「空気を読めない行動に引かれて」 発達障害者の弁護士が同じ境遇を抱える人の支えにと奮闘する“相談室”
“発達障害”の弁護士が開設「気持ちが理解できる」相談室
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 発達障害によって仕事で苦しむ人たちの相談に乗る弁護士事務所がある。自身も発達障害の当事者ながら「同じ境遇に立つ人たちの力になりたい」と奮闘する弁護士を取材した。

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「発達障害当事者向けの法律相談という形で、自分の経験を役立てていくことができるのではないか」

 東京・日野市で弁護士として働く伊藤克之さん。彼が代表を努める日野アビリティ法律事務所では、民事相談のほか、「発達障害者法律相談室」が設置されている。初回は無料で、発達障害を抱える人たちから、労働問題などさまざまな相談を受けている。

 一人一人と親身に向き合ってきたという伊藤弁護士。実は彼自身も発達障害を抱える当事者の一人。東大法学部出身で、在学中に司法試験に合格。卒業後、一度は弁護士事務所に就職したものの、相談者の話す意図が汲み取れないなど、コミュニケーションに苦労し、過労も重なり休職することに。

「空気を読めない言動をしてしまい、周りから引かれてしまうこともあった。検査を受けてみて『広汎性発達障害の特性・傾向がある』と言われ、それで自分の特性を自覚した」

 ある日、かかりつけだった診療内科の医師から発達障害の検査を勧められ受診。診断されたのは、「自閉スペクトラム症」。対人関係を苦手とし、一定の物事に強いこだわりを持つのが特徴で、人口の1%が当てはまるとも言われている。

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 そこから、伊藤さんは同じような特性を持つ人の力になりたいと独立。弁護士事務所を設立し「発達障害者法律相談室」を開設した。

「当事者の気持ちが他の弁護士よりも少しは理解できると思う。話をまとめるのが苦手な人もいるので、通常の弁護士や法律相談センターが設定している30分では中々終わらないケースが多い。時間にこだわらず、本人の気持ちなどを受け止めた上で、適切なアドバイスをしたい」

 2018年の障害者雇用促進法の改正により、雇用義務の対象に精神障害者が加わり、発達障害を抱える人で「精神障害者福祉手帳」を持つ人もこの対象に含まれることになった。雇用が増えると予想される一方で、口頭での指示が理解できないという特性を持つ人や、職場で孤立し、体調を崩してしまうという人もいて、就業を継続するために支援が必要なケースもある。

 今も、月に1、2件の相談者が訪れるという伊藤弁護士。中には、「発達障害を治してから職場に来てほしい」と、休職を迫られるケースもあったという。

「発達障害への理解不足などで、ちゃんと能力を発揮できていたのに、それが阻まれてしまった。『納得できない』という気持ちを持つ人が多いと思う」

 発達障害を持つ人には、職場の環境によって障害を持っていない人よりも高い能力を発揮できる人も。伊藤弁護士は、企業が彼らを受け入れ、共に成長していくことが重要だと訴えた。

「発達障害の人に働きやすい職場であれば、そうでない人も働きやすくなる。お互いにとって良い関係を築けると思っているので、頑張って調整をしてほしい。また、多くの人にこの相談室を活用して欲しいと思う」

(『ABEMAヒルズ』より)

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