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 12月19日の後楽園ホール大会は、来たる1月1日に日本武道館で行われる清宮海斗に拳王が挑戦するGHCヘビー級選手権、杉浦貴&小島聡のタカ&サトシに丸藤正道とKENTAの丸KENが挑戦するGHCタッグ選手権の最後の前哨戦の舞台となった。

 まず第7試合の6人タッグマッチで清宮と拳王が激突。タイトルマッチが決定して以来「頑張ってるだけじゃダメなんだよ!」「お前がチャンピオンだから東スポ忖度プロレス大賞でノアが誰も選ばれなかったんだ!」と口撃を浴びせてきた拳王。

 清宮が感情を剥き出しにゴング前から清宮が突っかかってきたが、この日も拳王は頭を撫でたり、「おい、頑張れよ!」と挑発を繰り返して清宮の闘志を空転させた。

 最後は変型シャイニング・ウィザードをキャッチして、船木誠勝直伝のスリーパー・ホールドで勝利した拳王は「強さはもちろん認めてる。だがな、ただただ強いだけ、ただただ頑張ってるだけじゃダメなんだよ。何も響いてこねえだろ? このままじゃムタvs中邑に話題をすべて持ってかれるだろ? 俺が1月1日の武道館であのベルトを奪って、これからのノアの輝かしい未来を切り開いていってやる!」と、王者・清宮をバッサリ斬り捨てた。GHCヘビー級戦は挑戦者・拳王優位の形で当日を迎えることになる。

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 メインではGHCタッグ戦で激突する小島と丸藤が一騎打ち。振り返ると、小島が“ノア史上最大のX”として4月30日の両国国技館に登場した時には、丸藤のパートナーだった。その後、6月12日のさいたまスーパーアリーナにおけるサイバーファイト・フェスティバルで潮崎豪からGHCヘビー級王座を奪取。7月16日に拳王に陥落した後も継続参戦して9・25大阪で杉浦とGHCタッグ王者になり、ノア・マットに定着。そして2023年元日にノア参戦のきっかけになった丸藤の挑戦を受けるのだから、ノア・マットの動きは目まぐるしい。

 しかも丸藤のパートナーは、03年7月に初代GHCジュニア・タッグ王者になってから2年間に最多防衛記録V9を樹立したKENTA。丸KEN結成は14年5月17日の後楽園ホールにおけるKENTAのノア・ラストマッチ以来8年半ぶりになる。挑戦表明を受けた小島が「こんなことがあるからプロレスラーは楽しくてやめられない」とコメントしたのも頷ける。

 そして前哨戦として組まれた今回の一騎打ち。丸藤は「ノアに上がってからの小島聡は、よくも悪くも外敵感がそんなにないけど、今回は外敵として、新日本の小島聡と見て戦う。“新日本の小島”には負けたくない」とコメントした。

 歴史を紐解くと、小島を最初に“外敵”として意識したのは丸藤だった。2010年5月31日付で全日本プロレスを退団してフリーになった小島が初めてノアに姿を見せたのは、同年7月24日の大阪府立体育会館(現・エディオンアリーナ大阪)。丸藤が試合後に本部席で観戦していた小島に「そこのテンガロンハットのおじさん、俺がすぐ相手してやる」と宣戦布告した過去があるのだ。

 二人の一騎打ちは同年8月22日の有明コロシアムが有力視されていたが、その直前に丸藤が変形性頚椎症性神経根症で長期欠場を余儀なくされたために幻に終わり、初対決は2年後の12年8月1日、後楽園ホールにおける『G1クライマックス』公式戦。丸藤がウラカン・ラナで勝っている。その後、同年9・29ノアの後楽園では小島がラリアットで勝利。14年10・26博多の『グローバル・リーグ戦2014』公式戦でも小島がラリアットで勝利。翌15年1・10後楽園で丸藤のGHCヘビー級王座に小島が挑戦した試合は、丸藤がポールシフト式エメラルド・フロウジョンで王座防衛。2勝2敗の五分の星で7年11ヵ月ぶりに一騎打ちで相まみえた。

 試合はグラウンドのせめぎ合いから場外戦、リングに戻ると小島が三沢光晴戦で会得したローリング・エルボー、DDT、コジコジカッターを炸裂させた。小島は前日の新木場の昼興行で矢野安崇、夜の金剛興行では中嶋勝彦とシングルマッチをやっていて、シングル3連戦なったが、疲れを感じさせないはつらつとしたファイトで丸藤を追い込んだ。

 その後、手首を掴み合っての逆水平チョップ合戦から丸藤が虎王、不知火の攻勢に転じ、さらにコブラクラッチ式の延髄虎王! 最後は虎王とラリアットの読み合いになったが、これに勝ったのは丸藤だ。ラリアットを虎王で迎撃し、フックキックから虎王! さらに虎王を放って前方回転エビ固めの形から、さらにジャックナイフに移行して、形は崩れたもののしっかりと3カウントを奪った。

 丸藤に言わせると「不格好な勝利」だったものの、前哨戦に勝利し、さらに試合後にはビジョンにKENTAが映し出されて「俺のノア所属最後の試合の時に“丸藤さんに隣に立ってほしい”っていう俺の願いに応えてくれた丸藤さんに、その恩返しの意味も込めて、今度は俺が隣に立って、GHCタッグを一発で獲りましょう」というメッセージが流れた。

 これで丸KEN復活、GHCタッグ獲りのお膳立てが整ったわけだが、KENTAのVTRは敗れた小島に火をつけた。

「なんだ? KENTAのVTRが用意されてるのかよ?  そういうことか。俺が勝っても、俺が負けても、KENTAのVTRが最後に流れるってことか。おい、ふざけんなよ。 俺は8ヵ月間必死こいて生きてきた。この団体で必死になって生きてきたんだぞ。KENTAみたいな、たまにしかプロレスリング・ノアに来ないヤツと一緒にするな、俺を!」。

 小島には2022年、ノアのリングで生き抜いてきた意地がある。もちろん小島だけでなく、選手各々が意地と矜持を胸に秘めて、元日決戦を迎える。新年の主役になるのは誰だ!?

文/小佐野景浩

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