組織に雇用されず個人として働くフリーランスの労働環境を整備するため、13日、政府は新しく法律を定める方針を固めた。案では依頼主の企業に対し、仕事を募集する際に報酬額や仕事の内容、納期などを明示し、契約の書面や電子データの交付を義務付けるという。仕事を請け負う個人を一方的な契約の変更などから守り、取引の適正化につなげる狙いだ。新法案は今秋の臨時国会に提出する方針だ。
【映像】「さっさと中止してくれ」の声も…「インボイス制度」とは(画像あり)※27:38ごろ〜
現在、フリーランスは462万人で、就業者全体の約7%(※2020年政府試算より)。業種もITやデザイン関連、配送、建設など、多岐にわたっている。しかし、一方で、個人としての立場の弱さから、依頼主から不利な契約変更をされても、泣き寝入りせざるを得ないケースも多々ある。
ニュース番組「ABEMA Prime」では、2017年にフリーランス協会を設立した平田麻莉氏を招き議論を展開。平田氏は「口約束に基づいた未払い・遅延、一方的な減額などが、日常茶飯事になってしまっている。SNSでは会社員から『今までフリーランスはそんなレベルでさえ守られていなかったのか』と驚きの声も見かける。残念ながらこれらは"あるある"だ」と話す。
協会でも実態調査を行い、フリーランスを守る方針やガイドラインを作ってきた平田氏。新法案について、どのように思っているのか。
「契約内容や条件の明示だけでも立法化してほしい。それを私たちの協会でも5年間、言い続けてきた。足かけ6年でようやくそれが実現する。一方で、フリーランスや発注者に負担を強いるような規制で、発注控えが起こってしまうと本末転倒だ。私は個人や協会でもフリーの方とたくさんお仕事をしている。発注者側の立場もよく分かるので、あまり窮屈さを感じるルールだと逆に仕事がなくなってしまう。『ルールはできるだけ緩く、必要最低限の範囲で』と繰り返し要請をしている。そういった意味で政府も絶妙にバランスを取ろうとしている」
ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は「フリーランスという言葉でいろいろな仕事が一緒になってしまっていて、ややこしい」とした上で「取引先が1つ、2つぐらいの人だと無理難題を言われても従うしかない。正社員だと労働基準法に守られているが、それすら適用されない奴隷のような扱いになるしかない。だから取引先が多くない人はフリーランスにならない方がいい」と意見。
「綺麗事として『保護する法律を作った方がいい』はわかる。でも、それを言い出すと『お前、面倒くさいから頼まない』と言われて、別の人と契約されて、仕事が減るだけだ。だから法律が作られても、フリーランス側の立場が弱いのは、何も変わらないと思う。今だって下請法に書いてある通りにやってない会社がほとんどだ」
田端大学塾長の田端信太郎氏は「たとえば、正社員で産休・育休に入る人がいる。ただ、2年、3年したら戻ってくるので、その穴埋めに正社員を取ると後々かぶってしまう。その結果『この間だけフリーランスでカバーしよう』みたいな形で雇われることがある。だからそのスポット契約の人が仮に妊娠したとして『出産・育児に配慮してほしい』となった場合、企業側に休ませないといけない努力義務があるのは矛盾していると思う。契約が切れないなら、最初からフリーランスに頼む意味がなくなってしまう」と指摘。「出産しようが育児してようが『歯を食いしばって納品したから満額ください』というガッツがない方は向かない。むしろ『強制的に産休や育休を取らされるのが嫌だ』というような人こそがフリーランスになるべきだ」と持論を述べた。
これに、平田氏は「出産・育児への配慮というのは『契約を切ってはいけない』という意味よりも、どちらかというと『休ませてあげて』という意味だ」と回答。「『休ませる』は契約終了することも含めてだ。よくあるケースが、長期のお仕事をやっていて、途中で妊娠中に体調が悪くなって働けなくなったり、出産してしまったときに『やり遂げてくれないなら今までやった分も含めて払わない』といったトラブルがある。今回の新法は『こうしなければならない』と契約内容に介入するものではない。『契約条件を事前に明示しましょう』という話なので、双方がOKであれば問題ない」という。
平田氏の説明に、ひろゆき氏は「事前の明示もシステム業界だとけっこう難しい。どんなシステムで、どう構築したらうまくいくのかが分かっているなら、そもそもシステムエンジニアに発注しない」とコメント。「やってみて『実際はこうだったから、こういう労働形態に変えよう』となる。『前もって書面にしましょう』はきれいごととしては分かるが、実態としてはかなり難しいと思う」と見解を語った。(「ABEMA Prime」より)
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