会社勤めの人にとっては、なかなかピンとこないインボイス制度。ざっくりと説明すると、取引で発生する消費税率や消費税額が正確に記載された請求書(インボイス)を、2023年の10月以降は使おうという制度だ。
このインボイス制度導入を前に、危機感を覚えている人たちがいる。インボイス制度導入によって、廃業するかもしれないと話すのは、これまで様々なアニメ作品のキャラクターを演じてきた声優の岡本麻弥さんだ。
今年8月、声優業界の有志によるインボイス制度への反対運動「VOICTION」を立ち上げた。
「私たち免税事業者が無理して課税事業者になったときに、消費税納めるのは価格転嫁していかないとやっていけない。末端の価格が上がっていけば、それを作るもっと大きな会社も上げざるを得なくなっていくので、全体に物価が上がることが想像される」(岡本麻弥さん)
インボイスを発行するためには、国に税金を納める課税事業者としての登録が必要になる。これまで、売り上げが1000万円に満たない事業者は、免税事業者として消費税の納付が免除されていたが、今後、所属会社や取引先などから登録を求められる可能性があり、課税事業者になれば納税により負担が増すことになる。
岡本さんには、「来年からはフリーの免税事業者は使わない」といった現場の声も届いているという。ただ、課税事業者への登録をためらう理由があると話すのが、同じく声優の西森千豊さんだ。
「仮に課税事業者、インボイスの番号を登録するとなると、今でさえ自分の今の仕事というところで、日々いっぱいいっぱい過ごしているなか、今の自分の状況で言うと、相当しんどい。だけど登録をしないままだと、事務所に一番迷惑をかけてしまう」(西森千豊さん)
課税事業者になれば、これまで必要のなかった事務作業が発生。登録するかしないかを選択するためにも、制度に関する情報を知る必要があり、声優・企業お互いに、混乱している状況だという。
「1人1人(インボイスに登録しているかを)確認しなきゃいけない。事務作業というのは、フリーランス側、個人事業主側含め企業でも相当な負担がある。誰も得しない制度なのではないかなと思っている」(岡本麻弥さん)
免税事業者のままでいれば仕事が減るかもしれない、かといって課税事業者になれば事務作業の負担が増える。
声優だけでなく、アニメーター、漫画家、その他様々な個人事業主が選択を迫られているのだ。
VOICTIONが声優を対象にしたアンケートでは、76%が年収300万円以下、インボイス制度導入によって27%の人が「廃業するかもしれない」と答えている。
「新人って芽が出るまで年単位とか下手したら10年を越えてくるような方々も全然いる。今大活躍されている方でも、いきなり声優業界に入って突然デビューした、突然名前が売れましたって人はほとんどいない。そういう人たちも生活ができないということになると廃業という選択をとらざるを得なくなってしまって、そうすると業界の衰退にしか繋がらない」(西森千豊さん)
これはエンタメ業界だけの話ではないと、VOICTIONでは政治家への陳情を続けている。
「エンターテインメント業界のインボイスに対する声、これについては、私も報道等さまざまなルートでこのお考え聞かせていただいている。インボイス制度は複数税率の下で適正な課税を確保するために必要なものであると思っているが、中小規模事業者等の方々の準備状況また懸念について、政府として丁寧に課題を把握しながら、きめ細かく対応していくことが重要であると考えている」(岸田文雄総理大臣)
(『ABEMAヒルズ』より)
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