次々と明るみになる、政治家と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との“関係”。関連団体のイベント出演や祝辞・メッセージの提供、会費の支払いなど、特に自民党議員においてそれは顕著だ。
背景にあるとみられているのが、旧統一教会、そして関連団体である「国際勝共連合」と“反共”という理念で一致した自民党の長い歴史だ。
国際勝共連合の梶栗正義会長は『PRESIDENT Online』のインタビューの中で「UPFや国際勝共連合、世界平和連合などは、現実社会の問題を解決するために設立された団体であって、目的や活動もまったく異なっています。自民党と何か特別な深い関係があるわけではなく、共産主義の勢力と戦える政治家の方の活動を応援しています」と説明している
2日の『ABEMA Prime』では、こうした日本の保守派と旧統一教会の関係を問題視してきた民族派団体「一水会」の木村三浩代表に話を聞いた。
■統一教会、勝共連合は“民族主義運動の敵だ”
木村代表は国際勝共連合について次のように話す。
「1967年、日本船舶振興会の笹川良一さんなどの保守派、右翼の人たちが本栖湖に集まって会議を開き、共産党に対抗する大連合のようなものをやろうという話になった。そして翌年、共産主義に打ち勝って、自分たちの政治理念を世の中に広めていこうという趣旨・理念のもと、岸信介元総理などの肝いりもあり、世界基督教統一神霊協会(現・世界平和統一家庭連合)の政治部門として国際勝共連合が結成された(会長に統一協会の初代会長・久保木修己氏、名誉会長に笹川氏)。そして日米安全保障条約の改定(1970)を推進しようとする自民党とも仲良く反共運動をやってきた。
もともと自民党というのは融通無碍な政党で、1960年にも安保闘争を乗り切るために博徒、テキ屋などを動員した『反共抜刀隊』を作ろうとしたこともある。そのくらい、時々で利用できるものは利用し、利害が一致する者とは結ぶ政党だ。やはり60年代、70年代は保守、右翼の方が“反動”だと思われていた時代だったので、ある面で純粋で非常に真面目に活動する国際勝共連合、統一教会の人たちを頼もしく思ったというのが実情だと思う。そして、それは選挙活動おいても同様だったということだ。
国際勝共連合としても統一教会の政治部門でもあり、“神の国を作るための尖兵”として、“サタン”である共産党を倒す、その点では自民党と一緒に活動することで利害が一致したということだろう。しかし創設者の文鮮明氏と北朝鮮の金日成国家主席の仲が良かったことからも分かるように、単に“反共”というだけでなく“反日”という側面もあった。実際、統一教会の『原理講論』には、日本は朝鮮半島における非常に残虐な行為の償いをしなければならないと書かれていて、天皇も含めて“サタン”の側に置かれてしまっている。
さらに1984年、世界日報事件というのが起きる。統一教会に関連する『世界日報』の編集長になった人がそうした教義を勉強、“これは何だ”と批判した結果、刃傷沙汰になってしまった。一水会としては“それはおかしいんじゃないか“ということではっきり距離を取るようになり、翌1985年には鈴木邦男・前代表が『朝日ジャーナル』で統一教会、勝共連合を“民族主義運動の敵だ”と批判した。
日本会議も、勝共連合とは教科書問題などで連携をしてきたと思う。しかし本来なら“日本がサタンの国と呼ばれているが、これはどういうことか”と批判しなければならない。そもそも『原理講論』や統一教会の教義を読んでいないということなのかもしれないが、やはり互いに批判し合ってしまうと共産党を利するから、ということで“棚上げ”してきたのではないだろうか」。
■「自民党はけじめをつけるべきだ」
高まる批判を受け、「旧統一教会と、その関連団体との関係を断つ」と明言した自民党。岸田総理も会見で「当該団体との関係を断つこと、これを党の基本方針として、関係を断つよう所属国会議員に徹底する」と表明している。こうした状況に、木村氏も「けじめをつけるべきだ」と話す。
「“票をくれ”という人がいるのは事実だろうし、選挙運動に無償で関わっている人たちがいるというのもよく聞く話だ。やはり利害の一致だ。ただ、自民党の中にもいろんな人がいるから、要求や理念を取り入れていくのは違うだろうということにもなるだろう。例えば全国霊感商法対策弁護士連絡会が、統一教会や勝共連合とは付き合わないでくださいという要望を出してきた。安倍政権になってから、安倍さんにも何回も出している。そういう中で、政治力をもって捜査が潰されるようなことがあったとしたら、それは問題だ。
その意味では、刑事罰の対象になるような事実、行為については徹底的に捜査していかなきゃいけない。もちろん自民党の全てが愛国的で保守的ではないが、物事の見える政治家はいっぱいいるし、そういう人は勝共や原理、統一教会とは接点を持っていないと思う。ちゃんと『原理講論』なりを読んでいれば、それは距離を取ろうということになるんじゃないか。統一教会を肯定するわけではないが、信教の自由というものもあるし、宗教を信じている人にとっては心の安定になっている部分もある。そこは細かく見ていかないといけないし、宗教だからダメだ、となってはいけないと思う。
日本も“政治の季節”ではないし、1995年のオウム真理教事件のこともあり、宗教そのものが凋落し、統一教会も霊感商法などで社会的に叩かれた。それでもオウムの陰で活動を続け、家庭連合(世界平和統一家庭連合)と名称を変えてLGBTや憲法改正などに目標を置き、スパイ防止法などのコンサバティブ的な政治理念を持って続いてきた。『原理講論』の中に人間は表面的なものだけでは変わらないという教えもあるが、マルクスが“宗教が悩める民衆のアヘンだ”と言ったように、人々の心を掴む求心力があるということだろう」。
木村氏の話を受け、『2ちゃんねる』創設者ひろゆき氏は「自民党なり政府が今やるべきことは、文科省を動かして調査をする、宗教法人の非課税特権を剥奪する、あるいは税務署が入る、といったことだと思うが、いまだにやっていない。それは宗教弾圧とか、信教の自由という話ではないと思う。結局、政府として動いたのって、消費者問題の担当大臣になった河野さんが霊感商法対策をすると言った、それが唯一だろう」とコメント。
一方、ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「勝共連合や日本会議に関する話は具体的な点があまりないというのが現実だし、あまり言い過ぎると陰謀論の範疇に入ってしまう危険がある。こども家庭庁の設立についても、勝共連合の影響があったのかどうかは分からない。あるともないとも言えない段階で、証拠なしに一方的に断罪するのはよくない。関係しているのと影響を受けているのは違うので、そこは厳密に分けないと宗教弾圧になりかねない」と懸念を示していた。(『ABEMA Prime』より)
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