夏野剛氏「女性40%は頑張っているのでは」 テレビ出演者の“役割”は社会を反映? ジェンダーバランスは50:50にすべきか
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 「男性60.4%、女性39.6%」。この数字はテレビ番組出演者の男女比をNHK放送文化研究所が調査、発表したものだ。

【映像】「出演者が偏りすぎ」? テレビ主演者の“役割”&番組政策を議論

 「6:4」であれば大きな差ではないと思うかもしれないが、ニュース番組になると女性の比率は「28.8%」と一気に低くなる。そして、女性は全体の進行や気象情報の担当が多いのに対し、男性はニュース解説やコメンテーター、スポーツを担当することが多く、役割の違いも指摘されている。また、バラエティーやお笑い番組は、圧倒的に男性の出演者が多くなっているという結果も。

 出演者の年齢層を調べると、女性は20~30代の若い世代が多いのに対し、男性は40~50代といった中年が中心となっている。調査チームは視聴者にもアンケートを行い、若いほど女性や男性の役割や描き方に「違和感がある」と回答している。

 テレビにおけるジェンダーバランスは、海外ではどうなのか。イギリスの公共放送BBCでは、2017年から番組に関わる出演者やスタッフ、取材担当者の男女比を50:50にしようという取り組みが始まっており、効果が出ているという。

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 ニュースの解説役に男性が多いことについて、駒澤大学の山口浩教授は「ある種の権威を持って話すような人たち、例えば今の私もそうだが、こういう立場は男性が多い。レギュラー出演者はわりと聞き手になるケースが多く、話し手が男性、利き手が女性という構図になっている。最近変わってきているとは思うが、“男性のほうが知識を持ってしゃべる”という意識が依然として見てとれる」と指摘。

 その背景について、「市場の期待というか、視聴者が何を期待しているのか? を反映しているところがある。おそらく、作り手側はジェンダーバランスがどうあるべきかは考えていなくて、“視聴率を少しでも上げたい”と思っているわけだ。“誰がどうしゃべったら視聴率がちょっと上がるか”と、その結果でこうなっていると思う。作り手側が意識すべきことはもちろんあると思うが、それだけで何か解決するかというと、なかなか難しいのではないかとも感じている」との見方を示す。

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 日本のジェンダーバランスを業界別に見ると、上場企業の女性役員の割合は7.4%、女性社長は1.1%(2021年、東京商工リサーチ調べ)。国会議員の女性議員は、衆議院は9.9%、参議院は25.8%。また、大学の女性教員は26.4%となっている。

 テレビ朝日平石直之アナウンサーは、「専門性が高い話を解説してもらう場合、あえて女性を選ぼうとしないと男性になりやすい傾向がある。レギュラー出演者は制作側でコントロールできる一方で、テーマに沿った出演者は社会のあり様を映しているだけなのでは?」と問題提起をした。

 山口氏は「日本がジェンダーギャップ指数で注目されたのは、経営者と政治家における女性の割合が低いというところ。そこを改善するとランキングが上がるはずだ。2010年代の半ばに、ハリウッドでこのバランスがすごく話題になった。例えば“主役や監督といった役割の人たちは男性が圧倒的に多い”“バランスが崩れている”という指摘が出たところ、2010年代の後半にかけて変わってきた。最近の調査だと、主役は女性が多く、むしろ逆転していたりする。何かのきっかけで議論が盛り上がることはある」と説明した上で、「アメリカは対立が激しくて問題が大きくなりやすい一方で、日本は正面から対立するのはあまりない」と指摘した。

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 プロフィギュアスケーターの安藤美姫氏は「フィギュアは元々女性が強いスポーツで、メダリストが出てきてから少し遅れて男性も強くなった。男性のコーチや関係者も増えてきて、スケートだけでジェンダーを語ると、今やっとバランスがとれてきたと思う」と前置きした上で、「これを社会問題として見ると、30代、40代の女性が少ないというのは、家庭か仕事かを選ばないといけないような社会の体制も結びつくのかなと思う。でも、今の20代はそれこそ結構選べるのではないか。戻れる席があるとか、そういうふうに社会的にも変わってきている。今の若い人たちが育った時には、ジェンダー問題は一律バランスがとれているのではないか」との意見を述べた。

 近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏は2つポイントがあるとし、「男女比6:4という数字は、日本全体から見た時には比較的高いと思う。国会議員と比べると、はるかに高いレートで女性を出しているということだ。制作側はすでに一定の意識をしていて、女性の割合を増やしているだろうと思う。政府は安倍政権以降、全ての委員会で30%以上を女性にしていて、私が所属する規制改革推進会議は50%だ。メディアや政府が一生懸命、女性の活用を増やしている現実は良いことだなと思う。もう1点は、テレビを誰が見ているのかという話で、圧倒的に高齢者が多い。彼らからすると、6:4でも女性がだいぶ出ているなという印象だと思うし、頑張っているのではないかと思う」との見解を示した。

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 ちなみに、『ABEMA Prime』が7月の出演者の男女比をまとめたところ、レギュラーは女性が45.3%(24人)で男性が54.7%(29人)、ニュースゲストは女性が14.8%(9人)で男性が85.2%(52人)、特集ゲストは女性が37.8%(17人)で男性が66.2%(28人)、全体では女性が33.8%(79人)で男性が66.2%(155人)となっている。

 山口氏は、「全ての番組で50:50にしないといけないわけじゃない。女性だけがあってもいいし、男性だけがあってもいい。その選択肢があるのが本来の姿で、その中で視聴率を競えばいいわけだ。視聴者が“女性だけの番組がいい”となったら、それはウケるわけだから。ただ、女性の出演者が多い=女性に配慮しているというわけではないし、そこはちゃんと考えるべきだ」と述べた。(『ABEMA Prime』より)

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