今、ある最高裁判決が物議を醸している。争われたのは賃貸物件で家賃滞納などを理由に借主を一方的に追い出す契約だ。
【映像】連絡ナシで解除OK? 問題になっている「追い出し条項」(画像あり)
最高裁は「消費者の利益を一方的に害するものである」として、契約を“違法”と判断した。しかし、被告は貸主ではなく、家賃保証会社だ。
近年、賃貸物件に入居する際に、家賃を滞納した場合に立て替える保証会社と契約を結ぶケースが増えている。問題になったのは、保証会社側が求めた「家賃を3カ月以上滞納すれば借主に連絡せず賃貸借契約を解除できる」という契約についてだ。
多くの保証会社が同じような“追い出し条項”を盛り込んでいるが、最高裁の判決によって今後の賃貸契約にどのような影響が出るのか。ニュース番組「ABEMA Prime」では、不動産オーナーと共に議論を行った。
戸建て賃貸を13棟所有する不動産オーナーのせめる氏は「大家側からすると家賃が滞納されても、保証会社と契約しておけば家賃がずっと入ってくるのはメリットだ。私も100%利用している。デメリットは最初に保証料を払わなくてはいけない部分だが、メリットの大きさに比べればそこまでではない。大家が受け取る家賃の保証になっているが、今は初期費用として入居者さんからもらう構造になっている」と話す。
被告となった保証会社も利用しているせめる氏。実際に、賃貸に出している11棟のうち、7棟の家賃が滞納されているという。
「大家仲間の中でも『いやいや、マジかよ』という感じだ。その中には1カ月滞納の方もいらっしゃれば、3カ月滞納の方もいて、一番長い方だと8〜9カ月ぐらい滞納されている。家賃規模は幅があって4~7万円ぐらいだ。築古の戸建てオンリーでやっているので、家賃帯は低い」
入居者に滞納されたら、追い出しはするのだろうか。
「追い出しはほぼない。なぜかというと、保証会社さんに委任状を書いて任せているからだ。3カ月くらい滞納があると『訴訟するので委任状を書いてください』と送られてくるので委任状を書いて出すだけの業務だ。大家側としては長引いても家賃は入ってくる。大家としては全然問題ない。ただ、保証会社さんの資金繰りが徐々に悪化していく」
できるだけ訴訟にならないように、大家からも何か対処することはあるのか。
「利害関係や立場によって変わってくる。極端な話、ずっと居座っていても『家賃が入ってくればいい』と考える大家も多いと思う。私も今ずっとそういう状態だ。ただ、保証会社さんの立場からすると、早く出て行ってほしい。2年間の上限があるとはいえ、ずっと持ち出しの現金になってしまう」
保証会社の選び方は大家さんとしてあるのだろうか。せめる氏は「大家の立場としては(審査が)通る保証会社を探すだけだ。通らないところもある」と話す。
「審査のやり方がそれぞれの会社さんによって違う。大家としては空室で『住みたいです』と言われたら入居してもらって、家賃を賃貸料として得たい。そのときに保証会社を通したい。A社・B社がNGでも、C社さんが通ったら、C社さんの財務状況や社会的なことよりも『あ、審査通った。よろしくお願いします』だ」
ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は「以前から裁判所や弱者を守ると言う人には二手先が読めない頭の悪い人が多いと思っている。今回も『家賃滞納者を追い出せない』と最高裁が言ったから、金を払わなさそうな人には、家を貸さなくなっちゃう。今、賃貸では約8割が家賃保証会社を使う。家賃保証会社が『金のないお前の保証はしない』というと、個人は不動産を借りられない。結果として、お金のない人が家を借りられなくなることを促進させるので、僕は間違った判断だと思う」と話す。
その上でひろゆき氏は、「貧乏人を保証すると保証会社は損をする可能性が高いが、金持ちを保証すると、めちゃめちゃ利益率が高い。お金が足りなくなりそうな人を保証会社が保証しない流れになるとまずい」と指摘。
「家賃保証会社を使いたい大家はお金のない人に対して使いたい。例えば『政治家の息子だ』と言われたら保証会社はいらない。貧乏人で家賃が低い人にこそ必要だ。結局、家賃のとりっぱぐれをなくすために『生活保護を取ってくれ』という話になっちゃう。そうすると生活保護からちょっとでも仕事に出て普通の生活をしようと思った人が、生活保護を外れた途端に家を借りられなくなる。『じゃあずっと生活保護がいい』と、生活保護になるかホームレス化の二択になる」
ギリギリの生活費で家賃を滞納していると、引っ越しすらできない可能性もある。せめる氏は「みなさん夜逃げしていく。生活保護につながるセーフティネットになる団体もある。私も生活が苦しい方から相談を受けた時には、制度を案内したことがある」という。
プロデューサー・慶應義塾大学特任准教授の若新雄純氏は「元々保証会社は困った時には保証するということで保証金をもらっている。しかも保証会社が賃貸契約をどうこうできる立場ではないはずなのに保証会社が損をしたくないから保証会社が立場を超えて“いやいや、もう解約してください”と言っちゃっている。保証会社がボランティアでやっていれば国は訴えないと思う。でも実際問題、現状は構造上保険と一緒だから相当儲かっているはずなので。そんなにぼろ儲けして保証するというサービスを謳っているんだったらちゃんと保証してあげなよということだと思う。いいバランスのところを目指そうということだと思う」と述べた。
家賃の保証会社に対して出た最高裁判決。今回の判決によって賃貸契約に今後どのような影響が出るのか、注目が集まっている。(「ABEMA Prime」より)
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