奨学金返済者1割が“自己破産を検討”の実態 債務帳消しプロジェクトに賛同の声、一方で自己責任論も「教育にお金をかけられない国に明るい未来はない」
奨学金返済者の実態 アンケート結果
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 9月21日、労働問題などに取り組むNPO法人「POSSE」らで構成される「奨学金帳消しプロジェクト」が、JASSO(=日本学生支援機構)の貸与型奨学金を利用した元学生らを対象に実施したアンケート結果を発表した。

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 調査結果によると、回答した約6割の人が進学時に300万円以上の奨学金の貸与を受けたと回答。また、現在の雇用形態については61%が正社員である一方、61%が年収400万円以下であると答えた。

 収入の低さから、生活費を切り詰めても奨学金の返済ができないという状況が多く発生しており、全体の28%が「返還延滞の経験がある」と答え、さらに10%が「自己破産を検討したことがある」と回答していた。

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 JASSOによると、2020年の時点で貸与型奨学金を返済中の人は約439万人いる。その内の1人で400万円の貸与型奨学金を受けたという25歳の女性は、大学卒業後、高校の教員として働くも体調を崩し退職。奨学金返還の“重さ”について「家族に迷惑をかけないためには、自分が死んででもなんとかするしかないと思いました。こんなに沢山の人が人生を振り回されていて、教育にお金をかけられない国に明るい未来はないと思います」と訴えた。

 団体は、現在10年に設定されている奨学金の返還猶予期限の撤廃や、返還猶予制度で設定されている年収ラインの引き上げ、また、今年8月にアメリカ・バイデン政権が発表した学生ローンを返し終えていない人に対する“1人1万ドルの返済免除”と同水準の債務取り消しを提言した。

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 「奨学金帳消しプロジェクト」の一員である岩本菜々さんは、今回のアンケート結果について「今、雇用が不安定化している中で、奨学金を返済中だけど返せないという2、30代からの声が多く寄せられた。(奨学金が原因で)結婚できないと考える人や出産を諦めてしまうという人がすごく多い印象」と語った。

 こうした中、6月に岩本さんらは“貸与型奨学金の債務の帳消し”や“学費無償化”などを求めるオンライン署名を開始。9月27日現在、3万2千人を超える賛同の声が集まり、サイトには多くの応援コメントが寄せられている。

 その一方、ネットでは「借りたものは返すべきだ」など、奨学金を借りた人に対する「自己責任論」も多く存在。こうした声に対し、岩本さんは「自分が結婚・出産して、その子が“医療的ケア”を必要とする子どもだったりすることが自己責任なのかというと、そうでもないと思う。(返済できなくなる)リスクがあるのはわかりきっていることなので、それに対する措置も同時に講じられるべきだと思います」と考えを述べた。

 誰もが等しく、教育を受けられる社会に。今後、団体は集まった署名をJASSOや文科省に提出する予定だという。

「奨学金が返済中の若者の人生を制限するという状況が広がっている中、『学費は無償にして債務も帳消しする』というのが、これ以上奨学金に人生を縛られる人が増えないためにも、これからの世代のためにも必要だと思っています」(岩本さん)

(『ABEMAヒルズ』より)

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