教員数を増やしていく。それは良い学習環境につながるわけで、教員だけではなくて、子どもたちのためにも考えていく必要がある。おそらく学校の先生方は残業代がほしいということよりも、もっといい教育環境にしたいとか、より自分たちの専門性を発揮したいと思われているのではないか」との考えを示した。

 田村は「ちゃんと教えてあげられる仕組みを作ってほしいのか、対価をきちんと支払ってほしいのかは先生によって違うと思う。給特法がいいのか悪いのかは置いておいても、先生が満足していない状況、これから先生を目指そうという人にとって対価が魅力的に映っていないので、まずは対価をしっかりと払うというところにみんなの力を集約しない限りこの問題は解決しないと思う」と述べた。(『ABEMA Prime』より)

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