英語が話せず、技術のない状況でアメリカに乗り込み、アプリ開発を続ける日本人起業家を取材した。世の中の孤独を解消するための秘策は日本で馴染みのある「交換日記」というアイデアだった。
「文学部で言語学とかそういうのをやっていて英語も喋れなかったし、プログラミングもできなかったんで全く持たずにいってしまったっていう感じです」
こう話すのは、交換日記アプリ「Waffle(ワッフル)」の創業者・哘崎悟さん。哘崎さんは、大阪・西成のあいりん地区で22年間過ごし、アプリを開発したいという思いで2014年に渡米し、たった数年で大きなチャンスをつかんだ。
「エヴァン・スピーゲルさん(ミランダカーの夫)がC(個人)向けスタートアップサービスをもっと応援したいということで始めたプログラムがあって、そこに選んでいただきました」
世界中で使われている写真共有アプリ「Snapchat(スナップチャット)」運営元が手掛ける支援プログラムに、哘崎さんの開発チームが選ばれたのだ。言葉も技術も一からのスタートにも関わらず、1年に10社しか選ばれない狭き門をくぐりぬけたその経緯について聞いた。
「2年制の大学で修業をした後に、現地のスタートアップでエンジニアとしてインターンをさせてもらえることになりました。それが一年くらい続き、上司の方といい人に恵まれて勉強をさせてもらいました。その後、現地で出会った人と会社を起こしまして、その人のマンションの一室をオフィスにして僕はそこのソファーで寝るという生活を、お互いに365日ずっと一緒に過ごしながらアプリ開発をするというのを一年くらい続けました」
1年目はプログラミングを身につけるべく、英語で行われる大学の授業をこっそり録音し、あとから聞き直すという地道な努力を重ねたという哘崎さん。
最初のスタートアップを解散した後、新たな相棒・山崎さんといまの会社を創業した。時には友人のクローゼットに住みながら、ストイックに人脈と知識を広げていった。しかし、愛犬の写真をスタンプ化するという最初のアプリ開発は挫折。
数カ月にわたり次のアイデアを模索する中、たどり着いたのが現在174カ国で利用されているアプリ「Waffle」だった。
「お互いに世界中の人に使われるプロダクトを作りたいというとでアメリカに来たけど、日本と離れているせいで連絡とりづらいというのが課題でした。これは会社とかアプリ開発とか抜きにしても解決したいと思っていたので、その時に交換日記という方法がいいんじゃないかと思ってWaffleを始めました」
久しぶりに実家に帰ると、家族や友人を取り巻く環境がガラっと変わっていたという哘崎さん。LINEや電話で繋がってはいるものの、日々の変化を把握するには至っていないとの思いから少し懐かしい交換日記をアプリに落とし込んだのだ。
「アプリ内で日記帳を作れてシェアする人を選べる。例えば僕・友達2人みたいな感じで誘うとみんな書けるようになって。LINEとか普段対面で会ってる時も『ちょっと言いにくいな』『反応は欲しくないけどわかってもらいたい』といったことを共有することで、気持ちが楽になるというふうに使ってもらっています」
多くのフォロワーや友達がいても孤独感が生まれることもある現在のSNSの課題を、クローズドなコミュニケーションツールが解決。その狙いは的中し、人との深い繋がりを持てる場所の需要が増したコロナ禍で、若い女性を中心に利用者が増加した。
「でこぼこで七転び八起き的な感じでやっていたので、とんとん拍子っていう感じは全くないんですけど。『この人でもできるんだったら自分にもできるわ』って思ってくれる人が増えれば、やってる意味があるなっていう。クローゼットに住んでた経験もそうやって思ってくれる人がいるんだったら本当に意味があるなって思います」
(『ABEMAヒルズ』より)
■Pick Up
・キー局全落ち!“下剋上“西澤由夏アナの「意外すぎる人生」
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・「ABEMA NEWSチャンネル」知られざる番組制作の舞台裏