秋の味覚の代名詞「サンマ」。いま、かつてない程の価格高騰の波が押し寄せている。2021年のサンマの価格は、1キロあたり627円と15年前から、約9倍の価格まで上昇。スーパーでも、気軽に手が出せない高級魚になりつつある。
背景にあげられるのが、サンマの漁獲量の減少による価格の高騰だ。ピーク時には30万トン以上水揚げされていたが、2021年の漁獲量は約1万8000トンとなっている。
なぜ、これ程までに漁獲量が減ってしまったのか。漁業の資源管理に詳しい、マルハニチロ株式会社の片野歩氏は「原因は、根本的な部分にある」と指摘する。
「最大の理由は資源量が激減しているから。日本の皆さんは『水温が下がれば来る』『次こそ大漁に期待』とか言っても、そういうことはない」
これまで、サンマの漁獲量低下の原因には主に「海水温の上昇」といった環境の変化があげられていたが、これに対し、片野氏の答えは「NO」。
北海道の沖には、周囲より水温が高い“暖水塊”という塊があり、これがサンマの来遊を妨げているという仮説があるが、現在の日本のサンマ漁場はその暖水塊よりはるかに沖合。片野氏によると、2021年には94%が公海上で獲れたものだったという。
「海水温が高いから来ないのであれば低くなれば来るはず。ただ水温が低くなってもサンマはたくさんこない。なぜなら、サンマの資源自体が日本も含めた各国が獲りすぎて激減しているから」
片野氏によると、資源が減った最大の要因は公海上での各国によるサンマの奪い合いにあるという。近年、中国や台湾などがサンマ漁に次々と参入。長年、漁獲量で覇権を握ってきた日本も、今では2割ほどのシェアとなっている。
「中国船も台湾船も日本船と入り交じって同じところで獲っている。日本の漁船が獲れないときは中国・台湾の漁船も獲れないし、その逆も然り。漁獲圧力を上げても漁獲量が増えていかないところまで資源は悪化している」
こうした状況の中、2015年にはNPFC(=北太平洋漁業委員会)が設立され、全体でのサンマの漁獲可能量、“漁獲枠”が定められた。しかし、その数字は、実際に漁獲できる数字よりはるかに大きく設定されているという。
「例えば、2021年2022年は、(全体で)約33万トンの漁獲枠があるのですが、昨年の漁獲実績というのは10万トン弱。ルール上は獲れるから獲りすぎてしまって、資源が減っている」
こうした中、片野さんが必要になると話すのが、科学的根拠に基づく“国ごとの漁獲枠の割り当て”だ。
しかし、サンマ漁に巨額の投資をしている中国など、各国から合意を得る事は容易ではない。また、漁獲枠の割り当ては近年の漁獲実績に応じて決められるケースも多く、日本のサンマ漁獲量が減る可能性もあるという。それでも、「限りある資源を残すことが何より重要だ」と片野氏は話す。
「一番困るのはサンマの資源がなくなってしまうこと。これ以上獲ってしまったら大変なことになるのはわかっているので、そこで合意ができるか」
(『ABEMAヒルズ』より)
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