「ABEMA師弟トーナメント2022」の開幕に先立ち、師匠8人が集まり将棋界の師弟関係について語る「師匠サミット」が11月19日に放送された。和服を着用してタイトル戦に臨むのは、棋士にとって目標でありステータス。さらに、年間を通じて大舞台に立つ場合は夏用に冬用と、当然“勝負服”の種類は多くなるものだ。谷川浩司十七世名人(60)は「タンス3棹分」とその保有数を表現。視聴者からは「すごいな」「金額想像すらできない」と驚きの声が上がった。
タイトルに挑戦、獲得を目指すのはすべての棋士にとっての目標だ。谷川十七世名人は1976年12月に史上2人目、中学2年生で四段に昇段。順位戦2期目の1978年度に若獅子戦で棋戦初優勝を飾ると、4期連続昇級を遂げ一気にA級へ駆け上がった。1982年には、初参戦した第31期順位戦A級を制すると、勢いそのままに初タイトルの名人戦に初挑戦から奪取。21歳2カ月での名人就位は今もなお最年少記録として燦然と輝きを放っている。大記録を打ち立てた第41期名人戦七番勝負を含め、タイトル戦登場回数は57期、獲得は27期。タイトルをかけて全国各地を飛び回ってきた。
タイトル戦を戦う上での“勝負服”は何と言っても和服だ。師匠サミットでは、そんな谷川十七世名人の後を辿るような活躍を見せる藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、20)の師匠・杉本昌隆八段(54)から「師匠同士だから相談したいこと」のトークテーマで「藤井竜王がタイトルに初挑戦した時に冬用と夏用の2着を送ったんですが、昔、何かの機会に『和服は師匠からもらった2着しかありません』と言われてしまって。そう何着も必要なものなのでしょうか?」と質問される場面があった。
百戦錬磨の谷川十七世名人は「最初に名人戦に出た時に、親がフルセットまで行ってもある程度違う和服に、というくらい準備はしてくれました」と回答。名人3期の佐藤天彦九段(34)を門下に持つ中田功八段(55)は弟子のタイトル挑戦時を思い返し、「私は和服を贈れるほどの力が無い。お金が足らなくて。その時、(岡山県)倉敷から連絡があって『大山康晴先生の和服を使ってくれないか』と。すぐに天彦君に連絡したんですけど、あまり良い顔をしないんですよね。ファッションへのこだわりもあるんですけど、『(大山門下の)行方(尚史九段)さんより先に(孫弟子の)自分がもらうわけにはいかない』という思いもあったようです」というエピソードを披露した。
四季のある日本において、高温多湿、乾燥対策と和服の管理は神経を使うもの。一般的には桐タンスでの保管となるが、呉服店に管理を依頼している棋士も多い。谷川十七世名人は自宅で管理しているといい、その保有数は「和ダンス3本くらいでしょうか」。さらに「妻の和服はほとんど無いですが、私の和服がほとんどです」と明かすと、ファンは驚がく。「すごいな」「ひえー」「たんす単位で草」「金額想像すらできないw」「桁が違う」「これが永世名人…」と多くのコメントが寄せられた。
さらに、鈴木大介九段(48)が「ひとつだけいいですか!」と参戦。弟子の梶浦宏孝七段(27)は昨年11月17日の「将棋の日」に入籍、今春には結婚式を挙げたことに触れ、「タイトル戦と同じで、結婚式もお金かかるんで!ご祝儀、師匠は大変だと思いますよ~」と話し、師匠陣を震え上がらせる場面も。杉本八段は「いつの日かわかりませんが、覚悟しておきます」と苦笑いを浮かべていた。
◆ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで、チームの対戦は予選、本戦通じて全て3本先取の5本勝負で行われる。第4局までは、どちらか一方の棋士が3局目を指すことはできない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)