“鳥取県が「有害図書」指定→Amazonが削除” 三才ブックス編集長が条例&規制のあり方に抗議「システムが正しく機能しているのか」
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 今年2月、三才ブックスの『アリエナイ医学事典』などの書籍3冊が、著者や出版社に知らされることなく通販大手Amazonのホームページから削除されていることが明らかになった。三才ブックスはAmazon側にその理由を問い合わせたところ、「鳥取県がこの3冊を有害図書に指定したと通知があったため」との回答があったという。

【映像】『アリエナイ工作事典』の一部内容

 三才ブックスといえば月刊『ラジオライフ』で知られているが、他に“裏物”“裏側”などを謳ったアンダーグラウンドな世界を紹介する書籍を多く出版。これまでもいくつかの書籍が有害図書指定を受けてきた。

 なぜ今回、Amazonからの削除されるに至ったのか。それは、鳥取県の条例が改正されたことが影響している。鳥取県の青少年育成条例は、2年前の改正で「有害図書」に指定した書籍について、店頭だけでなく、インターネット上での販売も禁止されることになった。

 現在、ネットにおける「有害図書」の販売規制を、条例として明文化しているのは鳥取県のみ。「なぜ一自治体の判断が、世界最大の通販サイトであるAmazonに影響を及ぼすのか?」「鳥取県で本を売ること自体、もはやリスクといえる」。今回の措置でそうコメントした三才ブックス。

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 今回の措置は出版や通販業界に影響を及ぼすのか。『ABEMA Prime』は三才ブックス『ラジオライフ』編集長の小野浩章氏とともに議論した。

 Amazonから削除されたのは、かつて行われていた医療の黒歴史や都市伝説を医学的に検証した『アリエナイ医学事典』、“暗黒玩具”や“凶電工作”の手順を紹介した科学工作本『アリエナイ工作事典』、スマホ周辺機器から偽装カメラ、サバイバル用品など市販品を紹介する『裏グッズカタログ2022』の3冊。

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 鳥取県青少年健全育成条例が定める有害指定基準には、(1)青少年の性的感情を刺激、(2)青少年の粗暴性・残虐性を誘発・助長、(3)人の生命・身体・財産に危害を及ぼす、の3つがある。

 三才ブックスは鳥取県に、なぜこの3冊が規制の対象になったのか、を問い合わせたところ、『アリエナイ医学事典』は3つ全てに該当、『アリエナイ工作事典』と『裏グッズカタログ2022』は(2)に該当したことがわかったという。しかし、具体的に雑誌の中のどの記述が規制に触れたのかについては、明らかにされなかったという。

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 今回の鳥取県の対応について、小野編集長はどう受け止めているのか。「年々、法律が厳しくなったり、ネットの発達で会社が厳しい状況になっている中で、我々としても長く本を売りたい。具体的にどのページのどういう表現がよくないのか、どんな記事が危険なのか、どこが引っかかるのかということがわかれば今後は気をつけたいが、それを教えてもらえないというのは本当に審議しているのかと疑問に思う。ネット通販ではAmazonが9割ぐらいを占めていて、Kindleでも配信されなくなってしまうと、地方で近くに書店がない方は買う手段を絶たれてしまう。海外にいるファンも買えなくなってしまうので、非常に影響が大きい」

 鳥取県が有害図書を決定するプロセスは、書籍を有害図書に指定すべきか否かを審査委員が記名投票し、「指定すべき」が3分の2以上となることが必要。今回は5人中4人が賛成した。なお、審査する本は書店で無作為に抽出されるというが、小野氏はこの点についても異議を唱える。

 「世の中にたくさんの本がある中で、なぜ三才ブックスの3冊を選んだのか。2020年にも別の『アリエナイ理科』シリーズの本が鳥取県で有害図書に指定されていて、同じシリーズの本だからということで惰性的に選んだのではないか」

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 プロデューサー・慶応義塾大学特任准教授の若新雄純氏は「もちろん大手で有害指定されているものもあると思うが、比較的戦う体力がなさそうな版元の本が多く選ばれ、しかも審査基準が明確ではない。書店で禁止になるだけだったら近隣の県に買いに行けばよかったものが、ネットでも禁止となるとみんなが声をあげるわけだ。委員の仕事として“今年は何冊選んだ、仕事した”というものになっていないか、きちんと議論されているのかはすごく気になる」との見方を示した。

 一方、制度アナリストの宇佐美典也氏は「有害指定という制度自体は必要だと思う」とした上で、「“指定されてもいい”というスレスレの路線を狙って本を出して、引っかかったら騒ぐという瀬戸際ビジネスをやっているように見えてしまう。それなら元々リスクを背負っているからしょうがないのではないか」と疑問をぶつける。

 小野編集長は「有害図書に指定されることを狙って本を作っているわけではない。法律の範囲内だったり、法律が改正されるたびに明確な危険は排除して、でもできるだけ刺激的な内容になるようにキャッチやタイトルを工夫している。実際に読んでもらった方が“本当に危険で有害な内容はない”ということで、SNSやTwitterでこれだけ賛同の声がいただけていると思う」と答えた。

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 過去に有害図書に指定されたことを踏まえて改善を続け、「昔に比べたら丸くなった」「面白くなくなった」という声とも戦ってきたと話す小野氏。最後、規制のあり方について改めて意見を述べた。

 「今まで各県で有害図書に指定されてきたが、実際に書店が取り扱いをやめたかというと、棚を作って展開してもらうということも多かった。はたして、有害図書指定のシステムが本当に正しく機能しているのか。標準治療を否定するような反医療の内容など、本当に有害で悪質な本は指定されていないのが不思議だ」

(『ABEMA Prime』より)

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