大ベテランへの感謝と将棋の棋士のような謙虚さ 堀慎吾「藤井聡太さんは自分が一番強いとか絶対言わない」/麻雀・Mリーグ
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 Mリーグ入りを果たした頃はビッグマウスキャラとして入ってきたKADOKAWAサクラナイツ・堀慎吾(協会)が、驚きの“キャラ変”だ。昨期、大ベテランの沢崎誠(連盟)から数々の言葉をかけられ感謝し、また将棋界のプロ棋士と出会ったことで、いくら強くても謙虚であるべきと知った。昨期は悲願のチーム初優勝を果たしたが、慢心することなくオフシーズンを過ごせたのも、そんなきっかけと経験があるからだ。「藤井聡太さんは自分が一番強いとか絶対に言わないじゃないですか」。まだ時折、ビッグマウスの名残りがありつつも、今年の堀は謙虚に2度目の頂点を狙う。

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-昨期、ついに初優勝を果たしました。ご自身で振り返るとどんなシーズンでしたか。

 2020-21シーズンのファイナルで自分が大事なところで2ラスを引いて、チームがそれで準優勝になってしまったことが悔しくて。昨シーズンは最後の試合にも出してもらって、チームを優勝に導くみたいな形になったので、いいシーズンだったなと思います。

-シーズン終盤には沢崎誠さんが病気で離脱され、ご自身も足のけががありました。

 沢崎さんがどこかで離脱することはレギュラーシーズンの序盤に、実際に離脱するタイミングはレギュラーシーズンの後半くらいに伺っていました。ファイナルは一緒に戦えないことがわかっていた中で、セミファイナルに沢崎さんが調子を崩した時期があって、結構負けていたんですね。でも、レギュラーシーズンは沢崎さんの活躍がなければ通過もどうだったかくらいのポイントで、本当にチームを引っ張っていただいた。ファイナルで戦えないことが確定していた中で、沢崎さん自身が負けている状態でセミファイナルで敗退してしまったら、本当に申し訳ないなという気持ちがありました。自分の中では絶対に負けられないなという気持ちで試合に挑んでいたと思います。

-改めてチーム戦であることを強く感じましたか。

 本当にいろいろなエピソードがあるんです。たとえばレギュラーシーズンで沢崎さんはMVPを争っていたじゃないですか。レギュラーシーズン最終日の前日に予告オーダーをサクラナイツのTwitterで発表して、1戦目を僕、2戦目を沢崎さんが行って(U-NEXT Piratesの)瑞原明奈さんと直接対決しよう、みたいなことがありました。僕がその予告オーダーを出す1戦前でラスを引いたんです。監督が「沢崎さん、どうしたいですか?」って聞いたら「1戦勝負にしたい」と。体力的なこともあるし、2戦ダラダラやって駆け引きをやるより、1戦で直接対決にした方が盛り上がるって意味も含めてですね。なおかつ、1戦目に僕を使ってほしいと沢崎さんがおっしゃってくれたんです。「今後、堀君が調子を落としていたままでサクラナイツの勝ちはないから。いい調子でセミファイナルにつなぐために、絶対ここで使った方がいい」ということで。本来は登板予定がなかったんですけど、1戦目が僕になりました。

 そこで僕はラスを引いたんですよ。沢崎さんがせっかく僕に気を使ってくれたのにラスを引いて、沢崎さんにいいバトンをつなげなかったんですよね。結果、瑞原さんがMVPになった時、ちょっと僕の中で責任を感じました。前回ラスを引いた僕を心配してのことだったので、せめて3着でも取れていたら、もしかしたら沢崎さんはMVPを取れていたかもと思っちゃうんですよ。すごい優しくていろいろ気を遣ってくれて、1年目から僕をいっぱい出した方がいいって言ってくれたりだとかそういうのがあったので、セミファイナルで沢崎さんが負けていた時には「ここで絶対にチームが敗退したらダメだな」という気持ちになりましたね。

-チームでは内川さんが最年長になりましたが、ポイントリーダーという面で堀さんも頑張らなきゃという気持ちは強いですか。

 僕自身やっぱり、チームにポイントを持ち帰ってくるのが仕事。「君の仕事はこうだよ」と1年目から言われていますし。調子が悪かったでは済まされないなっていうくらいの気持ちではいます。

-Mリーグの2年間で慣れた部分も出てきましたか。

 麻雀に関しては心配なかったんですけど、こういうインタビューとかがやっぱりすごく慣れなくて(笑)。そういう部分では前よりいけるようになったなって気持ちはありますね。

-サクラナイツはエンタメ性も高く、配信などの露出も多いチームです。

 いろいろとやらされて、自分でも何をやっているのかよくわからなくて、言われるがままですね。楽しくはならないです(笑)。自分には向いていないものだと割り切っています(笑)。

