4年連続3位。毎年、ファイナルシリーズに進出しなければ、こんな成績は残せないが、過去のレギュラーシーズンの好成績を振り返れば「V逸」という表現の方がぴったりはまるのが渋谷ABEMASだ。絶対的リーダー・多井隆晴(RMU)も「ここまで優勝できないのは恥ずかしい」とまで言い放ち、それだけチーム力には絶対的な自信がある。5年目で狙う初優勝の先の目標まで立ててある多井は、この戦いに全てをかけている。
-まずは昨シーズンの振り返りをお願いします。
「優勝したい」というのは誰もが思っていて当たり前のこと。ファンも当然優勝してほしいと思っているし、チームとしてもサイバーエージェントさんも優勝してほしいと思っているんでしょうけど、僕らは職業として麻雀プロでMリーガーをやっていて、レギュレーション的に大負けしないように、というところが必要になってきています。契約満了する選手を見ていると、ファイナルに行くのが仕事というイメージになります。2年連続ファイナルに残れなかったら、最低1人はメンバーを入れ替えなきゃいけないこのレギュレーションにおいて、麻雀プロとして何を見せられるかなというと安定感だと思うんです。10年連続ファイナルに連れて行きたい。そういうチームを作りたいというのがあります。
優勝はもちろんしたいですけど、したいと言ってできるものではなくて、優勝を狙うと5位から8位になっちゃう。実力のあるチームが5位から8位になってるんで、トップを狙うからラスになっちゃうみたいですね。可能な限り一か八かの勝負はしないで、安定して勝ちたいです。
-リーグ初年度から全てファイナルに残っているのはABEMASだけです。
麻雀力が高いんじゃないですか。昨期までレギュラーシーズンの90試合で一番スコアがいいチームが、一番強いんじゃないですか。でも優勝するためには残り12試合でドカンと勝つ、12分の7でトップを取るぐらいでないと。そのためのメンタルだったり技術もABEMASには必要で、ファイナルに向けて一か八かの勝負に出られるハートや技術をみんなで鍛えていかなければと思います。
-後輩3選手を引っ張る存在でもあります。3人の成長は感じますか。
かなりレベルが上がっていると思います。白鳥翔に関してはほぼ言うことがないですね。彼なりに成長していって、一日も早く僕を抜いてくれればと思っているんです。松本吉弘に関しては総合力は高いんですけど、経験を積んでいないところは僕が後ろからサポートしなければいけないと思っていて、それは日向藍子も一緒です。彼らが知らないことを少しずつ教えて、僕が伝える中で彼らが「ここは必要だな」というスキルがあれば使ってもらいたい。僕のスキルが全部彼らに必要かどうかはわからないし、正しいかもわからないので。
-白鳥さんは多井さんが伝えたことを咀嚼しているようです。
白鳥は僕のことをリスペクトしているけれど、疑り深いというか器用さを持っています。松本・日向に関しては、本音で言うと僕がいうことを全て信じてしまいそう。白鳥は僕をいつも疑ってかかっているんだけど、だからこそちょうどいいバランスで学んだんじゃないですかね。
-今年は3選手がMリーグ入りを果たしました。印象はありますか。
強いのはわかっていますけど、Mリーグの舞台で勝てるかどうかはわからないですね。例えば僕が最高位戦のC 2リーグで編入したとして、でもそこで勝てるかどうかというのはまた別の話なんですね。総合力が高ければ勝ちやすいんですけど、そこで絶対的にMVP クラスの活躍ができるかというのはまた別の能力が必要なので、その器用さを持っているかということ。雀力が高いのはわかりますけど、Mリーグっていろんな個性とか、レベルとか、違うプレッシャーがあるんです。強くて勝てない人を見てもらえればわかると思います。今年は3人が勝つことはないと思います。僕の予想では、2人マイナスします。
-オフ期間は他業種の方との交流も増えました。
そこは僕のやらなければならない仕事だと思っているんです。麻雀の技術(の向上)というのは他の人もやってるので、僕は麻雀に興味がなかった世界、例えば競輪でもボートレースでも、向こうの業界と麻雀をつなげたいです。どちらの業界もいいことがあるんじゃないかと。1+1が2じゃない。3、4、5と広がっていく。勝手に向こうが宣伝してくれるようなもので、もっとM リーグのことを見てくれる人が増えると思います。早く他のMリーガーがこれに気づいてどんどん活動してほしいですね。
-多井さんの場合は(他の業種の)プレイヤーサイドにも回ることがあります。
ニワカが一番ダメなんですよ。「そちらの配信も見てるのでこっちも見てください」という感覚では、向こうが協力していてもその人のファンが話を聞いてくれないんですよ。100万人の視聴者がいるVTuberの方に僕が一生懸命接することがありますが、そうすればその人のファンも多井を応援してやろうという気持ちになってくれます。そこは麻雀以上に打ち込んできたと思いますよ。貴重な時間とお金を頂くので、やれることはやろうと。売れている人に中途半端にこちらからすり寄って行こうとすると、計算が見えるという感じで嫌がる人も多いです。いかに他の業界と一生懸命に関われるかが大事ですね。
-小林剛さんはMリーグの総合成績をとても気にしていて「多井さんを抜きたい」と言っていました。
プロデビュー4年目だったら気にしていくんだけど、20何年やってきてこういう成績なので何も気にならないですね。スランプになったら考えるでしょうけど。Mリーグではレギュラーシーズンが一番大事。フラットに成績を残すところですから。条件戦で10万点のトップが必要とすれば役満ばかり狙いますよ。セミファイナルとファイナルは大負けしちゃってますけど、そこは(強さの評価軸とは)違うと思っています。レギュラーシーズンにはこだわりますよ。チームの存続に関わるので。ABEMASがもし2年連続悪い成績で誰かが抜けるとなったら僕は耐えられないと思う。誰が替わろうが自分だろうが、その後のモチベーションに自信がないですね。そこだけは回避していくような戦いをしたいです。。
個人の成績も気にしません。自分の成績が例えば+190で、チームがラスにならなければOKという試合なら、個人成績は+190のままでいいです。そこで強引に+200を狙ってチームが負けたらダメなんで、自分のスコアは二の次。余裕ができていたら+200とかを考えるけど、個人成績は二の次三の次ですよ。いいんじゃないですか、小林剛さんと対照的で。
-今年優勝できたら、その後の目標どうしますか。
3回優勝するだけですよ。正直、ABEMASが一番強いと思っていて、ここまで優勝できないのは恥ずかしいです。10年で3回優勝して、麻雀人生を終えたいですね。だから、3回優勝した時にその後のことを考えます。これまでの自分のタイトルとMリーグを比べちゃいけないけど、取っていないものは取りたいし、今までのことはもう全部なかったことにしてMリーグの優勝をしたい。それぐらいの価値があります。
※連盟=日本プロ麻雀連盟、最高位戦=最高位戦日本プロ麻雀協会、協会=日本プロ麻雀協会
◆Mリーグ 2018年に発足。2019-20シーズンから全8チームに。各チーム4人、男女混成で構成され、レギュラーシーズンは各チーム94試合(全188試合)。上位6チームがセミファイナルシリーズ(各20試合・全30試合)、さらに上位4位がファイナルシリーズ(16試合)に進出し、優勝を争う。優勝賞金5000万円。
(ABEMA/麻雀チャンネルより)