留任が5人、再入閣が5人、初入閣が9人となった第二次岸田改造内閣。
10日の会見で岸田総理は「先の参院選で国民に頂いた岸田内閣への信任を一刻も早く形にし、期待に応える有事の内閣を速やかに整えるため、改造を断行した」と説明。各閣僚の人選についてひとりひとりの名前を挙げ、「国の内外において数十年に一度とも言える様々な課題に直面している」「経験と実力を兼ね備えた閣僚を起用した」と説明した。
【ノーカット映像】ネーミングは「政策断行内閣」岸田総理の記者会見
朝日新聞記者として政治取材を約15年、テレビ朝日政治部を経て、現在はABEMA NEWS担当の今野忍記者は「一言でいうと、“幕の内弁当”みたいだ。ステーキ丼やカツ丼だったら、ご飯とおかずがはっきりしているが、どれでご飯を食っていいのかが分からない感じだ(笑)。逆に皆さんにお聞きしたい。“ここにこの人が来たか”という人選はあっただろうか」と苦笑しつつ、次のような見方を示す。
「まさに安定とバランスをとにかく重視する、岸田さんの性格が出た。前回は13人くらいが初入閣で、総裁選勝利に貢献した人たちへの“論功人事”と言われた。中には甘利さんを幹事長にするなど、周りから見て大丈夫なのか、という人事も目立った。それに比べれば、自分のやりたい人事が前回よりできたのではないかと思う。ただ、“待機組”を入れるなど、派閥の均衡には配慮した。岸田派は43人と、勢力で言えば第4、第5くらいのポジションだ。ここで安倍派や茂木派、麻生派を怒らせてしまえば、政権が維持できないからだ。
一方で、意見を聞いているようで、意外に聞いていないところもある。例えば100人近い議員がいる安倍派からは5人は入れてほしいと言われていたようだが、実際には4人(西村康稔経済産業大臣、西村明宏環境大臣、岡田直樹行革担当大臣、そして留任の松野博一官房長官)だ。麻生派、茂木派についても、必ずしも親分が入れてほしいと言ってきた人を入れたわけではない。一般的に当選5回以上を“入閣待機組”と呼んでいて、そういう議員については、専門性もへったくれもなく“入れてほしい”と頼んでくる。しかし今回の19人の閣僚の中で、初入閣は9人だ。つまり人数で見ると、ある程度の妥協はしつつも、中身、特に重要課題については素人ではなく経験者など、入れたい人を入れたと言えると思う。
特にコロナ対策、物価高対策、安全保障の3つは目下の懸案だ。厚生労働大臣には経験者で、菅政権でも官房長官としてコロナ対応に当たっていた加藤勝信さん。防衛大臣も、14年前(麻生内閣)に経験していて、自民党内でも石破茂元防衛大臣の次くらいに政策に明るいと言われる浜田靖一さんを入れた」。
人選については、旧統一教会と閣僚の関係も大きく注目された。会見で岸田総理は「点検し見直すことを厳命し、了承した者のみを任命した」と説明しているが、この問題で交代したとみられる閣僚と同数の7人に、すでに何らかの関係があったことが判明している。
今野記者は「全く関係ないの人だけで組閣をするのが難しかったということだろう。実は岸田総理は異例の行動に出ていた。9日夜、閣僚になる人にわざわざ電話をかけ、ちゃんと調べて説明してくれ、今後は関係を絶つと言ってくれ、とお願いしたという。それくらい気にしていたが、キレイな人だけで組閣すると、やりたい人事ができないぐらいの根深い問題だということだ」と説明。
「ただ、関係と言っても、選挙活動を手伝ってもらっていた人もいれば、祝電を一度送っただけとか、関連団体のイベントに代理として秘書が出席していたとか、それぞれに濃淡がある。やはり留任の林芳正外務大臣、山際大志郎経済再生担当大臣、再任の加藤大臣、そして西村康稔経済産業大臣などは使わなければ政権運営が厳しくなると考えて、ある程度の批判を受けることは分かった上で、これからは関係を断つので勘弁してくれ、ということなのだろう。
それでも、日本維新の会は党の側で調査をし、関係していたという議員が十数人も出てきた。しかし自民党の茂木幹事長は“党としては調査しない。なぜなら組織として自民党は関わってないから、個々の議員が勝手にやっていたことだろう”という姿勢だ。しかし我々の税金である政党助成金315億円のうち、今年は半分近い160億円くらいが自民党に入っている。つまり政党は私的な存在であると同時に、公的な存在でもある。党として調査しなくて本当にいいのかは疑問だ」と話していた。(『ABEMA Prime』より)
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側