「皇室に関する誤った情報が広まっている現状を踏まえ、正しい情報を積極的に発信していくため」。それが、宮内庁がSNS活用の方針を決めた理由だ。
皇室からの発信といえば、折に触れて行われる会見や、皇族の方々の公務の様子、静養を伝えるニュースなど。宮内庁はSNS活用に向け、長官官房に参事官ポストを1人新設するほか、SNSの専門スタッフとして職員2人の増員を予定している。
Twitterでは、「皇室が身近に感じられていいかも」と期待する声の一方、「コメント欄はあるのか、荒れたりはしないか心配」といった不安の声も。
宮内庁は来年4月以降にSNS運用を始めたいとしているが、皇室からの発信が一番良い形で国民に届くあり方とは、どのようなものなのか。8月31日の『ABEMA Prime』は議論した。
■若新雄純氏「コメント欄なしのブログを開設すべき」
元朝日新聞者で「AERA」などに所属、著書に『美智子さまという奇跡』などがあるコラムニストの矢部万紀子氏は「眞子さんへの報道が言われ放題になっている現状と、コロナで皇室の方の動きがまったく見えない状況の中で、皇室と国民をつなぎ直すような時期なのではないか」との認識を示した上で、眞子さんをめぐる対応について次のように指摘する。
「宮内庁のホームページの中に『皇室関連報道について』というコーナーがある。“こういう報道があったけれども遺憾だ”というのは随時出しているが、極めて少ない。報道の自由や論評する自由があって、皇室のなさることは100%正しいというわけでもない。ただ、眞子さんと小室さんの報道は、一切訂正もしていなければ何も言わなかったことで過熱して、“なんでもいいんだな”という空気を作ってしまったことは間違いない」
プロデューサーで慶應大学特任教授の若新雄純氏は「過熱した報道に対して“事実はこうだ”ということを皇室から発表する、発信することが大事なのではないか」とした上で、「コメント欄なしのブログを開設すべきだ」との意見を述べる。
「今の日本のSNSは、言葉の意味がよくわからずに誤解したままメッセージを返したり、文脈が成立していないクソリプを永遠に送り続けたり、さらに書いている人が誰かもわからないので、議論の場としてはまったくふさわしくない。そこで職員が不十分なリプを送って油を注ごうものなら、隙を突かれていろんな人がああだこうだ言ってきて収集がつかなくなると思う。コメント欄なしのブログなんてだいぶ遅いものだけど、皇室にはなかったということでまずそこからがいいのでは」
矢部氏の提言は「“未来の報道官”佳子さま・愛子さまの公式アカウントを」「投稿内容はオン・オフのメリハリが重要」というものだ。
「女性皇族の方々が発言する機会が全然ない。基本的には20歳の時と大学を卒業する時の2回、1回だけ記者会見で文書の公表だ。佳子さまの文書を読むと非常に率直な方だ。お考えを示す機会が増えるべきだと思う。それがSNSになるのか、ブログになるのかわからないが、すごく期待している」
宮内庁は7月、天皇皇后両陛下と愛子さまが養蚕作業に臨まれた際の写真を公開した。矢部氏は「陛下がボタンダウンのシャツを着ているのを初めて見たし、雅子さまがベストを着ていて、“これはどこの?”と思わされるのもものすごく珍しい。こういう写真はめったに出ず、しかもしばらく経って発表されるので、まずもう少しスピードを上げる。また、宮内庁の方がこれをウォッチして、“愛子さまが『蚕がかわいい』とおっしゃっていました”という情報を出すだけでも全然違う。養蚕をなぜやるのかということと、着ている服が珍しいということは両立できると思う」
■英国王室はSNS積極発信 倣うべき?
SNS活用といえば、イギリス王室が有名だ。InstagramやTwitter、YouTubeチャンネルも持っており、1000万人以上のフォロワーがいるInstagramでは、公務のほか、日常のスケッチ、若き日のエリザベス女王の秘蔵写真など、バラエティに富んだ内容となっており、矢部氏はそのやり方を見習うことも提言している。
制度アナリストの宇佐美典也氏は「変な報道が出た時に正すのは大事なので、それだけはやってほしい。『週刊誌の報道について』というのがTwitterで流れてきて、クリックするとブログがあるような。日本国における皇室、天皇陛下の役割として、政府の正統性というものを背負っている。SNSで浸透させていくことはすごく望むけど、それ以上のコミュニケーションは嫌だし、臨んでいない」との考えを明かす。
若新氏は「ブラウン管の向こう側で神格化されつつあった一部の芸能人やエンターテイナーと呼ばれる人たちが、親しみというものを求めてSNSの世界に降りてきて、ズタボロになったり余計な心労を背負ったりする。要するに日本人的な村に入ってくるということ。そこで得られるものは親しみだけではなく、良し悪しいろいろある」との見方を示した。(『ABEMA Prime』より)
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