プロ麻雀リーグ「Mリーグ」において昨期、チーム3年目で悲願の初優勝を果たしたKADOKAWAサクラナイツ。森井巧監督も、優勝が決まった瞬間、選手たちに混じって号泣した。チームの大黒柱・沢崎誠(連盟)が病気療養のためファイナルシリーズを欠場、最終盤に堀慎吾(協会)が足を骨折と、チームが危機的状況に陥る中でも、強い精神力とチームワークで乗り切り、表彰式では内川幸太郎、岡田紗佳(いずれも連盟)の2人が高々と優勝シャーレを掲げた。「監督が勝ちたがっているチームが一番強いと思っている」という森井監督は、歓喜の瞬間のために日々「監督学」を学んで、優勝へと突き進んでいた。
【動画】監督論について語るKADOKAWAサクラナイツ森井巧監督
リーグ初年度の2018-19シーズン、森井監督はファンの一人だった。「渋谷ABEMASのオフィシャルサポーターでした。シーズン最終試合のパブリックビューイングで、藤田晋社長(Mリーグ・チェアマン、渋谷ABEMAS監督)のところに名刺を持って、ご挨拶に伺ったんです」。すると後日、藤田チェアマンからメールが来た。リーグ参画の誘いだった。「チームを持つことにご興味はありませんか、とご連絡をいただいたんです。全く想像していなくて、めちゃくちゃ魅力的な提案でした。そこからいろいろなプレゼン資料を作って、会社に承認をいただいたのが、6月の後半。次のシーズンが始まるぎりぎりでの承認で、7月のドラフトに入りました」と、KADOKAWAサクラナイツ誕生の経緯を振り返った。
プロスポーツのチームを持つ上で、2つ心に決めたことがある。1つは「常にファイナルシリーズに残りたい」ということ。8チームが参加するMリーグで、毎シーズン最後まで優勝を争うチームでなければ意味がない。もう1つは、ファンとの距離だ。「プロスポーツはファンの方の日常に接するものです。試合がある時、ない時に関わらずファンの方に寄り添える、身近に感じられるチームを作りたいと思いました」。試合中に最高の舞台で戦うことを見せることはもちろん、日々の生活に根付いてこそのプロスポーツ。各種コンテンツを扱う会社で働いてきた森井監督らしい言葉だ。その上で直接、藤田チェアマンから声をかけられただけに、チームを率いる監督を務めるのも自分以外は考えられなかった。
参入1年目からリーグ最年長・沢崎の大活躍もあり、チームが好調にシーズンを過ごしていくと、「楽しくてしょうがなかった」と振り返る。「もともとスポーツがすごく好きで、自分のチームを作ってプロデュースするのが一つの夢でした。毎日が本当に楽しかったです」と、順風満帆の状況を満喫した。セミファイナルシリーズも1位で通過。初参戦で初優勝かと期待が膨らんだが、ファイナルシリーズでは一転して苦戦の連続に。最終結果は4位で終えた。
2年目となった2020-21シーズンには、森井監督自ら面談した堀慎吾(協会)をドラフトで指名し、新戦力に加えた。ここで編集者としての社会人経験が活かされる。「堀選手と会って話した時に、強い人だと確信が持てました。僕自身編集者をやっていて、その人の考えることとか、描き出すものを感じられるものがたくさんありました。人を見る力は、仕事上磨いてきました」と、直接会った感触で真の強者だと認めた。期待に応えた堀、さらにエース内川が絶好調だったこともあり、チームはレギュラーシーズン、セミファイナルともに2位通過。ファイナルではEX風林火山の猛攻により初優勝こそ逃したが、前年よりステップアップする準優勝という結果を残した。
この2年間だけでもMリーグの監督として経験を積んだが、日々の研究は怠らない。「KADOKAWAサクラナイツにおいて監督というポジションはチームをどうプロデュースするか。GMの位置だったり、広報だったり、いろいろな側面を持っている。それから僕自身は監督もキャラクターとして『あ、森井だ』と認識してもらえるのがよいなと思いました」と、多くの役割があると考える。その上で、他のプロスポーツの監督から学ぶことを続ける。特に好きなのは、プロ野球で日本ハムを率い、現在は日本代表「侍ジャパン」の監督でもある栗山英樹氏だ。「栗山監督は選手として大成された方ではないですが長い年月、監督を務められたし、予算規模も大きくないチームで優勝されました。書籍を読んでかなり研究しましたし、通じる部分がすごくありました」と、大いに参考にした。
経験と研究がうまく噛み合ったのが3年目となった2021-22シーズンだ。レギュラーシーズンを2位で通過し、セミファイナルでは1位通過。ファイナルでは沢崎の離脱、堀の骨折という事態に見舞われたが、満身創痍の中で「最後まで試合を走り切ることに無我夢中」で、余計なプレッシャーを感じずに戦えたことが初優勝を引き寄せたと考えている。
連覇がかかる新シーズン。沢崎が契約を満了し、新戦力には昨期まで公式解説を務めた渋川難波(協会)をドラフトで指名した。実力はもちろんながら、YouTubeなどを活用した発信力も魅力で「チームのトータルバランスを考えて、今一番欲しいピースと考えました」と理由を述べた。チームの体制が変わった以上、前年優勝チームとはいえチャレンジャーの気持ちに戻る。「もう一度、貪欲に新チームとして優勝を狙いにいきたい。チャレンジャーの精神を持ちつつ、築き上げてきたものを大事にしたい。不易流行という精神で、誰も成し遂げていない連覇をしたいです」。名監督を目指す森井監督に、油断の2文字はまるで見えない。
(ABEMA/麻雀チャンネルより)






