今、とあるマンガ編集者の半生記がネット界隈で話題になっている。
「20年間勤めた講談社を退職しました」
記事を書いたのは「ムラマツ」こと村松充裕氏、ベテラン編集者だ。入社からキャリアを重ね、ヒット作を連発して実績を積み上げる中、マンガの出版というシステムやビジネスモデルについて考えるようになり、WEBコミックに関わることになる。
「それだけ危機感が強かったということです。業績が落ち込んでいる時期だったし、漫画村もあったし、WEBTOONの伸長もあった」
そして心機一転、「WEBTOONをやってみたい」。「WEBTOON」とは、韓国発祥のタテ型にスクロールするデジタルコミックで、近年急速に市場が成長しつつある。この出会いが、村松氏の退職、そしてCyberZへの転職のきっかけになった。
今や世界中に輸出され、日本文化の象徴ともなった“MANGA”。しかし村松氏は、世界的なデジタル化の波の中で、日本のマンガは一歩も二歩も遅れていると指摘する。22日の『ABEMA Prime』で本人に話を聞いた。
noteの「退職エントリ」はどんな思いで書いたのか。村松充裕氏は「退職することってあまりないので、単純に書いてみたかったというのが一番。あと、講談社という看板が外れると“お前は誰?”となるので、自己紹介として書いた」と説明。
WEBTOONへの挑戦は、「一番しっくり来る例えで言うと、バイオハザードの2周目に突入した感じ。“またやるか”“でも、ロケットランチャーないぞ”みたいな(笑)。その状況に対してどうするか、という気持ちがあった」と明かす。
今後、WEBTOONの伸長を予想するが、「日本は1歩、2歩遅れている」というのが村松氏の見解。「韓国で生まれ、中国で爆発的に広がっていったもの。向こうでは制作の知見も溜まっているが、日本はやはりマンガがすごく強い。WEBTOONはだいぶ作法と、ビジネスモデルも違うので、マンガ家さんはすぐ挑戦しづらい部分ではある。関わっている人数や体制が全然違うので、韓国や中国の2歩くらいは遅れている」。
WEBTOONは縦に読み進んでいくため「見開き」がなく、村松氏いわく「世界の広がりなどを表現するのにいろいろ工夫しているが、マンガほど確立していない」段階。現状は発展途上との認識を示し、「まだ手塚治虫が現れていないのではないかと思っている。もしマンガでうまくいかないと思っている人がいたら、WEBTOONは結構求められるものが違うので、飛び込んでみるのはいいかなと。選択肢が増えたという感覚は持っている」と述べた。
紙のマンガとWEBTOON、どちらも読んでいるというEXITの兼近大樹は「今は簡略化されている時代で、若い子たちは簡単なものしか見なくなってきていると思う。WEBTOONはスクロールしていくだけで、絵と文字で最後までスーッと行ける。『次』を押したら続きが見られるし、課金したくなるようなシステムができているので、儲けられるだろうなと。今マンガを描いているけどうまくいってない人たちは、こっちに参入したほうが未来があると思う。今後クオリティの高いものが出てくるんだろうなというにおいはしている」との考えを述べた。
村松氏は「結局、文字と絵の羅列によって人の心を動かすという本質は変わっていないので、いけるはずだ。一方で思うのは、同じタイミングで同じものを見るという難しさ。アプリは読みたいタイミングで読めるというのが、個人の都合だけを考えれば一番の良さ。ただ、新連載の新しい話が投入された時に、何百万人の人が同時に見てワーっと盛り上がる雰囲気は作りづらい面もある。昔の雑誌ではそれができた」とした。
その上で未来については、「『これからはWEBTOONだ』『マンガはダメだ』と言うつもりは微塵もない。マンガの未来はめちゃくちゃ明るいし、WEBTOONもそれに合わせて共存して伸びていくだろう、というふうに思っている」と語った。(『ABEMA Prime』より)
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