将棋の藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、20)は8月10日、順位戦A級2回戦で菅井竜也八段(30)に敗れた。この結果で今期A級の通算スコアは1勝1敗に。次戦の3回戦では糸谷哲郎八段(33)と対戦する。
振り飛車党のエース・菅井八段の用意した深い研究に、藤井竜王がA級初黒星を喫した。本局の戦型は、先手の菅井八段の得意戦法「中飛車」に。後手の藤井竜王は、序盤早々に端歩を進める工夫を見せ、先手に穴熊を組ませなかった。生粋の振り飛車党で、棋界屈指の研究家としても知られる菅井八段。陣形を美濃囲いに整え、藤井竜王の攻めに対抗した。
難解な中盤戦でわずかに菅井八段が抜け出し、徐々にリードを拡大。藤井竜王も次々に手をひねり出したが、菅井八段はそのすべてを抑え込んで見せた。後手は苦しいながらも、差を広げられないよう必死に食らいつき猛追。藤井竜王は持ち時間を大きく消費しつつ、互角まで追いついて見せた。
大熱戦の最終盤。先手は端歩を進めたところから藤井竜王の角を捌き、再び菅井八段がリード。深い読み筋から藤井竜王を先回りして攻防に利かせて圧倒した。最後は攻め合いとなったが、菅井八段は堅い陣形を活かし藤井竜王を寄せ切った。
今期A級初勝利を挙げ1勝1敗とした菅井八段は、「想定していた形にはなったが、形勢判断が難しい将棋だった。終盤は難しかったが、良い結果を残せてよかった」と疲労感の中にも安堵の表情を見せた。
一方、敗れた藤井竜王は「こちらが端を突き越す形になったが、それを主張に出来る展開をめざしたかったが、その後失敗してしまった。進めてみると思っていた以上に駒の効率が悪く、失敗して苦しくしてしまった」と一局を振り返った。
藤井竜王は3回戦で、関西強豪で竜王経験者でもある糸谷八段と対戦。次戦を見据え「ここまでの2局ではミスが出てしまっているので、内容を良くしていかないといけないのかなと思います。内容を反省して次から良い内容にしていけたらと思います」と話した。
第1期を除いてA級初参戦で挑戦権を獲得した棋士は9人で、そのうち名人奪取を果たしたのは谷川浩司十七世名人(60)、羽生善治九段(51)、佐藤天彦九段(34)のわずか3人。藤井竜王はこの仲間入りを果たし、谷川十七世名人が保持する21歳2か月の最年少記録を更新することができるかにも大きな期待が寄せられている。今期のA級は全員がタイトル戦の大舞台を経験している猛者揃い。今後の対局も熱戦になることは必至とあり、そのすべてから目が離せない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)