高校生の就活で「ミスマッチ大量発生」 独自ルールが“選択の不自由“に 変わらない背景に「大卒社会」指摘
専門家が指摘する “ミスマッチが起こりやすい要因”
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 9月16日から「採用選考」が解禁される高校生の就職活動。そこには他の就活と一線を画す独自ルールが複数存在する。知られざるその実情に迫った。

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 8月上旬。都内のオフィスで行われていたとある企業の就職説明会。ガイダンスや、先輩社員との交流。参加者は、学校を卒業後、就職を希望する高校生たちだ。

 来年3月の卒業後、就職を希望している高校生は現時点で約13万3千人。(7月末の求職者情報)。9月16日から採用選考が解禁された。

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 例年、大きく取り沙汰される大学生の就活に比べ、あまりクローズアップされることがない高校生の就職活動。大学生の就活とは違う大きな特徴として「一人一社制」がある。

 通常、大学生や専門学校生たちは複数の企業に応募し、内定を得た一社に就職するといういわば“企業の併願受験”ができるようになっている。一方、高校生の場合、最初に応募することが出来るのは1人につき1社のみ。仮に1社目で不合格だった場合は、新たに企業を選び直すことになる。

 こうした高校生の就活ルールは都道府県ごとに決められており、今も多くの自治体で一人一社制が採用されている。

 一人一社制の背景には、高校生の就活が“学校斡旋”を基本としていることもある。高校生を採用したい企業は、求人内容をハローワークに提出し、発行された求人票を高校へ送付。そして、高校生がその中から応募先を選ぶ。学校を介さずに、高校生自身が企業と直接やり取りをして就職活動を行う「自己開拓」はまだまだ少数派だという。

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 学校側も生徒の状況を把握でき、就活における“生徒同士の競争”も回避できることから、高校生の就職内定率は毎年99%以上と、高水準を維持している。しかし、こうした高校生の就活について調査・研究を行うリクルートワークス研究所の古屋星斗主任研究員は「一人一社制は、早期離職につながる可能性がある」と就職後のミスマッチを指摘する。

「実は、一つの会社だけを目指して就職すると、早期で辞めてしまったり仕事に対する満足感が乏しくなる傾向が見られます」

 学歴別の3年以内の離職率を表すグラフでは、大卒に比べて高卒の早期離職が多いという実態を示している。また、リクルートワークス研究所の調査では、半数の生徒が「1社だけを見て就職した」と回答したという。古屋研究員は「“企業を比べる”という経験の少なさが、就職後のミスマッチやその後のキャリアに影響を及ぼしている」と話す。

「例えば『職場が熱すぎた』『職場に直属の先輩が40代しかいなくて、相談が全くできない』など。(高卒で就職する人の)ミスマッチが大量発生しています。一社だけの内定先にそのまま入社していくのは、(他の企業を)見せなさすぎだと思います」

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 また、高校生の就職活動は、スケジュールも少しタイトだ。2022年度は7月1日から求人票の公開がスタート。そこから9月16日に解禁となる採用選考に向け、高校生たちは「企業選び」や「職場見学」などを約2カ月という短い期間で行う。

 卒業後は就職希望だというAさん。7月上旬から就職活動を開始して、期末テストの傍ら、急ピッチで応募先を選んだそうで「見つかるまでは『時間が足りない』と毎日焦っていた」といい、求人票の良し悪しの判断をすることにも苦労したそうだ。

 多いときには1000枚以上も届くという求人票。そこに書かれた給料・福利厚生・残業時間などの情報を頼りに、生徒たちは企業を選んでいく。

 高校で、就職指導を担当する教員たちは、高校生の就活についてどう感じているのだろうか。東京都立つばさ総合高等学校の就職担当・羽浦めぐみ教諭に話を聞いた。

「一社しか出願できないところが1つのポイントかと思います。もしそこがダメだった場合、応募先が減った中から、希望の会社を見つける作業をイチからやり直す所が大変かなと思います」

 生徒たちを気に掛ける一方で、教員たちは求人票の取りまとめや、企業への連絡などを通常の業務に加えて行わなければならない。また、近年ではAO入試や指定校推薦で進学する高校生が増加。これらの応募時期が重なることも教員の負担が増える要因になっている。

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 リクルートワークス研究所の古屋主任研究員は「先生方が過重労働になっている仕組みは変えなきゃいけません。先生方は就職後の社会の専門家では当然ないわけですから、もっと“外の力”を借りるべきです」と話す。

 一方、高校生の就活に対する議論が進まないことについては「最大の理由は、社会の偉い人たちが高校卒で就職しないから。官僚、メディア、学校の先生も。高校生の就職に対して実体験がないので問題意識を持ちにくい」と指摘する。

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 こうした中、高校生に向けた就職支援を行う「株式会社ジンジブ」では、高校生向けの求人情報サービス「ジョブドラフトNavi」を運営。写真や動画を多く掲載した求人ページを公開し、求人票だけでは分からない雰囲気など“企業の見える化”を図っているという。

 また、この他にも高校生に向けた企業説明会を実施。ちょっとした仕事体験ができるイベントなど「就職」がより身近に感じられるような働きかけを行っている。

 高校生たちへの就職支援を続ける株式会社ジンジブの新田圭取締役は、今後の目標として「高校生たちに対する“キャリア教育の支援”」を挙げた。

「学校現場におけるキャリア教育のコンテンツを提供していきたい。18歳でファーストキャリアを始めて1年で辞める子には“転職の機会”というのは非常に訪れにくい。その子にも輝くものはありますし、社会で活躍できる場所は絶対にあります。そういった子たちへの再挑戦できる場を作っていきたい」

(『ABEMAヒルズ』より)

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