-試合後のインタビューでも決まり文句が生まれました。

 リポーターの松本圭世さんに助けられてありがたいです。松本さんがインタビューで作ってくれた「至極の一局」から頂いて、6月に発売した僕の本のタイトルが「至極の戦略」になりました。マツカヨさん様々ですね。

-インタビューの内容は、トップが見えた当たりから考えたりするんですか。

 試合中にインタビューで何しゃべるか、考えています。麻雀って考えることがあまりないというか、慣れてくるとそんなに多くないので。だいたいベタ降りしている時とか「んー、インタビュー何しゃべろうかな」みたいなことを考えながら打ってますね。

-今期トピックスで、沢崎さんがチームを去られた後に、渋川難波さんが入られることになりました。

 たぶん1年目の僕もそうだったと思うんですけど、こういうインタビューとかが慣れてないんですよね。普段はYouTuberとかやってるので、しゃべることには慣れていると思うんですけど、やっぱりそれとはまた違うというか。実際、一緒に入団会見に出ましたけど、普段の僕は渋川をどんどん煽っていくスタイルなんですが、ちょっと煽れなかったですね(笑)。フォローする側に回っていましたから。

-麻雀に関してはいかかでしょう

 麻雀はもちろん強いんですけど、解説を聞いていると「こんなすごい解説できるんだから、麻雀もめちゃくちゃすごい」みたいに過大評価している人がいっぱいいると思うんです。そういう方たちに僕が言いたいのは「そこまでではないですよ。そんなに期待するものではないから」ということ。強いは強いけど、そんなに過剰な期待はしないであげてくださいってことです。ハードルが上がりすぎちゃってるんですよね。解説が上手いというのは特異体質なんですよ。解説だけ聞くとすごく麻雀も強そうと思う方が多いですけど、実際はそこまでではないので、そんなにハードルを上げすぎないでください。渋川さんのために言っておいてあげたいですね。

-他にも2選手が新たにMリーグ入りを果たしました。

 鈴木優さんは、あまり当たったことがないです。ただ僕も昨年、最高位決定戦とか見てたので、すごく攻撃的な麻雀を打つ方だなという印象ですね。Mリーグのフィールドに合いそうな麻雀を打つので、しっかり勝ちそうだなという、なんとなくのイメージはあります。

-今期の目標は、やはりMVPですか。

 一番の目標はMVPですね。やっぱり1回は絶対に取りたいと思っているので。ただもうビッグマウスは卒業しました。将棋の棋士の方にすごく影響を受けたんです。棋士の方って、どんなに強くても驕らないじゃないですか。藤井聡太さんが「僕が一番強いと思いますけどね」とか絶対に言わない(笑)。年齢やいろいろな意味でそうかもしれないですけど。でも、羽生善治さんにしろ一世を風靡した方たちも、そういうのを言っているのを聞いたことがないんですよ。将棋の方が、その場で誰が強いかってはっきりしてるじゃないですか。にもかかわらず、こんな麻雀という運で大きな影響を受けるゲームで(ビッグマウスは)ちょっと違うなと思ったんですよ。かっこ悪いなって(苦笑)。すごく成績を残しつつも謙虚である棋士の方みたいにかっこよくなりたいと思って、そっちのキャラで行きたいなと心では思っているんですよ。まだこれまでのクセが抜けてなくて、名残りがあるんですが(笑)。

-もともと将棋に興味があったんですか。

 そうですね。駒の動かし方くらいしかわからなかったんですが、昨年に渋川がYouTubeのイトシンTV(伊藤真吾六段)とコラボしているのを見て、僕もやってみようと思って始めたんです。そしたら結構楽しいし、いろいろな棋士の方と接する機会もいただきました。YouTubeをやられている藤森哲也さんとか、瀬川昌司さんとか、会う方会う方みんなリスペクトしてもしきれないくらい。麻雀プロである僕が、恥ずかしくなっちゃって。こんなにすごい世界の天才の方たちが謙虚なのに、ちょっと麻雀で人より勝てるくらいで大口を叩くのはダメだなって今は思ってますね。

※連盟=日本プロ麻雀連盟、最高位戦=最高位戦日本プロ麻雀協会、協会=日本プロ麻雀協会

◆Mリーグ 2018年に発足。2019-20シーズンから全8チームに。各チーム4人、男女混成で構成され、レギュラーシーズンは各チーム94試合(全188試合)。上位6チームがセミファイナルシリーズ(各20試合・全30試合)、さらに上位4位がファイナルシリーズ(16試合)に進出し、優勝を争う。優勝賞金5000万円。

ABEMA/麻雀チャンネルより)

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【中継】Mリーグ2022-23シーズン開幕式&開幕戦
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Mリーグ 配信情報まとめ
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