「今まで曖昧になっていた『恋愛禁止』というルールについて改めて考え直す時代が来たのだと思います」
20日、アイドルの恋愛禁止ルール見直しについてツイートしたのは、AKB48・3代目総監督の向井地美音。先日、メンバーの岡田奈々の恋愛がスキャンダルとして報じられたばかり。そんな中で投稿された向井地のツイートは、アイドルの恋愛論争に火をつけることとなった。
その後、恋愛を解禁するという意図ではなかったと謝罪した一方で、「運営に確認したら恋愛禁止ルールはない。メンバーの自覚を持った活動で成り立っている」ことも明かした。
果たして、アイドルの恋愛は「スキャンダル」なのか。21日の『ABEMA Prime』で議論した。
この騒動について、アイドルグループのプロデュース経験を持つレイ法律事務所の河西邦剛弁護士は、アイドルビジネスの観点から次のように説明する。
「三者間の意図がポイントだ。1つは運営・事務所側で、これはビジネスなのでお金を得る目的がある。2つ目がファン側で、“どういうアイドルを応援したいか”という時に恋愛禁止のグループがいい。3つ目がアイドル側で、インターネットやライブ会場が増えている中で競合が多く、差別化の観点から恋愛禁止をブランディングしていくというニーズもある。これらの思惑が入り組んでいるところが非常に難しいところだ」
一方、「恋愛禁止は必要」という考えを持つトレンディエンジェル・たかしは、「ビジネスと言っているが、こっちはスピリットでやっている」とファン心理を述べた上で、「歌って踊って握手会とかをしてくれるような人をアイドルだと思っている。会ったら好きになってしまうし、(握手会などは)お金を払って夢を買っているということだ」との考えを示す。
これに河西氏は「『歌とパフォーマンスで人を魅了したい』と考えているアイドルは多い。対してファンは、歌とパフォーマンスから好きになり、キャラクターも性格も好きになっていって、だんだん“こうなってほしい”という思いに変わっていく。『恋愛禁止だと思っていたのに、そうではなかったのか』という時に、気持ちのぶれが大炎上になっていく。昔は歌とパフォーマンスだったのが、恋愛感情に変わってきているのが今のアイドルビジネスだ」とした。
では、恋愛をしていてもばれなければいいのか。たかしは「そうだ。どちらかというと答えを知りたくないというか、終わってほしくない。ただ、カメラをみんな持っているこのご時世に隠せるのかなと思う。恋愛禁止はオタクの方が守っていて、僕は10年以上彼女がいない。そっちがしないと約束したら、こっちも我慢する。卒業してからはいいのではないか」との考えを明かす。
一方で、アイドルグループに属しながら結婚を発表し、活動を継続しても受け入れられるケースもある。「すごく人気のある人が結婚してお客さんが減るというのは、芸人でさえあること。アイドルが結婚してお客さんが減るのはアイドルとして見られているからで、アーティストとしては見られていなかったのではないか。イケメン芸人が結婚して人気がなくなったというのも、ファンは芸人として見ていなかったのだと思う」と語った。
そもそも、恋愛禁止をルールとして設けることは許されるのか。河西氏は「恋愛禁止を破ったことで事務所側が損害賠償請求をする事例は、2016年くらいから減っている。『契約書に書いてあって、こういうルールだから』と主張しても、裁判になると棄却される例はすごく多い。契約で縛る損害賠償義務だと事務所側が実際に縛る手段としては使えない、というのが弁護士の感覚だ」と説明する。
これに米・イェール大学助教授の成田悠輔氏は「そんなに複雑な問題ではないように思う。たかしさんみたいなファンは改造不可能だとして、アイドル側・事務所側にとっては、自分たちが作り上げてしまったファン集団がいる。それで商売をする必要がある時に、どのタイミングで恋愛禁止を破っていいのかということを、利害に則してマーケティングしていかなければいけないという程度の話なのではないか。法律論としては恋愛禁止をルールとして実行するのは難しいわけだから、結局普通のビジネス論に戻っていってしまうと思う」とコメント。
さらに、「アイドルビジネスが変化して、あまり成り立たなくなってきているのが背景にあると思う。参入が増えて競争が激しくなっている中で、プライベートを限定してやり続けても、ビジネスとしての旨味がない。そこで“旨味を保つためにこういうことをやれ”と規範を保とうとしても無理な話。コントロールが効かなくなって、グダグダなかたちで崩れていくだけではないか」と推察した。(『ABEMA Prime』より)
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